100000打企画 | ナノ

▼こりゃ末期だ

息を吐いて背凭れに凭れると、赤司は腰を上げて歩いて行く。

「(…青峰と黄瀬も、哀れなのだよ)」

元凶は二人にあるだろうが、毎回毎回アイツ等は、赤司の不機嫌の理由を知らされないまま理不尽な仕打ちを受ける。
…流石の俺でも、同情くらいはするのだよ。

「(まったく…、妹のこととなると、あり得ないくらい過保護になるな、赤司は)」

あの赤司を止められるとしたら、実の妹のなまえぐらいだろうが…。生憎、なまえはそういうことに疎い。赤司が不機嫌になっていることでさえ、気付いていないだろう。
再度息を吐いて、赤司の背中に視線を向けながら腕を組んだ。






「なまえっちありがと〜、お陰で二位になれたっス」
『いえいえ』
「っもう一回だなまえ!!」
『ふっ、挑むところ!!』

一位、なまえっち。二位、俺。三位、青峰っちでゴールして、今は休憩中。
序盤は青峰っちが二位で俺が三位だったけど、なまえっちが見事に青峰っちを足止めしてくれて、こんな結果になった。
俺としては青峰っちが一位になるかなー、とだいたいの予想はしてたけど、まさかなまえっちがあんなにグイグイくるとは思わなかった。
流石赤司っちの妹。

火花を散らしている二人をよそに、高級そうなカップに口を付ける。まあ多分、高そうじゃなくて本当にこのカップ高いんだろうけど。

「なまえ」
『あ、お兄ちゃん』
「(…あれ)」

赤司っちって、緑間っちと将棋してたんじゃなかったっけか。
そうぼんやり考えながら、カップに口を付けたまま視線を何となく赤司っちの声が聞こえた方に。

『どうしたの?』
「ぶごほ…っ!?」

何か人殺せるぐらいの殺気放ってねぇかこの人…!?
赤司っちの背後の禍々しいものに驚いて、紅茶が気管にでも入ったのか思わずむせてしまった。

「っごほ…っ!!」
『あーあ、何やってんの黄瀬くん。大丈夫?』

俺が顔を伏せて咳き込み始めると、なまえっちが近寄ってきて背中をさすってくれる。ぽんぽんと背中を撫でてくれるリズムにだんだんと心が落ち着いて、どうにか話せるくらいになったので顔を上げた。

「(…ってなんで!!?)」
『大丈夫黄瀬くん? 落ち着いた?』

顔を上げれば、心配そうに俺の顔を覗きこむなまえっち(天使)の後ろで黒く微笑む赤司っち(魔王)の姿が目に入った。なななんかまお…赤司っちの機嫌がさっきよりも悪くなってるような!? 俺の気のせい!?

「ああありがとうっスなまえっち!!」
『? どういたしまして』

こてん、と小首を傾げてそう返してくるなまえっちは、モデルの俺から見ても普通に可愛いと思う。うん、普通に。

そんなことを考えていると、なまえっちと俺の間に赤司っちが入り込んでくる。禍々しいものは未だ健在…むしろなんか濃くなってる気さえする。

「なまえ、すまないが少し青峰と黄瀬を借りていっても構わないか?」
『え…、うん、大丈夫だよ?』
「そうか、有り難う」

俺のことは完全無視でそう言った赤司っちの手が、おもむろに伸びる。ふと視界の端に黒いものが見えてそれに視線をやると、赤司っちの反対の手に首根っこを掴まれている、青峰っちが居た。え? あれなんか首しまってね?

赤司っちはなまえっちの頭に手を置くと、円を描くように優しく撫でる。俺の方からは赤司っちの顔は見えなかったけど、声色から何となく笑んでいることは容易に想像できた。なまえっちは恥ずかしそうだけど、嬉しそうだ。


……ちょっと待て、え? 借りる?






「死亡フラグ、ですね」
「だね」
「だねぇ」
「そうなのだよ」
『え?』



こりゃ末期だ

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -