雑食 | ナノ

『…博臣さん、いつも冷たいですよね』

昼休みの屋上。愛食のミルクキャンディを舐めながら、そう博臣さんの手に触れる。女の子みたいにきめ細かい綺麗な肌で、ほんのちょっとだけ疎ましくなる。彼の伸ばした足の間に座っているから、私好みの低音が少しだけ空気を揺らして、耳朶へと穏やかに響いてくる。

「俺のコレは、ただの冷え性じゃないからな。なまえにとっての睡魔と同じような感じか」
『大変ですよね…』

トーンが暗くなった私の声を聴いて、博臣さんが困ったように笑う気配を感じた。そんな風に笑う彼がとても綺麗なことを、私はよく知っている。その際に少しだけ帯びる、悲しそうな瞳の色も。綺麗だけど、そんな表情はあまり見たいものじゃない。

『ん…』
「大丈夫か?眠いだろ」
『…いえ、大丈夫…です』

暖かい日の光も手伝ったのか、眠気から欠伸が出そうになった。手で口元を覆い、余計な心配を掛けないよう欠伸を噛み殺す。それでも口は僅かに開いてしまうし、意味を持たない声も出てしまう。
そんな私に前屈みになって、顔を覗き込んでくる博臣さん。欠伸をすると涙目になって鼻が少し赤みを帯びるから、すぐに分かってしまう。

「冷え性なら対処方法は幾らでもあるけど、眠気は寝ないとどうにもならないだろ。俺はなまえの方が心配だな」

そう言うとするりと両脇に腕を差し入れられ、それと共に肩に重みを感じた。彼曰く、私の脇は神原くんをも凌ぐ清潔さと温もりを併せ持つらしい。そうだ、「柔らかいし良い匂いもするから、お得だろ?」とも言っていた。ああ、何か恥ずかしい。何がどう考えればお得なんだろうか。
でも、こんなところを美月ちゃんや神原くんにでも見られたら、変な目で見られること間違いない。未来ちゃんにはこんなところ絶対見せてはいけない。何か教育上アウトだと思う。…このすぐ数十秒後のことをそう何となく考えていた私であった。神原くんは、タイミングが恐ろしく悪い。

251004

博臣くんカッコいい。だが口調謎。

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