雑食 | ナノ

「なまえの髪、いっつも可愛いよねー」
「スゴいよねぇ、毎日毎日 」

昼休みに友達とお菓子を摘まみながら話に花を咲かせていると、隣のクラスのあの子が髪切ったみたいねーっていう話になって、その流れで髪の話になり、友達二人が私に手を伸ばして髪を触ってきた。

『ああ、これ?』
「自分でやってるの?」
『や、私こんなの出来るほど器用じゃないし』
「じゃあ誰にやって貰ってるの?」
『お兄ちゃん』
「「お兄ちゃん?」」

お兄ちゃん居たのなまえ? その言葉に頷けば、「じゃあその繋がりでお兄ちゃんの友達紹介してよ!」と年上好きである友達の一人が机に手を付き席から立ち上がって明るい声を上げた。無理無理、無理だよと両手をすかさず振れば、唇を尖らせてまた腰を下ろす。

「えー…何でよー…」
『だってーー』

私が続きを言おうとしたそのとき、不自然に周りがざわざわと騒ぎ始めた。「何?」と訝しげに周りを見始める友達に習って私も周りを見渡せば。

「おーい、なまえー?」
『お兄ちゃん!?』
「「え…っ!!」」

入り口付近で頼りなさそうに眉を下げて、私を呼ぶ兄の姿があった。

「あれって、3年のヤンキーだって専らの噂の…もがっ!?」
「黙りなさい!!」

後ろで何やら色々やっている友達を背に、私は席を立って足早に兄である旭の元へ向かった。顔を合わせてすぐに、「ほらまた猫背してる!」と猫背を指摘しながらパァンっと背中を叩けば、情けない声を出してから一瞬だけ背を伸ばして、すぐに元に戻ってしまう。我が兄ながら、ほんと困ったもんだ。澤村先輩みたいに頼りになる兄になって欲しいよほんと。

それはそうと用件を聞けば、どうやら同じクラスの影山くんに用があるらしい。ああ、影山くんもバレー部だもんね。生憎彼は席を外している。そのことをお兄ちゃんに話せば、じゃあ出直すよとへらりと笑った。いつもながら思うが、お兄ちゃんは見た目とのギャップが色々ヤバい。いや、優しいってことは知ってるんだけど。優しいと情けないは違うと思う。

「じゃあな、有り難うなまえ」
『あ、うん』

ひらりと手を振って席へと戻ると、凄まじい勢いで友達が口を開いた。

「ねえねえ、あれほんとになまえのお兄ちゃんなの!? 怖くない!?」
『え…こわい? どこが?』
「いやだって、見た目ヤバくない!?」
『ええー……編み物とか好きな女々しい野郎だよ?』

そう苦笑いしながら答えれば、一瞬の真顔の後、「まっさかー!」なんて息ピッタリの私の言葉を信じていない返答が返ってきた。何でこんなときだけ息ピッタリなのよ…。

「あんな怖い人が編み物なんてするわけないじゃーん!」
「この髪の毛もなまえが自分でやったんでしょー? まったくー、変に謙遜しちゃってーこのこの!」
『(……見た目って、ある程度大事なんだな……)』

250306

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