雑食 | ナノ

『お兄ちゃん、朔さんが仕事しないんだけど』

そう手を動かしながら、「はぁ…」と鬱々とした溜め息を吐く。ここは『輪』の第貳號艇。平門お兄ちゃんの自室兼仕事場。第壱號艇闘員である私が何故ここにいるかというと、我等が第壱號艇長、朔さんが仕事もしないクセに声を掛けてくるからである。
本当に迷惑極まりない。こちらが「仕事して下さい」って注意したらしたで聴いてないフリするし。キイチちゃんと喰くんはもう諦めて朔さん完全無視だし。私も無視したいけど何かあの野郎声掛けてくるし。静かに仕事が出来ないから、書類を持ってお兄ちゃんのところに避難してきたのである。

「はぁ…だから貳組に来いと言っただろう、入團の際に」
『そう、だけど…、だって…』

だって、私は朔さんに憧れて『輪』に入ったんだもの。私の住んでいた街に能力者が現れて、襲われそうになったとき。助けてくれたのは朔さんだった。
能力者を目の当たりにして、恐がって震えていた私に笑い掛けて、「大丈夫だ」って頭を撫でてくれたのは、紛れもない朔さんだった。能力者と闘うその背中を見て、そんな姿に憧れた。その背中を守りたいと思った。

「アレが戦闘以外で真面目に仕事をしないのは、お前が輪に来るずっと前からだ」
『……』
「…しかし、気に食わないな」
『…気に、食わない?』
「ああ」

隣に座る平門お兄ちゃんが、恐いくらいに優しく微笑んで頭を撫でてくれる。その微笑みに何故か恐ろしさを感じて思わず喉を鳴らすと、お兄ちゃんはより一層笑みを深めた。

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