豹変した後輩 | ナノ

先輩のこと好きになったみたいです

「先輩のこと、好きになったみたいです」

同じ部活の真面目で可愛い後輩にそう言われて、我が耳を疑いました。何かの間違えだろうと彼の方を見ると、赤司くんは不気味な程に優しい笑みを浮かべていました。その笑みに心臓が跳ねたのは秘密です。
彼の笑顔なんて一切見たことのない私でしたから、その笑みが不自然な不気味さを放っていたことなど全く気が付きませんでした。それが先程の言葉を否定するものだと思った私は、残念さと安心感の入り交じった感情を感じながら赤司くんに笑い返しました。
どうやら聞き間違えだったようですね。

「みょうじ先輩、聞き間違えなんかじゃないですよ」
『…ガチですか』

心を読まれました。






「詳細は把握した。だが、何故それを俺に相談してくるのだよ」
『だって…、虹村主将はお忙しそうですし、さつきさんに言うのはちょっと抵抗を感じて…、黄瀬くんは頼りになりそうですが周りの女子が恐くて…』
「…つまり、お前の目には俺が暇そうに見えたんだな」
『ええ。それはもう暇そうに』

「暇じゃないんですか?」そう小首を傾げて訊ねると、真太郎さんはばつが悪そうに私から顔を背けました。こうなると彼の性格上、どうやってもこちらには向いてくれないので、真太郎さんが見てくれないなら私自ら彼の視界に嫌でも入る場所に、と足を動かしました。
ばちっと視線が合うと、彼は目を見開いてまた顔を背けます。また私が彼の視界に入ると、眉間に皺を寄せてまたそっぽを向きます。それを何回か繰り返すと、真太郎さんは青筋を幾つか立てて、彼自らこちらを振り向いてくれました。

「っ暇、だが!!」
『ふふ、でしょうね』
「っ…お前は昔から人の神経を逆撫でするのが得意だな…!!」
『ははっ、有り難うござ』
「緑間」

ずさあぁっと声のした方から距離を取るように、すぐさま後ろに後退りました。自分では意識していないのに、身体がまるで自分のものではないかのように、勝手に機敏に動きました。恐らく、本能的に危ないと悟ったのでしょうね。
今まで親しくしていた可愛い後輩ですから、心が痛みます。だけれどそれ以上に、私は己の身の危険を感じます。「こんにちは、先輩」またあの恐いくらいの優しい笑みです。それに更なる身の危険を感じた私は、すぐさまその場を駆け出しました。

「ふふ、可愛いなあ」
「…追い掛けないのか?」
「ああ。今は、だが」
「(…あの赤司に目をつけられるとは…なまえも哀れなのだよ。コイツからは、絶対逃れられない)」

250825

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -