ないしょの恋 | ナノ


::そろそろ気づいて



「今日は一段と覇気が無いな。何かあったのか」
『…見ちゃった』
「見た?何をだ」

俯いていて表情が窺えないなまえに、そう問い掛ける。今日のなまえは元気が無い。
…ああ、そういえば。いつもは、「真ちゃん一緒に飯食おうぜ」などと飽きずに俺に声を掛けてくる高尾が、昼休み、珍しくどこかへ行っていた。
どうせ購買だろう、とも思ったがアイツが数十分して教室に帰ってきたとき、購買の白い袋は無く手ぶらだった。
…それと何か関係があるのだろうか。

『何で分かんないかなあ…真くんもされたことあんじゃん、何回も』
「…ああ。告白か」
『そ』

「別に気にすることは無いだろう、高尾は断ったんだろう?」予想外の言葉を聴き、そう再度問い掛けた。呆れたように息を吐く。
アイツにとっては、今一番バスケが大事だろう。色恋沙汰にうつつを抜かしている暇などあったら、練習すべきた。だが。

「それだけじゃないだろう、なまえ」

それだけで、なまえがこんなに元気を無くすとは、到底思えない。コイツはそんなに弱くない。むしろ強い方だ。古くからの友人とはいえ、それも男に「親戚の男を好きになった」などと打ち明けるには、相当の勇気がいっただろう。
なまえは、水分の膜が少し張った目で俺を見て、「何が?」と口にした。…また、コイツは隠すのか。

「お前のことなら、何でも分かるのだよ」
『…っはは、やっぱ真くんは凄いねえ。全然敵わないや』

泣くのを必死に我慢して、少し震えた声でそう言う。そんな表情、声を見てられなくなり、落ちるつけるかのようになまえの頭に手をのせる。
一瞬肩を揺らしたなまえから、笑みが溢れる。コイツは、いつもこうすればすぐ泣き止む。

「高尾のことなら、なまえが一番よく知っているだろう。それは俺を凌ぐ。他の奴等をもだ。だから、胸を張れ。諦めるな。思い続けろ」

…俺はコイツのことが好きなのに、高尾を手助けするようなことを、何故わざわざ言うのだろうか。…分からない。が、でも、このままなまえを、放って置くような真似は俺には出来ない。

『…ありがとう。真太郎』

何年振りだろうか、なまえが俺のことを「真くん」とは言わずに、しっかり名前で呼ぶのは。なまえの泣きそうな笑顔を見ながら、こんなにもなまえは、高尾のことを想っているのに何故アイツはコイツのことに気が付かないのか、と静かに拳を震わせる。

「…ああ」

怒りをなまえに悟られないよう、眉間に皺を寄せながら答えると、なまえの頬を滴が伝った。ああ、俺ならなまえを泣かせるようなことは、決してしないのに。
なのになまえは、何故。

250730


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