ないしょの恋 | ナノ


::気づくことはない



例えば、月曜日の三時限目。
なまえは決まって、授業そっちのけで校庭の方を見てくる。その時間、なまえのクラスは数学。俺のクラスは体育。何故彼女が校庭の方を見てくるかというと、彼女の想い人が俺と同じクラスに在籍しているからである。

彼女の名前。姓は高尾、名はなまえ。
この名前を見れば、俺と同じクラスの高尾和成と親族ということは何となく察しがつくだろう。
ゴールの方が騒がしくなったので、ふとそちらに目を向けると、なまえの親戚であり、俺のチームメイトでもある高尾がシュートを決めていた。






『はぁ…』
「溜め息を吐いたりして、一体どうしたのだよ、なまえ」

憂いを帯びた目を伏せて、「いーや、べっつにー」と、机に突っ伏しながらそう言う。興味を引かれたので目を通していた医療の本から目を離し、ちらりとなまえを見る。
いつも煩いほど元気がある為、なまえが少しでも元気がないとどうも上手くいかない。

「高尾のことか」
『高尾は私もでーす』
「…」
『ははっ、冗談冗談。…違うよ』

突っ伏しながらなまえは、顔だけを俺に向けて、笑う。コイツは、本心を隠すのが壊滅的に下手なクセに、いつも隠そうとする。
溜め息を吐き、読んでいたページに栞を入れる。パタンと音がする。

「図星か」
『違うって』

眉間に軽く皺を寄せ、緩く睨んでくる。「真くん分かってないなあ、こうゆうときは例え図星だって分かっても、普通訊かないもんなんだよ。察しようよ」という小さな呟きが、俺の耳に入ってくる。そんなもの知るか。

「鷹の目という特殊な能力を持っているクセに、アイツは周りがよく見えていないんだな」
『だよねぇ』
「…大丈夫か」
『何が』

机を見つめていた視線を、再度俺へと移し、そう問う。俺はその問いには答えず、ただ、なまえを数秒無言で見つめた後、また本を開いて文字の羅列を追っていった。「何故高尾のことなど好きになったのか」など、なまえに言えるわけがなかった。

250726


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -