図書室の奥の、特等席。 | ナノ

「わ、おい真ちゃん、見てみろよ」

移動教室の途中。窓辺に近付いて外を見る高尾に、そう声を掛けられた。
きっとコイツのことだから、どうせ下らないことだろうと構わず無視しようとすると、腕を引かれて強制的に窓辺に連れて行かれる。

「っおい!」
「ほれ、今走ってんの、宮島先輩だぜ」

「あそこあそこ」と校庭を指差す高尾の指を恨めしく思いながらも、仕方なしに視線を向けてみる。二階から見る先輩の姿は、やはり目立っていた。
それもそうだ、あんな髪の色をしているのだから。先輩は以前、俺に目立つ髪の色をしているなと言ったが、先輩も人のことを言えない。

「スッゲーな、宮島先輩ダントツだぜ、流石女バス主将」
「……」

一つに束ねた目立つ髪を揺らして、先輩はゴールを一着で通過した。
その横顔を見届けてから、俺は窓に背を向けて歩き出す。それを見た高尾が、慌てた様子で着いてきた。

「ちょっ、真ちゃんコメント無し!?」
「煩いのだよ、高尾」
「いやいや何か言おうぜ〜、仲が良い先輩のことなんだからさー」
「…別に仲は良くないが」
「え、そなの?」

目を丸くするその姿が、気にさわる。わざとじゃないようなのも、余計に気にさわる。
眉間に皺でも寄せていたのか、高尾は丸くしていた目をだんだんと細めた。そしてニヤニヤと気持ち悪く笑い始める。

「そっか〜、仲良さそうに話してるから、てっきり仲良いのかと…。俺間違っちゃったわ〜」
「ウザい、死ね」
「ひっでー!!」

嫌悪感丸出しで俺がそう吐き捨てても、面白そうにケラケラ笑う高尾は本当におかしな奴だ。毎回コイツの頭の中が、俺は不思議でならないのだよ。

「…あ、そういや真ちゃん、今日部活無しだってよ。さっき真ちゃんが居ないとき、宮地サンと木村サンが教室来て教えてくれた」
「また何故だ?」
「さぁ? 理由聞き忘れたわ。でも明日は普通にあるみたいよ」

頭の後ろで腕を組み、そう眠そうにあくびをする。
理由が大切なのではないのかと思いつつも、高尾相手になると何もかもがいちいち面倒くさいので、あえてふれないことにする。

「そういや宮島先輩って生徒会長だっけか。女バスとの両立大変そうだなー、真ちゃんもそう思わね?」
「…何故このタイミングで宮島先輩の話をする」

意図的に宮島先輩の話を持ち出したような気がして、階段を降りながら高尾を見る。

「え、何で?」
「…意図的だろう」
「あ、さっすが真ちゃん。バレた?」
「おい」
「いやだって、何回も会ってるクセに仲良くないとかあり得ないし…」

いつコイツに宮島先輩と居るところを見られたのだろうか。別にやましいことなど無いが、コイツのことだから色々勘ぐることに違いない。面倒くさい。

「それに、真ちゃんが女の先輩と仲良いなんて気になるに決まってんじゃん。しかもその相手が生徒会長とくれば当然!」

当たり前のことを言うかのように、そうこちらに親指を立てて見せる。そんな高尾に、俺は軽蔑の視線を向ける。その指をいっそのことへし折ってやりたいのだよ。

「だって真ちゃんの好みのタイプ、年上なんでしょ?」
「死ね」

宮島先輩は、決してそういうのではない。

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