いけない恋 | ナノ


::埋めようのないゼロセンチ



布団から顔を出して、どことなく熱っぽい息を吐く。
昨日のどしゃ降りの中、傘もささずに帰ったとか、真くんには言えないな。言ったらきっと、また呆れた溜め息吐かれちゃう。怒られるかもしれないな。まあ、言わないけど。迷惑掛けちゃうし。

『コホ…ッ』

私が今居るここは、秀徳高校の保健室。体育館はボロだけど、図書室とか保健室は綺麗なんだよね、この学校。
頭がぼんやりしてていまいちハッキリしないけど、保健室の先生は確か、「なまえちゃんのお家にお電話したけれど、お家の人が居ないようだったから、他の人にお家まで送って貰うよう頼んだからね」とか何とか言って、大分前に出張に行ってしまった。

『(他の人って…真くん辺りかなあ)』

寝返りをうつと、ベッドの骨組みが嫌な音をたてた。ベッドを隠すため、囲うように取り付けてあるカーテンを少しだけ開ける。窓から射し込む日射しが眩しくて、目を細めた。
五時限目の後半ぐらいかな、この時間じゃ。

『(今日は六時限目まであるから、あと一時間ぐらいある…)』

カーテンをゆるゆると閉めて、バフッと仰向けになる。頭が痛い。瞼が重い。
次々と襲ってくるそれ等に、一切逆らわずに目を瞑る。あーあ、真くん来るんなら、私が風邪引いたこと黙ってても無駄じゃん。怒られちゃうなあ…。






「しっつれーしまーす…って、出張? 先生居ないじゃん」

保健室に入って、なるべく音をたてないようにスライド式のドアを閉める。
周りを見回しながら奥へと歩くと、ぽつんと椅子が置いてあった。その椅子には、おそらくなまえのものだと思われる鞄が置いてあったので、そこに自分の鞄も置く。

ベッドを囲うようにして取り付けられ、しっかりと閉められているカーテンをゆっくりと開いた。…居た。やっぱ寝てんな。昨日のどしゃ降りん中、傘もささずに帰ったんだっけ? そりゃ風邪引くわ。

「(久し振りだわ、コイツの寝顔見んの。最後に見たのいつだっけな)」

小さく息を吐いて、汗により額に張り付いた前髪を払ってやる。布団を捲って、なまえの身を起こす。
一定のリズムで寝息をたてていて、一向に起きる気配がない。まあ、そっちの方が楽だから良いけどな。
身体を屈めて、なまえを背中に背負う。椅子に置いた鞄を二つとも手に取って、俺は保健室を出た。

250803

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