いけない恋 | ナノ


::笑顔も涙も見つめてきたよ



また今日も、飽きずに彼を見つめる。
今回の授業は美術で、課題は季節の草花をスケッチせよ、みたいな感じだった、確か。まあ、それっぽい草とか花とか見付けて、適当に描いときゃいっか。

「高尾ー! そっち行ったぞー!」

あはは、真くんヤル気なさそー。って、ああ、違うか。他の奴等がありすぎるだけだ。若いもんは良いねー、元気で。そのあり余る体力を、このおばさんにちと分けとくれ。

『…でも、昔はなあ』

ただ突っ立っていた真くんが、和成に何か言われてる様を遠くから見つめる。
…今は全然だけど、私と和成は昔とても仲が良かった。家が凄く近かったってこともあるし、やっぱり、気が合ったんだろうなあ、と今思えばそう思う。

小学校低学年ぐらいまでは、普通に話せたし、楽しく遊べた。いつからかなあ、和成と普通に話せなくなったのは。
小さい頃から顔が整っていた和成が、私を置いてどんどん大きく、大人になっていくのが嫌だった。そんな和成を、頬を染めて見つめる女の子達を見るのも。

自己嫌悪に陥ったりもした。カッコいい男の子のことを好きになるのは当たり前なのに、その男の子が和成だと、凄く嫌だった。和成はただの親戚なのに、おかしいな、私最低だな、って思ったり。

『(そういえば、昔はスゴい人見知りだったんだよなあ、和成)』

いつの間にあんな、コミュニケーション能力が高くなったんだろう。そう考えると、微かに笑みが溢れた。
和成の笑顔も涙も、一番近くで見てきたということが、和成のことが好きな女の子達に勝てる、唯一のこと。私には、それぐらいしかない。

『何で、和成のことなんて好きになっちゃったんだろうなあ…』

ポーンと空高く上がった黒と白のボールを見ながら、そう呟いた。

250608

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