いけない恋 | ナノ


::貴方が気づくことはないね



例えば、月曜日の三時限目。雨とか屋内競技以外のときは、大抵校庭へと目を向けると彼が見える。あ、それと真くんも。
今日の二組の体育、サッカーなんだ。

「じゃあこの問題を…高尾、解けるか」
『あ、はい』

私の名前。姓は高尾、名はなまえ。この名前を見れば、二組の高尾和成と親族ということは、何となく察しがつくだろう。
席を立つときふと、開いた窓から校庭を見ると、和成が見事にシュートを決めていた。






『はぁ…』
「溜め息を吐いたりして、一体どうしたのだよ、なまえ」

そんなことを言ってくれる真くんに、「いーや、べっつにー」と、机に突っ伏しながらそう言うと、難しそうな医療系の本から目を離して、ちらりと私を見る。
ちょーっと元気無いだけで心配してくれるとか、相っ変わらず性格までイケメンだねぇ、真くん。

「高尾のことか」
『高尾は私もでーす』
「…」
『ははっ、冗談冗談。…違うよ』

突っ伏しながら顔だけ真くんに向けて、笑う。すると、今度は真くんが溜め息を吐き、読んでたページに栞を入れた。パタンと音がする。
あーあ、真くんまで溜め息吐いたら、幸せ逃げるよ。

「図星か」
『違うって』

…さっきの訂正する。
「こうゆうとこだけは、イケメンじゃない。真くん分かってないなあ、こうゆうときは例え図星だって分かっても、普通訊かないもんなんだよ。察しようよ」と、真くんに聴かれないように呟いた。

「鷹の目という特殊な能力を持っているクセに、アイツは周りがよく見えていないんだな」
『だよねぇ』
「…大丈夫か」
『何が』

机の傷を見つめていた視線を、再度真くんへと向けて、そう問う。でも、真くんは「何が」とは言わなかった。ただ、私を数秒無言で見つめた後、また難しそうな本を開いて、無機質な文字の羅列を目で追っていっていた。

250604

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テーマ「人外ファンタジー」
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