::何でもシャープに | |
帝光中の球技大会は、学年のクラス対抗。バスケットボール、テニス、サッカー、バレーボールの四種目の合計点数で順位を決める。体力の許す限りなら、誰が何種目出場しても良いということになっている。 俺は四種目全てを人並み以上にこなせるので、何種目かに出場する。俺が出場するのは、バスケとサッカー。流石に、四種目全てには出たりしない。他のバスケ部の奴等も、多くて三種目だと言っていた。あの青峰でさえもだ。 「なまえ、大丈夫なの? 四種目出るとか無理じゃない?」 『大丈夫。問題無い』 「はぁ、なまえはいつも無理するからなあ…。ね、気分悪くなったら言うんだよ」 『悪くなったりしない。平気だ』 「ふふ、どーだかあ」 なのに、だ。あのアホは、四種目全てに出場するという。男ならまだしも、アイツは女だ。自分の体力の限界を考えて、あんなことを言っているのだろうか。そうだとしたら、もう取り返しのつかないアホ女だが、どちらにしてもアホには変わりない。 「心配そうですね、赤司くん」 いつの間にか横に、黒子が居た。 意味深に薄ら笑いを浮かべる彼は、楽しそうに俺のことを見てくる。黒子の視線から逃げるように、みょうじとその友人に背を向ける。 「ああ、心配だ。アホみょうじが倒れでもして、競技が途中で中止になってしまわないかな。みょうじのことはどうでもいいが、勝敗がつかないまま競技が終了するのは納得がいかない」 そう平静を装いつつ、組んでいた腕を組み直す。「…素直じゃないんですから、赤司くんも、みょうじさんも」そう呆れたように黒子に言われ、溜め息を吐かれた。 …溜め息を吐きたいのはこっちだよ、黒子。 教師の放送が校内へと響き渡り、バタバタと騒がしい足音がいくつも聞こえた。それに混じって後ろの方で、「負けないからな! 赤司征十郎!」と、みょうじの声が聞こえたような気がして、思わず口を弧に緩めた。 250717 |