::素直にアホな君へ | |
「正解です。よく分かりましたね赤司くん」 「…やっぱりお前か、黒子」 図書室に行くと、今日たまたま委員会の仕事で図書室に居た黒子と会った。丁度良かったからみょうじのことを訊くと、どうやら俺の推測が合っていたことが判明した。まったく…、黒子も面倒なことをしてくれる。 「でも僕、そろそろ諦めたらどうですかってみょうじさんに言っただけですよ?」 「…その言い回し、まるでみょうじが俺に好意を寄せているように聴こえるな」 「わあ、赤司くん、みょうじさんと同じようなことを言うんですね」 「…大方、俺を惚れさせれば屈服させることが出来るとでも思っているんだろう。みょうじはアホだからな」 鼻で軽く笑いながら、そう黒子に言い放つ。 アイツは学力的な面では頭が良いが、日常的な面ではアホだ。みょうじをアホと言わずして誰をアホと言う。挙げるとしたら黄瀬か青峰だが、アイツ等はアホとはちょっと違う、勉強が出来ない。すなわち只のバカだ。 「でも、バカよりアホの方がいくらかマシじゃありません? 黄瀬くんしかり、青峰くんしかり。可愛げもありますし」 「いくらか、な。そこには同意するよ。が、可愛げがあるかは分からないな。みょうじしかり」 そう俺が淡々と言うと、黒子はやれやれ、という感じで微かに微笑んだ。時計を見る。チャイムが鳴るまで、あと五分。 「あ、そういえば、緑間くんから聴いたんですけど、青峰くん今日補習だそうです」本を閉じ、席を立った俺を見て、そう黒子が口にした。 「青峰くん、授業中爆睡してたみたいです。午前の授業全部」 「…五分で補習を終わらせて、速やかに部活に来いと青峰に言っておけ」 「でも赤司くん。結構な量ですよ、補習」 そんな言葉を後ろから聴いて、肩越しに顔だけを黒子に向け、笑う。「知らないな、俺の命令は絶対だ」それだけ最後に言って、俺は図書室を後にした。もし聴いていたとしても微妙なところだが、黒子が溜め息と共に言った言葉のことになど、勿論気付いていなかった。 「…なんてめんどくさい人達なんでしょう」 人気のない廊下を歩きながら、以前手に入れていたみょうじのアドレスに、メールをする。彼女は、自分のアドレスが俺に知られているということは、知らない。 「黒子に何を吹き込まれたか知らないが、アホなことはするな。アホが悪化するぞ」と本文に。件名には、「素敵にアホな君へ」と入れておいた。 250618 |