短編 | ナノ

緑間とキス


「っ…な、何をするのだよなまえ…!!」
『え?分かんない?キ、』
「言わなくて良い!!」

顔のみならず耳の先まで真っ赤に染め上げて、後ろにある窓にドンっと背中を当てる真太郎。…髪の緑色と眼鏡の黒色が、赤色にとても映える。いつも表情をあまり変えることのない彼を、こんな状態にしているのが私だということを考えると、思わず顔がにやけてしまう。

『…やっぱ凄い純情だなぁ、真太郎。和成の言う通りだわ』
「な…っ…!!」

とても面白そうに笑っているであろう私から、“和成”という言葉が出てきて、真太郎が眉間に皺を寄せる。それをあえて見なかったことにして、私は自分の席の机上に置いてある秀徳指定の鞄を手に取り、肩に掛けた。
だけど、肩の鞄が妙にいつもより軽かったので不思議に思い、小首を傾げながら机に手を付き体を横にして中を覗き込んだ。ギシ、と嫌な音がしたような気がするが、それはあえて気にしない。

『…あれ、何もない。やっぱり気のせ…ってわっ!!真太郎!?』

体重を掛けていた右手首を凄く強い力で取られ、突然のことに思わずバランスを崩し足をもつれさせてしまった。…その反動でガガッと椅子から嫌な音がたちガタンと倒れた。

『え…ちょ、真太郎どうし…』
「なまえ、お前は、俺がずっとやられっぱなしでいる男だと思っているのか」
『は、待っ…』

なかなか彼がキスをしてくれなかったから、つい自分からはしたなくもやってしてしまったが、…ああそうだ、緑間 真太郎という男はプライドが異常に高く、やられたらやり返すのが当たり前と考えている人間だった。
私の制止の声も聴かず、不機嫌そうにムスッと眉をひそめつつも、少し楽しんでいるような真太郎の整った顔が近付いてきて、私の次の言葉を奪った。…まあ、全て私が招いた結果なのでしょうがないが。

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テーマ「人外ファンタジー」
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