短編 | ナノ

黄瀬とキス


「…ははっ、真っ赤っスね。可愛い」
『っ…馬鹿…』

黄瀬の背が高いから、届く様にと爪先立ちをしていたのだけれど、それだと不安定だから掴んでいた彼のブレザーを離して、かかとを床に付ける。
…彼が愛しそうな者を見る様な熱っぽい視線で私を見てくるものだから、それから逃げる様にそっぽを向く。…黄瀬はいつもこうだ。いつもは私に頭が上がらないくせに、こういうときだけカッコよくなる、ズルイ。…こんな黄瀬、誰にも見せたくない。

「…なまえ、そんな顔、俺以外に見せちゃ駄目っスよ?」
『え?』
「…自覚ないんスね、…まあそっか。めっちゃ可愛いし色っぽいんスよ今の顔。だから、ダメ」

恥ずかしさのあまりそっぽを向いていた私の顎を、黄瀬はその長くて綺麗な指で掴んで自分の方に向かせた。…彼の細められた綺麗な目と視線がかち合い、先程重ねた唇をまるで壊れ物を扱うかの様に優しく親指でなぞられる。

「なまえは俺のものっスから」

綺麗に笑った黄瀬がそう言い、腰を引き寄せられたかと思うと、再度口を彼のそれで塞がれた。…今までの経験上から長くなると予想した私は、彼の首に腕を回して身体を預けた。…まあ、さっきの黄瀬の言葉が嬉しかったっていうのもあるんだけどね。

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