短編 | ナノ

緑間と冷たいお汁粉


『はい、真太郎。お誕生日おめでとう』
「…ああ」

自動販売機の取り出し口から、お汁粉の缶を二本取り出して、そのうち一本を真太郎に笑顔で渡す。まーったく、素っ気ない返事なんだから。今日は真太郎のお誕生日だから、お汁粉は私のおごりである。
面白いよねえ、お汁粉のつめた〜いがあるなんてさ。普通あったか〜いしか無いんじゃないの?真太郎の分と一緒に自分のも買ってみたけれど、旨いんだか不味いんだかどっちなんだろう。

『ん…っ、…うえぇ』
「なまえ?」
『真太郎なんでいつも、こんなの飲んでんの…?』

あったかいお汁粉しか飲んだことがないから、つめたいお汁粉は正直言って、スッゴく不味い。わー、真太郎不機嫌だあ。そりゃあ、自分の好きなものを不味いって言われると、良い気分じゃないよね。でも不味いんだから、仕方がないのだよ。

『私の飲み掛けだけど、飲む?私なんかもう無理そう…、なんか胃もたれが…』
「飲みきらないのなら、最初から買うんじゃない」
『いやあ、でもさあ、真太郎いっつも夏になると、つめた〜いお汁粉飲んでるからさあ…しかも私、あったかいお汁粉しか飲んだことないから、好奇心がついね〜』

そう言いながらも、私の飲み掛けをちゃんと飲んでくれる真太郎。てか真太郎、もう自分の分のお汁粉飲み終わってるし。スゲーそんな旨いか、つめた〜いお汁粉。てか、こんなとこ和成に見られたら、絶対なんか言われるなあ。「間接キスだねえ」って何気無く言ったら、真太郎は赤くなってむせた。身長のわりに可愛いんだよねえ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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