短編 | ナノ

日向とダアホを言い合う


『遅い!日向くん!』
「わりーわりー、カントク達がなかなか帰らせてくんなくてよ」

今日は日向くんの誕生日。彼が持っている紙袋の中身が溢れそうなのを見ると、バスケ部の皆から盛大に誕生日をお祝いされたらしい。

「いやぁ、たくさん貰いましたなぁ、日向くん」

通学路を歩きながらそう紙袋を覗く。あ、真田幸村のフィギュアあるじゃん。ああ、そういえば確か、リコに折られてたもんな、真田幸村。

「てか、何でお前来なかったんだよ。カントクも皆も別に良いって言ってたよな」
『あれは男バスメンバーだけの会じゃない。バスの私が入るの、何か悪いし』
「…変なところで生真面目だよな、なまえって」
『そんな変なところで生真面目な私を好きになったのは、日向くんでしょうが』

彼の言葉にちょっとムッとしたので、そう日向くんに言ってやった。そしたら、「それもそうだな」と、やけに淡々とした答えが返ってきた。え、もっとリアクション大きくても良くないですか。別に大きくてもバチとか当たらないと思うんですけど私。そう拍子抜けしていると、日向くんが、「そういや、お前は何か俺にくれねーの」と言ってきた。

『そんだけ皆に貰ったんだから、いらないでしょう。荷物もっと重くなるわよ』
「んなことねぇって。それとその言い方、やっぱ何かあんだな。せっかく俺の為に用意してくれたんだろ?勿体ねぇし、よこせ、なまえ」

「ん、早くしろ」と、歩きながら私に手を向けてくる日向くん。優しいんだが、ただ自分勝手なだけなんだか。仕方ないから、鞄から文庫本を取り出して、日向くんの手に乗せる。これは、ネット通販にも無かったから、私が自分の足をわざわざ使い、本屋巡りをしてやっと見付けたものだ。感謝してほしい。

「これって、俺がいくら探しても無かった戦国武将の本じゃねぇか!よく見つけたななまえ!」
『ふふん、私が頑張って本屋巡りしたのよ。感謝してよね日向く、』

聞いてねぇよコイツ。真夏の虫取り少年みたいに目輝かせてさっそく本読み始めてやがるよ。隣に彼女が居るのに、放置して読書タイムですか。何も無いとこで転んじまえこのアホ野郎。…まあ、それだけ欲しくて読みたかった本だったんだろうね。今日は日向くんの誕生日だし、多目に見て、許してやるか。明日は許さないけど。

『…おめでと、日向くん』「あ?何か言ったか、なまえ?」
『いーえ、別に。ただ、何も無いとこで転んじまえこのクソ野郎って言ったわ。ちゃんと聴いてろダアホ』
「はぁ?そんなヘマ、俺がするかダアホ。てか本、ありがとな。コレすっげー欲しかったんだよ」
『…どういたしまして』
「何赤くなってんだよ、お前」
『うるさい。日向くんなんて、静かに本でも読んでろ、ダアホ』

…いきなり笑ってお礼言うとか、反則だと思う。日向くんのアホ。

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