短編 | ナノ

黒子が押せ押せ


「可愛いです、なまえ先輩」
『黒、子くん…?」

綺麗だなあといつも心中で思っていた彼の透明な水色の目が、私を真上から見下ろす。今、私は何故か黒子くんに押し倒されている。いや、別に付き合っているのだから何の問題は無いだろうと言われればそこまでなのだが、…場所が問題なのだ。

『えと、ここ部室だよ?』
「はい」
『神聖なるところだよ?』
「はい」
『…黒子くんどうしたの?』
「……なまえ先輩が欲しくなったんです」

そんな言葉と共に優しい眼差しで私に微笑みかける黒子くんが、馬乗りになりつつ私よりもずっと大きな男の子の手で頬を撫でてくる。そのくすぐったさに思わず身をよじり、片目を閉じた。
ふと、閉じていない方の瞳で彼を上目遣いで見てみると、目を細めて私を愛しそうに見る黒子くんの姿が目に入り、たちまち頬が自分でも分かる位に熱くなった。
同級生達にクール、冷静などとよく口々に言われるが、彼と居るとどうもそれが崩れてしまう。年上の余裕を見せたい、という気持ちがあるにはあるが、そんなことを考える余裕がない程彼は私を甘く愛してくれる…のだ。

『…キス、してくれないの…?』
「え…」

黒子くんが、私にこの先を期待させる様なことをやっておきながら、いつまで経っても一切何もやってこない。そんな彼が欲しくて欲しくて堪らなかった私は、ついポロっと本心を口に出してしまっていた。
言わなければ良かったと後悔してももう遅い、その言葉を聞いた途端、黒子くんは私の頬に滑らせていた片手をピタッと止め、目を見開いた。とっても恥ずかしくて恥ずかしくて、どうにかして先程の言葉を取り繕うと私は口を開くが、声が上手く出てきてくれない


「……ああもう、何でなまえ先輩はそんなに可愛いんですか…」
『く、黒子く…!』

黒子くんきっと私のこと幻滅しただろうな、と泣きそうになるのを必死に堪えていると、暫く黙っていた彼が口を開いたので顔を上げてみる。…と、黒子くんの頬は軽く朱に染まっていて、そんな彼に私はいきなり唇を奪われた。
一瞬驚いたけれど、待ち望んでいたことなのですごく嬉しくて、すぐに離れた黒子くんに残念がっている自分が居た。…彼は私を熱っぽい視線で、しかも至近距離で見つめると、大人っぽい艶がある微笑みをしながら口を開いた。

「……先輩の御希望通り、気が済むまでキスしてあげますよ」

最後の言葉は言っていないように思えたが、事実私もそうしたいと思っていたので何も言わずに小さく頷き、黒子くんに身体を委ねた。

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