短編 | ナノ

朝が弱い高尾


『Happy birthday Kazunari!!』
「お―あんがと」
『あっれ、何か凄い反応薄いよこの子』

私が朝だとは到底思えない位のハイテンションさ+満面の笑みで言うと、気だるげに眠そうに、目尻に涙を乗せてあくびしつつ答えた、私の幼馴染み兼、親友兼、恋人の高尾 和成さん。通称HSK。

朝から元気?よく言われます。お早うございます、皆さんのみょうじ なまえです。こんな素晴らしい日は特に元気ですよ私は! 何たって、大っ好きな和成の誕生日なんですもの!

…と思ってたんだけど、…その当の本人のせいで何か萎えた。
あれ? 今日この子誕生日だよね? 高尾 和成生誕日だよね? 私間違ってないよね? 間違ってたら最悪やん。

『和成、今日November 21stだよね?』
「そうだぜー(何で英語?)」
『君11月21日に生まれたんだよね?』
「お―」

いつものお決まりの通学路を行く和成の隣に、置いていかれないよう若干早足で歩く。そしたら和成は、私が隣に来たのを確認すると、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。こういう彼の小さな優しさが好きだ。

うーん。間違ってない?じゃあ、何で和成はこんなにテンション低いの? 朝弱いのは知ってるけど、誕生日くらいはもう少しテンション高くても良いんじゃない? 私がおかしいだけ? …あ、私と和成がどっちも日にち間違えてるって可能性も…。

「それ矛盾してるだろなまえ」
『心を読んだ!?』
「ちげぇしwww さっきからなまえがぶつぶつ1人で何か話してんだもん。嫌でも耳に入るって」
『オッ、オオ! ソウダネ!』
「何で片言www」

…いつものことながら、今日もとってもカッコいいよ、和成。いやもう私末期かな? 何か和成の周りにキラッキラのオプションが付いてるように見える。良い意味で。
悪い方の意味じゃないからね。どっかのシャララ金髪モデルみたいな、何故かイラッとくるキラッキラじゃなくて、爽やかなキラキラだからね。…ってそうじゃなくて!

『何で私が本場アメリカの発音で言ったのにそんな反応薄いの!? 何か一人だけ盛り上がって、ただの痛い子じゃないか!! 赤っ恥!!』
「? なまえはいつも痛いじゃん。何を今更」
『ええぇぇえ…。でっ、でもさ! 和成が生まれた日だよ!? 私はスッゴく嬉しいよ!? 産まれてきてくれて有り難う! とか、和成のお母さん和成を産んでくれて有り難う! とか思って…』
「ちょ、やめ…、やめようぜなまえ」

…え? な、んで顔真っ赤? 可愛いけど…何で? 私変なこと言った? 可愛いから良いけど。ここ重要。

「…有り難う。すっげー嬉しい。でもハズい」
『どっちやねん!!』

…ほっとした。和成から有り難うって言葉が聴けて。
…あれ? 今更恥ずかしさが込み上げてきた…!! うっわ、何言っちゃってんの私!! 恥ずかしっ!! …ま、和成の貴重な真っ赤な姿見れたから良いけど。単純なんだ、私。

「俺さ、今日親にも妹にも言われて、嬉しかったは嬉しかったんだけどさ、…まだ朝だけど、今日の中で一番さっきのなまえの言葉が嬉しかったわ」
『おっ、おおっ!! それは良かった良かった!!』

そう言ってふにゃりと柔らかく笑う和成。朝は幸せだぁ、ちょっと寝ぼけてるのか、和成は朝めっちゃくちゃ可愛くなる。いつも可愛いいけど!!
ついその可愛さに私がその場に立ち止まって、にやけていると、その姿を見て恥ずかしくなったのか、巻いていたマフラーで顔を隠した和成。…何だこの可愛い小動物。私より女子力高くね?流石HSK。

「ほら行くよ!」
『ふふっ、分かった分かった』

あー可愛い可愛い和成マジ天使。
マフラーで隠してるつもりなんだろうけど、ばっちし赤くなってるの見えるし。耳まで真っ赤だ。林檎みたいだな。
その姿が可愛くてたまらなくて、心の中でにやけながら、和成に手を引かれて私は学校へと向かった。
真ちゃん、和成におめでとう言えるかなー。ツンデレだしな―、なかなか言えなかったら手伝ってあげよ。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -