短編 | ナノ

キセキの入れ替わり


「なまえっちいぃいいぃ…っ!!」
『え』



黄瀬特有の「っち」付けで名前を呼ばれ、すぐ後に抱き付かれる衝撃。いつものこと、いつものこと、なの、だが。いつも嫌という程抱き付かれているから分かるのだが、私に抱き付く黄瀬の身長が、妙にいつもより少し高いような気がした。それだけでは無い、匂いが違う。黄瀬は香水も何も付けてないらしいけど、彼からはいつも、バニラみたいな甘い匂いがした。
でも今は、甘いは甘いのだが、いつものそれとは違う匂い。そう、いつも緑間が飲んでる、お汁粉みたいな甘い匂い。ていうか、身長や匂い以前に声が全く違う。え、この声緑間のあのイケボやん。それに、さっきからチラチラ視界に入ってくる白色、これ緑間のテーピング?



「黄瀬えぇ!!俺の身体でみょうじに抱き付くのはやめるのだよ!!」
「緑間って、あんな高い声出たんだな。中身黄瀬だけど」
「青峰くん順応性高いですね。それよりも、あの青峰くんを見下ろす日が来るなんて驚きです。良いですね、189p」
「うっせーよ、テツ」



体育館内を見てみると、紫原は何故だか緑間みたいな語尾で喋ってるし、赤司はネクタイ取って第二ボタンまではずしてるし、黄瀬は何だか落ち着きオーラ出してるし、何かがいつもと違って、変だった。



「赤ちん、何でこんなことになっちゃったんだろーね」
「さあな、じきに元に戻るんじゃないか」



青峰と黒子の声が聴こえたから横を見てみると、これまた異様な光景が出来上がっていた。青峰は紫原みたいに菓子食って、名前に「ちん」付けしてるし、あの天使だった黒子がまるで赤司のように腕組みをして、威圧感を出していた。







『…入れ替わった?』



私が小首を傾げて、疑問符を付けて聞き返すと、皆は揃って頷いた。入れ替わりか。そんな漫画みたいなことがあって良いのだろうか。まあ、面白いんだからあって良いんだろうけど。皆の状態を見て、誰が誰なのか判断すると、

緑間→黄瀬
紫原→緑間
赤司→青峰
黄瀬→黒子
青峰→紫原
黒子→赤司

というところだろうか。



『(……皆、このまま元に戻らなくて良くね?)』



密かにそんなことを思ったけど、思っただけで口には恐ろしくて出せなかった。目の前に居たくろ、じゃなかった、赤司に、「このまま元に戻らなくて良いなんて、考えてないよね?」と真っ黒な微笑み付きで言われたからね。真っ黒子様降臨だ。

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ちゃんと数時間後には皆元に戻りました^ ^

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