短編 | ナノ

緑間妹と高尾


緑間なまえ。彼女の特徴を挙げられるだけ挙げると、深い緑色の長い髪。黒い細見の華奢な眼鏡。長い睫毛に縁取られた、翡翠色の瞳。お堅い敬語。である。現在地は緑間家。休日で何も面白いことがないから、暇潰しに真ちゃん家に遊びに来たら、生憎真ちゃんは留守。
何でも眼鏡屋に行ったらしい。で、真ちゃんもおじさんおばさんも居なかったけど、なまえちゃんは居たのでお家に上がらせて貰って真ちゃんを待たせて貰うことにした。どうやら彼女は、俺が来るまでリビングで一人、受験勉強をしていたようだ。

『…高尾さん、私のことを凝視するのはやめて下さいませんか。非常に不愉快この上ないです』
「なまえちゃんかわいー」

まるでゴミを見るような、冷たい視線で俺を見るなまえちゃん。そんな彼女に平然とニコニコ笑顔で誉め言葉言う俺スゴくね?あ、ちなみになまえちゃんは、真ちゃんの妹ちゃんだ。真ちゃん以上のツンデレで、デレるのは本当稀。

『集中して勉強することが出来ないんですが、高尾さん』
「…」
『な、何ですか、何か付いてます?』
「…んーん、別に。ただ、なまえちゃん秀徳受けるんだっけ」

なまえちゃんのノートの、綺麗で達筆な文字の羅列を見ながら、「去年これ俺もやったなー、うわ、これメンドいやつじゃん」とか思いながら、ふと気になったことを口にした。

「ここからなら秀徳より坂上女子の方が近いっしょ?なまえちゃん女子中だし、高校も女子高じゃなくて良いの?」

ノートに引き続き視線をやりながら、なまえちゃんお堅そうだし、男なんて嫌だとか思ってそうだし、どうなのかなーって思いながら返答を待ってた。けど、いつまで経ってもなまえちゃんは口を開かない。
どうしたのかな、と不思議に思って目線を上げると、なまえちゃんは顔を真っ赤にして唇をきゅっと引き結び、視線を下げて恥ずかしそうに手元を見ていた。え、何か変なこと言った?俺。

「え…、なまえちゃん…?」
『…秀徳には、真太郎兄さんも居ますし、心配無さそうだな、と思ったんです。…あと、高尾さんも居ますし、その…、た、楽しそうだな、とも思った、ので…』

途切れ途切れに、だんだん小さな声になりながら、なまえちゃんはそう言った。それも、ちょっとずれた眼鏡越しに、チラチラと上目遣いに見てくるオプション付きで。
何この可愛い小動物。こんなこと言うだけで真っ赤になるとかどんだけよ…!!なまえちゃんを抱きしめたくなる衝動を必死に抑えながら、俺もつられて真っ赤になっていると、扉が閉まる音がした。

「ただいまなの…だよ、なまえ…?」
「ししし真ちゃん!?」

真っ赤になって、今にも泣きそうななまえちゃん。その側に居る俺。真ちゃんはそんな俺達を交互に見て、眉間にこれでもかというくらい皺を寄せた。そして、極めつけだといわんばかりになまえちゃんが涙声で「に、兄さん…っ!!」と真ちゃんに抱き付いた。

「高尾おおおぉぉ!!!」
「ご、誤解だって真ちゃん!!何もして…し、したけどしてないって!!」
「意味が分からないのだよ!!」

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