短編 | ナノ

真太郎お兄ちゃん


『流石は真太郎。手慣れてるね』
「当たり前なのだよ」

ちらりと上目で私の方を見て、得意気にそう言った真太郎は、また手元へと視線を向ける。私と真太郎は珍しい男女の双子で、彼が兄で私が妹である。
私も彼と同じくバスケ部に所属しており、ポジションも同じSG(シューティングガード)スリーポイントシュートを得意とする。真太郎みたいにコートのどこからでも打てる、って訳じゃないけどね。

「しかしなまえ、お前、こんな手入れの仕方をしていたらいつか爪を痛めるぞ」
『えっ、本当?』
「ああ」
『そっか。はあ、ダメだなぁ、私。自分なりに調べてやってみたつもりなんだけど…』

シャッシャッと切れの良い音を聴きながら、「あはは…」と困ったように笑う。そんな私の言葉を聴いて、真太郎がやれやれというように呆れの溜め息を吐く。
私はバスケのとき以外、繊細な作業が苦手だ。繊細な指の動きを必要とするスリーポイントシュートは得意なのにも関わらず、爪の手入れなどの繊細な作業は苦手なのだ。

「お前は女なのだから、細かいところにももっと気を配れ」
『うーん、そうしたいのは山々なんだけど、ねぇ…』
「…爪ならいつでも整えてやる」
『本当!?真ちゃん!?』
「その呼び方はやめるのだよ!!」

いきなり威嚇をするように声を張り上げた真太郎に、「ごめんごめん」と笑いながら謝ると、腑に落ちないという表情をしながらもまた私の爪を整えてくれる。いつの間にに真太郎の手、こんなに大きくなってたのかなぁ。
ムスッとした兄の顔を見て、柔らかく微笑む。何だかんだ言って、優しいんだよなあ。「好きよ、大好き、真太郎」とそのまま優しく呟くと、一瞬目を見開いて恥ずかしそうに目を細めた真太郎が、口を開いた。

「またお前は、そんなことを…!」
『だって本当のことだし。可愛いね、真太郎』
「っ…!!」

元々プライドの高い彼だけど、兄としてのプライドもあるんだろう、顔を赤くしながら悔しそうにこちらを睨んでいる。はは、顔が赤いから全然恐くないや。


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