短編 | ナノ

赤司とキス


勉強なんて、嫌いだ。人には向き不向きがある。勉強もそうだ。他のもの、運動、音楽、調理、それ等は、「君はこれには向いていないんだ。人には向き不向きがあるんだから、しょうがない」そんな言葉で済むのに。
勉強というものだけは、向いていなくても、日本人ならば最低九年間はやらなくてはいけない。勉強にも向き不向きはあるのに、成績、学歴でこの世界は将来が決まってしまうことがある。そんなの、酷いではないか。

「で、きみはつまり何が言いたいんだ」
『勉強したくない!!』

今は、征十郎くん宅にお邪魔して、お勉強中。間近に試験が迫っており、成績がアレな私に征十郎くんがご指導してくれているのだ。ちなみに、私の成績はどうやって偏差値の高い洛山高校に入ったのか、不思議に思う程だ。察して頂きたい。

「無駄にシリアスな言葉を並べて、言いたいことはそれか。…なまえ、きみは一体どうやって洛山に入ったんだ?」
『そりゃあ、気合い!根気!やる気!熱意!運!』
「…実力とは言わないんだな」
『実力云々以前に、もっと大切なことがあるだろう!!』

溜め息を吐き、呆れた表情で私を見てくる征十郎くんに向かって、ドヤ顔で右手の親指を立てて見せる。そうしたら、征十郎くんは哀れむような視線で、私のことを見てきた。え、ちょっとその目やめてよ征十郎くん、私が痛い人みたいじゃないか。

「…じゃあ、こうしよう。なまえが勉強を頑張ったら、僕が何かご褒美をあげるよ」
『ご、褒美…?』
「ああ」

私は征十郎くんから勉強を教えて貰う立場なのに、彼からご褒美まで貰っても良いのだろうか。バチとか当たらないかな。まあ、頑張ったらくれるとあの征十郎くんが言っているのだから、有り難く貰っておこう。
私的には、アイスクリームとか貰えたら非常に嬉しい。そういえば、新しい味出たらしいんだよなあ。まだアイスクリームが貰えると決まっていないにも関わらず、自分の世界に入り浸っていると、近くで突然、控え目なリップ音が聞こえた。
それにより我に返ると、視界いっぱいには何故か、征十郎くんの首元が見えた。うわ、鎖骨キレイ。じゃなくって、え!?額の温もりと、リップ音から察するに、征十郎くんは私のおでこにキスをしたのだろう。

『ちょっ…!征十郎くん!?』

私が顔を赤くしてわたわたとしていると、彼は至近距離で柔らかく微笑んで、「君が頑張ったら、もっとキスしてあげるよ」と妖しく笑って、私の腰を抱き寄せた。ああ、もう、征十郎くんにこんなことされたら、私、頑張るしかないじゃないか。

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