短編 | ナノ

緑間妹と緑間と宮地と高尾


「なまえーちゃんっ!」
『ふぎゃあぁっ!!』
「ぶははっ!!何その声!?」



秀徳高校の図書室は、ボロな体育館と違ってとても綺麗だ。何でも、生徒が気持ち良く心置き無く勉強を出来るように、らしい。だったら「気持ち良く心置き無くバスケが出来るように、体育館も改装しろよな」って毎度毎度ここに来る度思う。
実を言うと、勉強の方はあまり得意では無い俺が何故こんなところに来ているかと言うと、この女の子、なまえちゃんが原因である。彼女は俺と同い年で、本名緑間 なまえ、クラスは俺の一個前、名字の通り真ちゃんの双子の妹。それと、人間恐怖症、コミュ症とも呼ぶかな。



『あ、あの、高尾くん。い、いきなり声を掛けるのはやめて下さいと、あれ程…』
「ああー!!もう無理もうヤダなまえちゃん可愛い!!」
『ひっ!!』
「…やめるのだよ、高尾」



ガバッと両腕の中になまえちゃんを閉じ込めると、冷たい声色で真ちゃんが俺を睨み付けた。なまえちゃんはビクビクして瞳に涙を溜めながら、するりと俺の腕の中から抜け出して真ちゃんに抱き付いた。かーわい。



『しっ、真ちゃん…っ!』
「大丈夫なのだよ、なまえ」
「…毎回思うけど、真ちゃんってなまえちゃんにだけは恐ろしいくらい優しいよな。シスコン?」
「死ね」



なまえちゃん以外には絶対見せないであろう柔らかい表情で、彼女の背中辺りまである髪を撫でる真ちゃん。込み上げてくる笑いを必死に耐えていると、ゴミを見るような冷たい視線で見てきた。ひっで、てか態度豹変し過ぎじゃね?



「緑間ぁ、高尾ぉ、堂々と部活サボってんじゃねぇよ」
「げ、宮地サン…」
『きっ、清志先輩。こ、こんにちは』
「おー、なまえか」



いつまで経っても体育館に来ない俺達を探しに来たのだろう、宮地サンが図書室にやってきた。真ちゃんに後ろから抱きしめられているなまえちゃんを見付けると、小さく笑みを溢した宮地サンは彼女の頭に手を伸ばし、髪を少し乱した。あ、真ちゃん不機嫌。



「兄貴と違って素直だな、なまえは」
「宮地先輩、なまえの頭から手を離して下さい」
「あ?緑間には関係ねぇだろ」
「あります」



兄貴と兄貴の部活の先輩に挟まれて、泣きそうになっているなまえちゃん。んー、泣きそうになってんのも可愛いわ。俺は笑いながら二人の間へと割り込み、「喧嘩してないでさっさと部活行きましょー」と二人の背中を無理矢理押して、廊下へと出た。
「あ、」と振り返って心配そうにこちらを見ていたなまえちゃんに、笑顔付きでヒラヒラ手を振ったら、黒いオーラを漂わせてる真ちゃんと宮地サンに思いっきり睨み付けられた。こえー。

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真ちゃんの妹になって、真ちゃんと高尾と宮地先輩と四角関係になりたいっていう願望。

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