50000打企画 | ナノ
黒子のバスケ×デュラララ!!
ここにはもう何回も来ているが、この部屋に持つ印象は変わらない。ンプル、これに限る。それ以外に持つ印象と言えば…全体的に色が黒いぐらいだろうか。そんな部屋に赤い彼が居るので、この部屋では一番彼がよく目立つ。…そんなことをぼうっと考えていると、下からパチンと将棋をさす音がした。

「これでどうだい?」
『…はあ…投了、お手上げだよ赤司』

両手を上げ、お決まりのポーズを取ると私は手元の鞄からホチキスで隅を止めてある白い数枚の紙を取り出して、赤司に差し出した。これは何かというと、私がハッキングをしたときに見付けた“情報”である。ハッカーとしてこのような情報を無下に教えたくはないのだが、お得意様の頼みなのでしょうがない。

「悪いね、いつも」
『…将棋に負けたら情報を渡すっていう無謀な約束、何でしちゃったんだろう…。っていうか、あの秘書さんは?』

私から情報を受け取ると、それを手に彼はソファーから立ち上がり窓際へと歩を進め、窓際に設置してある机の引き出しにそれを入れた。この部屋は、彼の自宅であると共に事務所でもあるのだ。

「さあ?菓子でも買いに行ったんじゃないか?」
『さあって…』
「どうせ帰ってくるんだから場所なんてどうでもいい、敦は追われる身だからね」

赤司は薄く笑みを溢しながらそう言うと、これまた黒い色の椅子に腰掛ける。その際に椅子から小さく軋んだ音がしたのだが、その音が妙に私には大きく聞こえた。

『…ふーん。じゃあ私は帰るよ、用事もあるしね。これからもご贔屓にして下さいよ、情報屋の赤司征十郎さん』
「それは僕の台詞だ、なまえの持ってくる情報は興味深いものばかりだからね」

机の上にぽつんと置いてあった将棋の駒を弄りながら、「情報料は振り込んでおくよ」と口にする赤司を背に、私は彼の家を後にした。







『あれ?真太郎と和成?また仕事?』
「そうなんだよー、今日は妙に仕事の量多くてさぁ…なっ真ちゃん!」
「黙るのだよ、高尾」

赤司の家に向かうときも一度会った、借金の回収業をしているこの二人。今のように仕事をしている姿を見ると、本当にこの仕事と彼等は似合っていない。しかも、真太郎の態度を見ているとどちらが上司だか分からない。
不景気だとはいえ、何故この仕事に就いたのだろうか。真太郎の事の経緯は知っているが、和成の方は何を理由に就いたのか全く分からない。
以前に、彼が借金の回収相手の頭を踏みつけたりしているのを見たことがあるが、本当に似合わなかった。しかし何でか様になっているからイケメンはやっぱ別格だなと思った。

『大変だね……あ、もう行くわ、待ち合わせしてるんだ』
「え、もしかして彼…!?」
『んな訳あるかバ和成。じゃあね真太郎』

あからさまに驚いた顔をし、どことなくニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる和成を、睨み付けると、私はバーテン服の真太郎だけに挨拶をして母校である来神…来良高校の後輩達との待ち合わせ場所へと向かった。







『ゴメンゴメン遅くなっちゃった』
「なまえさん遅いっスよー!」

待ち合わせ場所である喫茶店に入ると、カランカランと扉に付けられた鈴が鳴り、黄色の後輩がガタッとテーブルに手を付いて席から立ち上がった。相変わらず、テツヤはバニラシェイクを飲んでいる。

『ゴメンって!…ってか私が悪いんだけど、涼太に言われると何かイラッとくるわ、何でだろ』
「黄瀬くんですからしょうがありませんよ、なまえ先輩」
「ヒドッ!!」

この喫茶店の常連客である私は、知り合いである優しい微笑みをしている女性の店長さんに紅茶を注文し、涼太の隣の席へと腰を下ろした。テツヤの隣はおそらく、というか絶対さつきちゃんだろう。彼女はお手洗いに行っているのだろうか。注文した紅茶がもう届いて、それを飲みながらテツヤと涼太と談笑しつつ考える。
彼等は親友同士だが、各々他人には言えない秘密を持っている。…まあ、私は全て知っているから秘密とは言えないかも知れないが。そして、それがバレるのももう間もなくだろう。他人には言えない秘密を一番知られたくない親友に知られれば、この“親友”という関係がどう崩れるか…はたまた崩れないか、とても興味深い。後輩のことは大好きだが、私はそれ以上に傍観者という立場を愛しているので、彼等のことを助けることは出来ない。彼等ならどうにかすることが出来ると信じているからでもある。
まあ、要するに私は赤司と同じ価値観を持っている人間だ。

「あっ、なまえ先輩来てたんですか。こんにちは」
『こんにちはさつきちゃん。ちょっと訊いてよ、涼太ったら…』

…まあ、赤司のように後輩や同級生、友人を駒のように思ってはいないから、彼と同類だって考えられるのはちょっと嫌だな。






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