50000打企画 | ナノ
黒子のバスケ×医者
『腹へった…』

猫背になって肩を落とし、フラフラと頼り無い足取りでピッカピカの廊下を歩く私。腹へったとか医者には到底見えない様なことを言ってはいますが、これでも一応小児科のナースの端くれです。こんな私が今どこに向かっているかというと、無論食堂。
この馬鹿でかい大学病院の食堂は、病院の食べ物だとは到底思えない程に美味しい。この病院に勤めて何年か経つが、どうやら一般の人間にも解放されているみたいだ。食堂の自動ドアが開くと、小さな話し声とカチャカチャと食器の音のみが聞こえた。

『(…3時過ぎだし、そりゃそうか)』

ふぅ、と短く息を吐きながら、手首の時計を見やる。時間を確認し顔を上げ、誰か親しい人間は居ないかと辺りを見回す。独りぼっちで遅めの昼食を取るなんて、どう考えても悲し過ぎるだろう。

「あっ、なまえっちっ!」
『うわっ』

誰も居ないかあ、と落ち込んでいると、ガバッと後ろから突然抱き付かれた。そのとき、フワリとなびいた真っ白な白衣が視界の端に見えた。

「会いたかったっス〜!なまえっち不足だったんスよ〜!」
『そりゃ、どうも』
「黄瀬くん、見せ付けるのはやめてくれますか」
「え〜、別に見せ付けてないっスよ〜」
『(うわ、コイツウザイな)』

テツヤくんにじっと、抱きしめられているとこを見られて、ぎゅうぎゅうと暑苦しく抱き着いてくる、一応彼氏の涼太くんを、無理矢理引き剥がす。そんな涼太くんを、大輝くんと敦くんが弄り始める。あー、恥ずかしかった。てか、皆もお昼まだなのか。
ちなみに涼太くんは、心臓血管外科の医者。テツヤくんは私の同僚。大輝くんは救急科。敦くんは腎臓・糖尿病内科所属の医者だ。あ、あと、この場には居ないけど、真太郎くんと征十郎くんは、脳神経外科所属だ。頭良い人は良いよね。

「流石に、疲れたのだよ…」
「はは、最近オペ続きだったからな。お疲れ」
『あ、来た』
「聴いてよ赤ちーん、黄瀬ちんってばねー」
「わああぁぁっ!!紫っちダメ!!ダメっス!!」
「へぇ、気になるね。涼太がなんだい、敦」

ふらふらと覚束なく歩き、椅子に腰掛ける真太郎くんを、テツヤくんと一緒に心配する。脳神経外科って、オペの量半端無いし、睡眠時間を削るなんてしょっちゅうある出来事だ。大丈夫かな。え、涼太くんの心配?する訳ないする訳ない。

「なまえ、お前黄瀬のこと放っておいて良いのか?」
『え、そんなことよりも、今は真太郎くんが心配だから。涼太くんのこととか今どうでも良い』
「…天秤に掛けても、黄瀬に少しも揺れないのな、お前」
『当然。優先順位はハッキリしてるし』

何故だか笑いを必死に堪えながら、私と会話をする大輝くん。あ、吹き出した。真太郎くんとか具合悪いのに、涼太くんに哀れみの視線送ってるよ。優しいな、おい。うん、まあ、征十郎くんの餌食になったんだから、そりゃあ、ねえ。哀れみたくもなるか。

『大変だね、涼太くん』
「赤司くんの餌食になった上に、恋人にまで見捨てられるとは…流石に同情します、黄瀬くん」
「なまえっちいいぃいぃっ!!」

わお、珍しい。テツヤくんが涼太くんに同情したよ。てか涼太くん痛い、超痛い。抱き着くなこのアホんだら。征十郎くんが恐いのはめっちゃ分かるけど、こうしていると私まで征十郎くんの餌食になる。…でもそろそろ2人を止めないと、周りの人から苦情を言われる。それはめんどくさい。

『征十郎くん、涼太くんお腹空いたから、さっさとお昼食べようよ』
「なまえっち…!!俺を赤司っちから助ける為に…!!」
『え』
「それもそうだな」

あれ、涼太くんに何か勘違いされた。めんどくさいな。でもとりあえず放っておこう。今は涼太くんよりもご飯だ。ご飯が私を呼んでいる。






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テーマ「人外ファンタジー」
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