2023's RECORD


January


つまり、ある日、ボンドルドが廃棄槽へ身を投げた。「絶界の祭壇」を使わずに至れる深界六層、袋小路は、なるほど文字通りどん詰まりの打開にも打って付け・・・・・というわけだった。
リミナルに実る知恵の果実
ボンドルド/メイドインアビス

February


え〜やだかわいい。てのひらクルクルしちゃう。
イドフロ一即落ち2コマが似合う男
エアプ卿/メイドインアビス

March


神さまは、誰かになにかをのぞむことは傲慢だとおっしゃっていたけれど、ならばいまのわたしは世界で一等傲慢に違いなかった。口を利かない硬い仮面に、手を伸ばしかけてやめた。彼女のかたちをしたヒトは静かに佇んでいる。
リメイヨ、あなたの声でまた、わたしの名前を呼んでほしい。
掬う砂
リメイヨ/メイドインアビス

April


「君の言う“儲かる”――非合法の組織が動かす大金は、元を辿れば無辜むこの人々の被害によって得たものだ。そのことを忘れないように」
事々しくあげつらうでもない。語気を荒らげたわけでもない。しかし託宣めいて告げられた冷静な声は、吹き荒ぶ海風に掻き消されることは決してなく、彼女は降谷の口上にぴしゃりと打たれたように目を見開いた。
鮮烈
降谷零/名探偵コナン

May


照紅葉。樹冠火もかくや、地獄の業火もさまで違いはあるまい。燃えるようなという比喩が、比喩ではない見事な谿紅葉たにもみじは、しかしながら錦秋きんしゅうと讃するにはためらいが勝る。
完璧なはずの絶景はどこかうそ寒い。望月ではなく、ほんのわずかに欠けたのちの月こそを愛でる習俗をおもいみるに、なるほど情緒を欠いたうつくしさである。
山粧う
凜堂荊/地獄くらやみ花もなき

June


手折った青紫色の花を、長めの前髪の隙間から見下ろして、双子の兄が――凜堂荊が、囁きました。
「別に、お前のためではないよ」
その言葉は一体どちらに・・・・向けられたものだったのか。――未だに、分からずにおります。
忘れ花
凜堂荊/地獄くらやみ花もなき

July


海峡を行く風が彼の金髪を揺らす。白を基調にオレンジのラインが入った定期船が灰色の波を立てながら突き進み、フェリーを追いかける海鳥たちの騒ぐ声が潮騒にも負けずここまで届いた。
THE RAY
赤安/名探偵コナン

August


September


まるで大切なものを扱うかのような、いっそ恭しいまでの手付きは、彼を容易に嘔吐せしめた。嫌味ったらしいほど長い指が殊更に時間をかけて薬指にリングをはめるのを、彼はお上品な坊やの腹をさばき臓物を引きずり出す妄想をしながら見下ろしていた。
The Ring
グラケイ/JW4

October


十を超えた辺りで数えるのをやめた死体たちは、精緻な文様が施されたアナトリア絨毯をぐっしょりと汚し、さしもの掃除屋といえどえしも廃棄を免れないだろう塩梅だった。焦りにのたうつ思索は、いくつもの枝に分かれて各々育っていったが、そのうちのひとつが徐々に大きく膨れ上がり、エントランスを抜けて階段を登る頃にははっきりと認めないわけにはいかなくなった。
つまり麗しのパリを離れてこんな欧亜の境界にまで仕事をしにきたにもかかわらず、正面玄関からお邪魔したわたしがアントレに手を着け損ねたのは決定的だということだ。
The Chimes
ケイン/JW4

November


翌朝ひとりで起床すると、「おはよう。先に出ます。君も良い一日を」と律儀にメッセージを残す甲斐性まで発揮してくれるのだから、本当に元は捜査補佐を専門とするモデルなのかと疑ってしまうのもやむなしだった。
もう一度言おう、恋人が完璧すぎる。
SLAY!
RK800/DBH

December


呆れを表現する口調は心底お上手で、ますますわたしを意固地にさせ、挙げ句の果てには荒唐無稽な妄想すら生み出させた。つまり、精神になんらかの異常をきたした第三者が、いますぐそこの玄関のドアをぶち破って掲げた銃で乱射でもおっぱじめてくれないかという、暇を持て余したローティーンが思い描くたぐいのあれだ。
Lemonade
RK900/DBH

2023年字書き録 つみ
(2023.12.30)
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