広い部屋で所在無げに立ち尽くしたなまえは、真っ赤な顔をして視線をさまよわせた。

「なまえ」

聞き慣れた低い声で優しく名前を呼ばれる。
びくりと身体がふるえた。
命令することに慣れた為政者の声は、拒否権などないのだと言外に知らしめるようで。
なまえは救いを求めるようにヴァレンタインを見るものの、やはり彼はうすく微笑したまま悠然と広いベッドに腰掛けている。

「っ、……」

少女は小さく息を飲む。
躊躇いを多分に含ませたままそろりと歩を進めた。
緊張で手を握り締めたままゆっくりと彼の元へと至れば。

「う、わっ……! ふ、ファニーさんっ」

ぐいっと抱き上げられ、大きなベッドに座った彼の上へ覆いかぶさるような体勢になる。
丸い頬を紅潮させそこから降りようとするものの、彼女をつかまえたまま寝転がったヴァレンタインに両手で腰を拘束されてはどうしようもない。
彼の両脚を跨ぐようにして座ったなまえは、既に真っ赤に上気した顔でおずおずと見下ろした。

「ぅ……ど、どうしても、しなきゃだめ、ですか……」

懇願するように呟く。
緊張と羞恥で微かに桃色の唇をふるわせながら。
こく、と、その小さな喉が鳴るのを愉しみながら、ヴァレンタインはさも困ったと言わんばかりに首を傾げた。

「ふむ。ではこの私が、やはりやめよう、と言うと君は思うのかね?」
「……だ、だって、誰か来るかもしれませんし、」
「君も知っての通り、この時間、ここへ近付く者は誰もいないよ」
「っ……」

それは誰にも見付からないということ、ひいては第三者へ助けを期待するのは無意味だということでもある。
つかまれた脇腹から腰にかけて、やわらかく爪を立てられ、少女はひくりと身を揺らした。
彼の執務室の近くに位置する小さめの寝室、それでも荒木荘のあの住居よりも比べるまでもなく広い部屋。
いつもと違う場所というだけで、なまえは身のすくむような心地だった。

なまえは両脚を開いて彼を跨ぐはしたない体勢のまま、数秒ほど躊躇ったあと、指示された通り――ぷつり、と、着ているブラウスのボタンを自ら外した。
たかがボタンを外す行為。
しかしふるえる手ではいつもよりずっと時間がかかる。
それでもゆっくりとひとつ、ふたつ、外していくと、次第に彼女の肌が露わになっていく。
曝け出された柔肌は羞恥のあまり――あるいは興奮のせいか、既にやわらかな桜色に染まっていた。
ヴァレンタインは彼女を抱き上げてからというもの、直接その肌へ触れることは一切なく、至近距離の特等席でゆったりとなまえの姿態を鑑賞している。
彼女を急かすことなく、しかし逃げることは決して許可せずに。

やっとなまえがブラウスを脱ぎ終えそれを白いシーツへと落とすと、無遠慮に視線が身体を這う。
火照った肌がざわめいた。
次いでのろのろとスカートも脱ぐ。
ついにその身に纏うのは下着だけになってしまい、なまえは気恥ずかしさでもぞもぞと身じろいだ。
頬や耳はますます紅潮し、瞳からはいまにも涙がこぼれそうだ。

なまえが懸命に腕で露出した肌を少しでも隠そうとしていると、腰から膝にかけて剥き出しの太腿を、つつ、とてのひらで撫で下ろされた。

「ひっ、ぅ……」

それだけで少女は息を弾ませる。
未だきっちりと服を着込んだままの彼と正反対な自分の痴態に、否応なしに焦がれるような羞恥が増す。
男のてのひらによって繰り返し、腰から太腿、ひざ、ふくらはぎを撫でさすられ、ベッドに膝立ちしている不安定な体勢の彼女の背筋を、下肢を、ゾクゾクッと痺れのような疼きがはしり抜ける。

「は、あ……ファニーさん、っ、ぁ、」
「さあなまえ、君なら出来るだろう?」
「っ……!」

薄く笑ったまま見上げられ、なまえはこくりと息を飲んだ。
自分よりずっと高身長の彼を見下ろす機会は少なく、それがまた言いようのない困惑と羞恥を感じさせた。

そうして彼に命令された通り――なまえが自ら服を脱ぎ、裸体の状態になるまで、それは彼女がベッドへ至ってからほんの5分足らずのことだった。
しかしなまえにとっては、倍以上の時間が経過しているような心地で。
一糸まとわぬ姿を明るい陽光のもと晒し、なまえは眩暈を起こしてしまいそうだった。
広く豪奢な部屋には、それ合わせたように非常に大きく分厚いガラス窓がある。
ドレープの美しい重厚なカーテンは大きく開け放されているため、眩しいほどの日光が部屋中余すことなく照らしていた。
恥ずかしさのあまりうろうろと視線をさまよわせていたなまえは今更ながらにそのことに気付き、ますます彼の身体の上に跨っているその身を縮こまらせた。
顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。
心臓は早鐘を打つようにばくばくと激しい動悸を繰り返している。

ヴァレンタインは少女のその姿に、満足げに微笑した。
愛おしいなまえの肉体は隠さず、白日の下曝け出され、彼の眼前に差し出されている。
少女が耐えがたい羞恥に駆られて顔を歪めるさまは、堪らなく劣情を掻き立てた。

桜色に上気した肌に添う夜色の髪をはらい、優しく後頭部を引き寄せる。
なまえは勢いよくヴァレンタインの胸へ飛び込んできた。
ふたりの身体の間でなまえの熟れた柔乳が押しつぶされ、むにゅりと形を歪めた。

「っ、ふ、ファニー、さんっ……!」
「よしよし、良い子だ。なまえ、ほら、顔を上げなさい」
「……っ、ね、ねえ、ファニーさん……。……あの、なまえね、き、キスして、ほしい、です……」

なまえの赤く染まった目尻から、大粒の涙が一滴ぽろりとこぼれ落ちた。
手袋を外した指先でそれを拭ってやりながら、ヴァレンタインは深い喜悦で喉奥をふるわせて低く笑った。
この期に及んで逃げ出すことを嘆願するのかと思いきや、やわらかな頬を紅潮させ、恥ずかしげに口付けをせがんできた愛らしさに、年甲斐もなくゾクゾクするほどの昂りを覚える。

「もちろん、喜んで」

重ねられた唇はふたりともひどく熱く、角度を変えて軽い戯れを繰り返したあと、次いで深く口付けた。
耐え難いほどの羞恥から逃れるように、また、彼を非難して八つ当たりをするように、彼の明るいカナリアイエローの髪へ指を絡め、なまえは常よりも積極的にそれをねだった。
ぬるぬると熱い舌が絡み合う。
口蓋や下顎の裏までぬるついた感触が這い、彼女はびくりと裸身を引き攣らせた。

「ふ、は、……っ、ひぁっ!? や、ファニーさん、ぁんん、っ、だめっ」

両腕で彼女を抱き留めていたはずのヴァレンタインの片手は、いつの間にかなまえの背筋や尻たぶを撫で、秘裂にまで至っていた。
常ならば手袋に隠されている白い指先は、くちりとソコを割り開く。
大きく分厚い手は、既に充分に分泌されていたなまえの蜜液に塗れ、汚れていく。

「おや、なまえ? これほど溢れていたなんて。まさか自ら服を脱いだだけでこんなに濡らしていたのか」
「ッ、あ、やぁっ、やめ、ああっあぅ、ぁんっ」
「服を脱いだだけでこれほどまでにと私は尋ねているんだが……喘ぐばかりではなくきちんと答えたまえ」
「ひぅ……っ、ごめんなさい、っ、だって、だって、なまえ、ああ、あぁっ……!」

随分と淫らに躾けられたものだね、と呟きながらヴァレンタインは歎息した。
呆れたと言わんばかりの口調で。
思わずなまえは目を瞠った。
次いで、その瞳からぼろぼろと涙をあふれさせる。
その突き放すような言葉は、とろけた思考のなかでも冷水を浴びせられたかのようにはっきりと胸に突き刺さった。
なまえは羞恥と胸の塞がるような暗然とした気持ちに駆られる。
いますぐにでも逃げ出したくなるものの、強く抱きすくめられた現状では到底無理なことで。

男はその悲哀に染まった表情を薄く笑んだまま見つめると、既に熱くほころんでいる肉厚の淫唇へまた指を這わせはじめた。
後孔から会陰、膣口、花弁をゆっくりと通り、敏感な秘豆をくすぐるように指先でなぞられる。
大きく張りつめた秘芽に触れられたその瞬間、なまえの意思とは関係なく肢体はびくっと引き攣り、無意識に、は、と息を詰めた。
しかしすぐにそこから指先は離れ、またゆるゆると割れ目を往復する動きに戻ってしまう。

ひどくもどかしい刺激に、少女はねだるように浅ましく腰をよじらせていた。
たったいま淫乱な身体だとなじられたばかりだというのに、揺らめく身体はどうしても止められない。
そうして快楽に対する耐性のない自分のはしたない身体に、なまえはどうしようもなく焦燥が募っていく。

やわらかな唇を噛み締めた。
お願い、わたしのこと、呆れないで、嫌わないで。
熱い涙で瞳を溶かしながら、なまえは彼に手を伸ばした。

「ごめ、ごめんなさいっ……ふぁにーさん、ひ、っ、なまえのこと、き、きらいに、ならないでっ……」

しゃくりあげるたび、ひくりと細い肩が跳ねる。
淫らな女の肉体をしていながら、迷子になった幼い子供のように必死に縋りついてくるなまえ。
愛おしい少女に涙まじりにそう哀願され、心動かさずにいられる男がいるだろうか。
ヴァレンタインは昂揚した胸中を落ち着けるように浅く溜め息をついた。
それを呆れと勘違いしたなまえはびくりと身をすくませる。

「私がなまえを嫌うはずもないだろう? そう泣かないでくれ」

君に泣かれると弱い、と囁きながらこぼれる雫を唇で受け止めれば、なまえはおずおずと顔を上げてまた口付けをねだった。

――高い天井に合わせた大きな窓からは、相変わらず燦々と陽光が降り注いでいる。
大きなベッドの上、その眩しいほどの日光に照らされたなまえの裸体は、まるで一幅の絵のようで。
しかし、潤みとろけた瞳、熱を孕んだ忙しない呼吸、しっとりと汗の浮かぶなめらかな肌、噎せ返るような濃密な発情の香り。
それら全ては欲情の生々しさに満ち溢れている。

「ん、ん……あ、はあっ、っ、ふ……ぁっ」

なまえはあえかな吐息を細く繰り返しながら、ふるえる手で自らの乳房をゆっくりと揉みしだいていた。
桜色に上気し瑞々しく張りつめた双乳は、興奮と羞恥でふるふると揺れる。
普段はやわらかく、触れれば指が沈むような肉質の乳房は、いまや興奮して血の気が通い、吸い付くような極上の弾力を示していた。
ぷっくりと乳輪ごと大きく膨れた乳首は、重力に逆らうようにツンと立ち上がり、薄紅色に充血している。

なまえは息を荒げながら両手でたっぷりと房球を寄せ上げた。
きれいな円形の膨らみをたぷたぷと弾ませては、ぎゅっと指を食い込ませる。
左手で片方の乳肉を握り揉み、右手でもう片方を掬うように持ち上げ、勃起した乳頭を摘まんでぎゅうっと刺激する。
抓るような指の力に僅かに痛みを覚えたらしい。
なまえは、く、と眉を寄せた。
しかしすぐに表情はうっとりととろけ、その痛みすらも快感であることを如実に示す。
たわわに実った乳房は彼女自身の手によってやわらかく形を変え、それを指示したヴァレンタインの目を楽しませていた。

彼の腰を跨いで膝立ちし、自慰に耽る少女。
仰向けに寝そべって下からその痴態を鑑賞していたヴァレンタインは、彼女の腰を支えてやりながら、自分がひどく昂ぶっていることを認識していた。
時折いたずらに、触れている背筋や腰に爪を立てたり指先でくすぐったりすれば、なまえは顔を歪め、ぴくぴくとふるえて逐一律儀に反応を返す。
おそろしく煽情的な光景に、感極まった熱い吐息が、は、と漏れた。

明るい日のもと曝け出されたなまえを見上げていると、だらだらと粘液が垂れ、幾筋も跡をつくっている内太腿が目に付いた。
笑みを深め、そこへ片手を伸ばす。
淫らな蜜の伝う太腿を指先で優しく引っ掻くようになぞれば、なまえはびくっと跳ねた。

「なまえ、ここも寂しそうだろう?」
「ふ、っ、んあぁっ……! は、はいっ……」

柔乳を揉みしだいていた片手を引かれる。
なまえは導かれるまま、指を自らの下肢へ這わせた。
脚の付け根――しとどに濡れそぼった陰唇は、ぬちゅりといやらしい音を漏らして彼女自身の指を簡単に受け入れた。

躊躇いに手が止まったのは一瞬のことで。
なまえはすぐに、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながらはしたない行為にのめり込んでいった。
ソコは既にほころび、くぱりと口を開けていた。
淫らにぬかるむ隘路はきゅうきゅうと収斂して自分の指を咥え込み、熱く吸い付いてくる。

なまえは、はあっと甘く爛れた吐息をこぼした。
濡れた瞳は一層潤む。
命令はするものの手は出してくれず、じっと自分を見上げているだけのヴァレンタインに懇願する。

「ひ、うぅ……ファニーさん、あんまりそんなに、……ッ、み、見ないでください……」

視姦され続けているなまえは、耐えがたい羞恥に襲われ彼と視線を合わせようとしなかった。
しかし伏せられた睫毛の隙間からは、欲望にとらわれ濡れた女の瞳がちらりちらりと見え隠れする。
涙の残る真っ赤な目尻は火照り、楚々とした顔はとろりと淫らに熟れていた。

「そうは言うが……これほど愛らしい姿の君を差し出されて、存分に楽しまないほど私は愚かな男ではないさ。……ふふ、なまえはそうしてナカを掻き回すのが好きなんだね」
「……ん、ひあぁっ……っ、す、すき、すきです……これ、きもちい、ふ、ぁぅ、んあっ、」

なまえは濡れそぼった蜜孔に自身の指を埋め、ぐちゅ、にゅぷ、と粘性を帯びた卑猥な水音を響かせながら自らを愛撫している。
いつの間にか、指示された訳ではないというのに、彼女は胸を揉みしだいていたもう片方の手もそこへ伸ばしていた。
しとどに粘液を垂らし続ける膣口と、痛いほどに張りつめ勃起した秘芽。
それぞれ両手で掻き回し、擦り、摘まむ。
特に赤く膨らんだ突起を捏ね回すたび、あられもない嬌声を迸らせ細い腰をびくびくっと跳ねさせていた。
それと連動して、ピンと先端の尖った乳肉がそそるように甘く揺れる。

視姦されながらの、淫猥なひとりあそび。
他のことなど考えられないほどなまえはそれに没頭していたが――しかし、どうしてもナカの奥深いところには届かない。
もどかしい欲求が溜まっていく。
体勢的にも肉体の構造的にも、自分では膣口の浅いところしか刺激することが出来ない。
なまえは焦れったく腰を揺すった。

――羞恥は確かに感じている。
しかし、頭のなかは白い靄に覆われたように判然としない。
とうに思考はぐずぐずに溶けきっていた。

「……っ、ファニーさん、」

ふるえる手で彼の衣類を引っ張る。
ヴァレンタインは何も言わない。
やはり悠然と微笑したまま彼女の行動をただ視認するだけだ。
その表情はなまえが何を求めているのか理解しているのは明白だったが、涙でぼやけた視界にいる彼女にはそう判別するだけの思考力は残されていないようだった。

「ぅ……」

しかし、なまえはとろんと惚けた表情でなまえは唇を噛み締めた。
喉が痛むようにじわりと熱くなる。

……また、はしたないと叱られるかもしれない。
そう思うと、胸のなかで怯えの気持ちがどんどん膨らんでいくのを止められないでいた。

それなのに、熱と疼きは身体中を苛むばかりで。
淫蕩であるよう躾けられたなまえは、どうしても己れを律することが出来ない。

は、と爛れた息を吐き出し、白い手をふるわせながら――、一部の隙もなくきっちりと着込まれていた男の衣類を寛げ、既に熱く猛っていた剛直を露出させた。
理性の飛んでいる思考でもやはり羞恥は多分に感じるらしく、動作はのろのろとしたもの。
なにより、熱い視線がつぶさに少女の総身を這いまわっている。
ねっとりととろ火で煮詰められるかのような疼きが、なまえの腹奥でざわめいた。

……しかし、そこで少女は手を止めた。
潤んだ瞳からはまた涙がこぼれそうになっている。

彼女が感じていたのは、悦楽に溺れてしまいたい欲求と、彼に失望されたくないという怯え。
なまえはその狭間で泣き出しそうになっていた。
胸の奥には、先程向けられた自らの淫乱さをなじる呆れた口調と言葉が突き刺さって消えずにいる。

快楽とは違う、憂い沈んだつらそうななまえの表情。
それを見上げて、ヴァレンタインは首を傾げた。

「なまえ? どうしたんだ」

伏せられ隠されていたなまえの目蓋の下。
きゅっと眉をハの字にして、いまにも雫をこぼしそうな濡れた瞳。
いまにも泣いてしまいそうな顔で、救いを求めるような表情で、なまえは彼を覗き込んできた。

「……ひぅ……あの、っ、……き、きらいじゃない? ……ふ、っ、こんな、いやらしいの、なまえっ、なまえのこときらいに、……ひぁっ」

どろどろにとろけたメス顔を晒しながら、それでも不安げに瞳を潤ませた彼女にそう問われる。
ゾクゾクッと彼の肌が粟立った。
思わず細い背をかき抱く。
彼に比べ甚だ小さな肢体は、あっけなく腕の中に収まった。
力強く抱きすくめたまま夜色の髪に顔をうずめ、耳元に唇を寄せる。
昂りでかすれた吐息まじりに、彼女の熱く火照った耳へ、先程言ったように嫌うはずがないだろう、と囁いた。

「は、ぁ……ふぁにー、さん……」

その瞬間、淫靡にとろけていたなまえの顔に、やわらかな微笑みが浮かんだ。
ほっと安心したような微笑。
その笑みは驚くほど邪気なくあどけなく、この行為の最中でなければ庇護欲を掻き立てられ、小さな子供にするように優しく頭でも撫でてやりたくなるほどに愛らしいものだった。

きつく抱き締めれば、縋るようになまえも彼の胸板へ頬をすり寄せた。
その仕草はやはり幼い子供のようだったが、しかしながら同時に淫らな欲望を持て余した肢体は、いまだやり場のない熱で身悶えていた。

ぎゅうぎゅうとしがみ付いてくるなまえの背を撫で、どこまでも雄を煽るのに長けた少女に静かに歎息した。
――成る程、これは手放しがたい。

「……っ、なまえ、自分で挿れられるだろう?」
「ぅ、……は、はい……」

昂揚のあまり荒くなる呼吸の合間、彼女自身で挿入するよう促す。
しかしそれでもほんの僅かに躊躇いを見せているなまえに薄く苦笑した。
ヴァレンタインは抱き寄せた耳元へ、いやらしく乱れる君が見たい、と吹き込む。
なまえの頬の赤みが増した。
まるで清純な乙女のように。

浅ましい興奮を許してもらえる安堵。
そして何より、男の瞳の奥に情欲のぎらぎらした炎を見付けてなまえはそっと微笑んだ。

……わたしばかりが昂ってるんじゃない。
そう思うと、こんな自分相手でもちゃんと興奮してくれる彼が堪らなく愛おしく、甘やかな多幸感でなまえはとろりと微笑を深めた。
肉体的な快感を追うのは簡単だったが、ヴァレンタインが自分を求めてくれているのだと理解しその思いが胸中に広がっていけば、精神的にも深い喜悦を覚えていく。

愛おしさや心地良い陶酔で胸はいっぱいで、自然と頬がゆるむ。
彼にも気持ち良くなってほしい、彼にも快楽を感じてほしい。
その一心でなまえは意を決したように、きゅ、と唇を噛み締めた。

「――っ、は、あ、ぁっ、んんッ……!」

なまえは総身をふるわせながら上体を起こし、彼の腹に手を着く。
熱く膨張した肉茎と、蜜の滴る秘裂が触れた瞬間。
ぐちゅりと淫靡な音が漏れた。

なまえは楚々とした容貌をとろかせながら、少しずつ少しずつ、腰を落としていく。
狭隘な襞をこじ開けるようにして、ぐぐ、と太い肉竿を飲み込んでいった。
あまりのじれったさに、ヴァレンタインは乱雑に付き上げてしまいたい欲求に駆られるものの、は、と深く息を吐き出してそれをやり過ごした。

「ひ、っ、ああぁあぁッ……! ――はっ、はあっ、おっきいの、あぁうっ……おなか、あつ、あついぃ……」
「ッ、ふ、よく出来たね、なまえ」

みっしりと膣粘膜を奥まで満たし尽くした、熱い雄の脈動。
それを身体のナカで感じたなまえはびくんっと背筋をふるわせた。
ヴァレンタインはくずおれ倒れ込んできたなまえをしっかりと抱き留め、縋り付いてくる肢体を褒めるように撫でる。
汗の浮いた額へ軽く口付ければ、少女は嬉しそうにまた瞳をとろとろと潤ませ、唇を擦り合わせて積極的に口付けをねだってきた。

恥じらいと理性に悶えつつ、必死に自制しようとする姿も嗜虐心をくすぐられるが、やはりこうして悦楽に素直になって一心に求めてくる媚態にも、堪らなく胸を締め付けられる。

「はあっ、は、あぁっ……ふぁにーさん、ふぁにぃ、さぁんっ……うごいていい? っあ、ふぁあ……なまえ、奥にいっぱいほしいよぉ」
「っ、ああ、なまえの好きなように動いていい」

雄を咥え込んだ媚粘膜はとろとろにこなれて、律動を急かすように浅ましく蠢いている。
上手く力の入らないなまえの上体を起こさせ、自由に喜悦を追うよう告げた。
少女は至福に満たされたようにやわらかく目を細めた。

はじめは恐る恐る、やがて全身を使って激しく。
なまえは熱く膨張した肉茎へ、ぐちゃぐちゃにぬかるんだ隘路を押し付け、擦り立て、腰を前後に揺らして快感に酔い溺れていた。
反り返った雄に溢れる蜜液を絡めながら、肉襞を掻き回される感触。
体勢のせいで自分の体重が全て結合部にかかり、いつもよりも奥深くまで突き上げられ、なまえは喉の奥を引き攣らせた。

善がり声をあげて腰を揺らすなまえの媚態は、言葉に出来ないほどに淫らで。
普段は性的なものを感じさせることない爛漫な彼女だからこそ、尚更そう強く感じるのかもしれない。
ヴァレンタインの腹に手を置いて腰を打ちつけるたび、意図した訳でないものの彼女自身の腕によって寄せられた乳房が、谷間の影を深くしてたぷんたぷんと大きく上下に弾んだ。

ぬぢゅ、ぐぷ、と結合部からは淫らな水音と肉のぶつかる音が生々しく響く。
ヴァレンタインは乗っかっている細腰をつかんで時折気紛れに突き上げれば、少女は白い喉を反らしてがくがくと身悶えた。
子宮が、内臓が突き上げられるような衝撃に、腹から下が溶けてしまいそうな錯覚すら覚える。

雄を咥え込んで放さない襞を強引に突き回され、引きずり出され、繰り返される抽送に、なまえの目の前でばちばちと火花が散った。

「っは、いい眺めだ。腰を振って……それほど気持ちいいのか」
「あ、あ、ひあぁっ! あぅぅっきもち、いいっ、なまえ、きもちいいれすっ……! ひ、うぁ、あぁっああぁっ……!」

腰を揺すり立てながら、淫蕩にとろけた笑みで、ファニーさんもきもちいいですか? と問われ、ヴァレンタインは口角を上げた。
なまえの瞳を見上げれば、欲を孕んでぎらぎらと光る彼自身の瞳が映っている。
堪らず上体を起こして唇を重ねると、なまえは幸せそうにとろとろと光彩を揺らめかせて舌を絡めた。

メイフェア・レディにはならない

- ナノ -