(※女祈手×エアプ卿のおはなしです。エアプボンドルド、攻主エロ、異物挿入、隠語淫語、濁点喘ぎ、汚喘ぎを含みます。成年かつこれらの要素がお好きな方だけどうぞ)




辺りをはばからずクソデカ溜め息をついたら、隣に立つ白笛がめちゃくちゃのんきに「なんです?」と顔を覗き込んできた。

「なまえ、どうかしました?」
「いやまあご覧の通り、どうかはしていますけど……」

なんということでしょう、わたしたちが実験棟と呼んでいた区画は、いまや気持ちよく風穴が開けられて、なんにもないだだっ広い空間と化していた。
ほんの数分前まで、無数の配管やら器具やらでごちゃごちゃしていたはずの実験室は見る影もない。
未だあちこちからぷすぷすと細い煙が上がっており、いっそ清々しいほどぶち開けられた穴からは「前線基地」外周の殺風景な景色が見えた。
いくら復元する性質を持つ祭祀場跡といったって、さすがに木っ端微塵に消し飛んだ実験器具や書類までは帰ってこないだろう。

元実験室は死屍累々、同僚たちがそこここで伸びていた。
薬剤を用いた実験中、他でもない元凶が、突然「こっちのも入れればきっと効果が倍になるはずです!」とかなんとかアホなことを抜かして、予定になかった薬品をぶち込んでくれやがったのが原因である。
ビーカーのなかでなんらかの化学反応が起こってしまったらしく、混ぜられた薬液は一瞬変な色に発光したかと思えば、次の瞬間、爆発した。
爆風のなか「爆発オチなんてサイテー!」とか叫んでいた同僚は無事だろうか。
お前それ言いたかっただけだろ。

幸いわたしは爆発に巻き込まれず、同じく難を逃れた祈手数人が救護に当たっていた。
空いた穴から吹き込んでくる容赦ない冷風に、はじめは「寒いです!」だのなんだの喚いていた元凶も、誰にも相手されずに飽きちゃったのか、いまは大人しくわたしの横でその涙ぐましい光景をのんびり眺めている。
どうしてこいつも無傷なんだろうか。
いっそ「おのれ〜ッ!」云々叫んで爆散していたらなあ。
すこしは気が晴れただろうに。
本人には言えやしないが。

「はあ……原作卿ならこんなアホなポカ、やらかさないんだろうなあ……」
「げんさくきょう?」

思わず呟いたら、隣に立っていた黎明卿がこてんと首を傾げた。
処女っぽい無防備な仕草にイラッとする。
というか、ご自覚はおありなんだろうか。
あんたのせいでこんなことになっているって。

このはた迷惑な元凶もといエアプ卿、世間では黎明卿だとか仰々しい名前で呼ばれているものの、実はマジでアホで救いようのないドジである。
やらかしたヘマや失敗は数知れず。
ひとつひとつ挙げればキリがないが、最近だと――目の前のコレを除いて――、五層で資材の補給作業をしている最中、なにを考えたか(たぶんなにも考えていなかったに違いない)、岩場に空いていた穴を突然ひょいと突っついたら、なぜか突然現れたマドカジャクのせいで補給班がめちゃくちゃになったのも記憶に新しい。
だいたいマドカジャクが生息するのは三層のはずなのに、なんでここにいたんだ。
黎明卿の二つ名を持つ白笛が、その実、九九%成功するはずの実験が意味の分からんハプニングによって失敗する神がかり的ポンコツなのは、わたしたち祈手の間だけの秘密である。
もしもこんなエアプ野郎の実態がバレたら、白笛への憧れが半減どころか九割くらい消え失せてしまう。
すくなくとも我々はそう。

ちなみに一応弁明しておくと、上司であるはずの彼に対して、わたしが特別当たりが強いわけではない。
この白笛、他の祈手からも手のかかる幼児みたいな扱いをされている。
いまも「卿が変なもの見付けたり襲われたりしないように、なまえ、見張っててくれ!」と頼まれたので、わたしは救護活動に加わるでもなく、黎明卿の横で同僚たちが頑張っているのを眺めていた。
手持ち無沙汰とあなどるなかれ、これも大事な役割だ。
なにしろこのボンドルドと書いてポンコツと読む男ときたら、興味を惹かれた原生生物を追いかけていってクソ広い五層で迷子になったり、挙げ句、エロ同人誌でしかお目にかかったことがない触手っぽい原生生物に襲われてスケベなハプニングに陥ってベソをかいたりだとか、まあとにかくしち面倒臭い災難に事欠かないのだ。
しかも自分で対応も解決もできないとくれば、最低ひとりはお目付け役が必要になる。
なに?
ハプニングを引き寄せるエサのにおいとかでも放出しているの?
その仮面のでっぱりにリードでも着けておきたいと考えているのは、おそらくわたしだけではないだろう。

そんな彼はこっそりエアプ卿と呼ばれれているだけあって、原作未読のエアプ野郎なのである。

「知らないなら知らないで結構です。それより片付けや救護は彼らに任せて、卿、わたしたちは先に戻りましょうよ。二次被害はごめんですもの」
「む、適当にごまかそうとしていますね?! ふふん、私の目はごまかせませんよ。私に知らないことがあるはずないでしょう! でもなまえ、お前が正しいかどうか、私が確かめてあげます」

エアプ野郎もとい黎明卿が「教えなさい!」と詰め寄ってくる。
なんでこいつこんな偉そうなんだろうな。
絶対にまたなにかしらやらかすのは明白なので、片付けや救護を「手伝います!」と息巻かれても厄介だ。
そのため意識を別のところへそらせたいなあとは思っていたけれど、わたしの失言のせいでどうやら妙な方向へ興味を持ってしまったらしい。
ああ、面倒臭い。

考えていることを率直に伝えれば、間違いなくへそを曲げるのが分かりきっていたので、わたしは賢明にも黙っていた。
なによりそれはもう、非常に面倒だし、仮に懇切丁寧に説明したところで卿が理解してくれるかも微妙だ。
黙りこくるわたしに痺れを切らしたのか、エアプ卿はぽこぽこ怒って「もう!」と声を荒らげた。
というか成人男性が憤慨している擬音語が「ぽこぽこ」って。
なんだ、許されるとでも思っているのだろうか。

「あー……どこかの白笛らしいですよ。そんな二つ名で呼ばれていたような……。まあ、余所の白笛を気にしたって仕方ありませんけれど。わたしたちの白笛は黎明卿、あなたですもの。あなたより偉大な白笛もいませんし」
「そ、そうでしょう! 私は偉大な白笛ですからね!」

適当に褒めてやると、エアプ卿は腰に手を当てて胸を張るとかいう心底分かりやすいポーズでふんぞり返った。
チョロい。
チョロすぎて心配になってきた。
もしかして仮面の隙間が細すぎるせいで、周囲の惨状が見えていないんだろうか。

「……じゃあ、卿のことですもの。即落ち二コマもご存知ですよね」
「そ、そくおち……?」
「ここは彼らに任せて、卿、わたしに教えてくださいませんか」
「えっ」

声高に「も、もももちろん私は知っていますけどね!」と主張しているエアプ野郎を引きずって退散する。
鬱憤が溜まりに溜まっていたわたしは、なごやかに「そうでしょうとも」と頷いた。

・・・


「ひぎっ、あぁ"ああっ! 〜〜ッやめ、なまえ、なんで、こんなぁ……!」

いやあ、即落ち二コマにもほどがある。
いくらなんでもチョロすぎて頭痛がしてきた。
エアプ卿じゃなくて即落ち二コマ卿とかに改名した方が良くない?
わたしが言うことじゃないけれども。
ああ、いや、エアプ卿じゃなくて黎明卿だったわ。

「あらあら、卿ったら。こんなに汚しては、子どもたちに笑われてしまいますよ」

いくら防水や防塵に優れた装束でも、さすがに人間の精液への対策なんてしていない。
「汚れちゃうといけないから脱いじゃいましょうね」とばんざーいさせて、武器は勿論、装束もすっかり脱がせた。
もちろん大人しく言うことを聞くような方ではないけれど、そこはまあエアプ卿のことなので、口八丁でどうとでも丸め込めた。
いまの彼が身に着けているのは、見慣れた仮面、ゆるんだクラバットと白笛、ブーツのみとかいう、とんでもなく変態臭い格好だ。
思わず失笑が漏れる。
ていうかズボンの裾は普段、探窟靴へ差し込んでいるんだけれど、どうやってブーツだけ残したんだっけ。
ズボンを脱いで、もう一度ブーツだけ履き直したの?

「ひぐぅうぅッ、う、うぅっ……やめ、やめなさいぃ……」

「やめて」と懇願するのはちっぽけなプライドが許さないらしい。
卿は意地でも命令口調を崩そうとしなかった。
もうとっくに快楽でとろけきっているくせに、ふるえながら「やめなさい」と繰り返す彼は、なけなしの虚勢具合がいつもより一二〇%増しで情けない。
端的に言ってとってもザコっぽい。
押し倒されたばかりの頃は「私を誰だと思ってるんです?!」とかなんとかぎゃんぎゃん騒いでいたけれども、一度射精させられた辺りから随分と大人しくなった。

卿の自室に彼を放り込み、ベッドに押し倒したのは数十分前。
あれよあれよという間に裸にひん剥いて、拘束なんて無粋なことはせず、根気よく快感だけ丁寧に与えてさしあげれば、いまやこのザマ――周囲を精液で汚して、びくびく跳ねるだけになってしまった。
たまに思い出したように暴れるけれど、それも勃起した陰茎をしごいてやれば、途端に大人しくなる。

いまはやさしくほぐしてあげた尻の穴にわたしの指を二本、咥え込んでいた。
たっぷり注いだ潤滑油ローションのおかげで、特に痛みはなさそうだ。
それどころか、わたしが指を動かして、腸内からあふれる腸液と潤滑油が混ざる、ぬぷ、ぐぽ、と耳を覆いたくなるような卑猥な音を高く鳴らしてやると、嬉しそうに「ん、うぅっ……」とハートーマーク付きの喘ぎ声で共鳴する始末。
もしかして酷くされたくてわざと抵抗していらっしゃるのかと勘繰ってみたくもなる。

「うーん……やめろとおっしゃるわりに、ここ、わたしの指を離してくれないんです。困ってしまいます、卿。もしかして本当はやめてほしくないんですか?」

わざとらしかっただろうか。
腸壁をなぞる粘っこい音と共に首を傾げると、卿が仮面の内側で唇を噛んだのが分かった。

「お、あ"おぉぉっ……しょ、そこぉっ、ひゃわるなぁっ……」
「ほら、お分かりになります? ここのすこし膨らんでいるところが前立腺です。射精の瞬間、ぎゅっと硬くなるのでいじりやすいわ。おちんちんと一緒にこすってあげますから、ふふ、いっぱい気持ち良くなって結構ですよ、卿」
「ひ、ひぃぃいんッ、ほ、お"ォっ?!」

これは気持ちいいことなんですよ〜と教え込むように、陰茎を刺激するのと同時に前立腺も一緒にぐにぐに擦ってやる。
はじめはいやいやと暴れていた卿も、だんだん腰をせり上げ、びくっと跳ねた拍子に、呆気なくまた精液をほとばしらせた。
わあ、すごい勢い。
既に二度放ったというのに元気そうでなによりだ。

「あらあら。卿ってば、もうわたしの指じゃ物足りないみたい……。んー……これなんてどうですか?」

傍らから取り出したのは、いくつかのオモチャだった。
擬音語を付けるなら「ボロン」か「ドンッ」か、どちらか悩ましいところだ。
仮面の隙間からよだれとおぼしき粘液を垂らしていた卿は、のろのろと顔を上げたかと思えば、えげつない形状のアレコレを見た途端、悲鳴をあげた。

「なんですそれは?!」
「なにって……ディルドですけど。まあこのサイズのものはなかなかお目にかかりませんよね。それともこっちのアナルパール? 一応オナホールもありますが……あ、ご安心なさってください。どれも未使用なので」
「なにを安心しろと?!」
「ちなみに“基地”で作ったものだから、性能と安全性は保証しますよ。搬出は大変だけど、バカ高いのに海外でも人気なので、大事な収入源のひとつなんですから……そんなに怯えなくても」
「私は怯えてなんかっ……じゃなくて、私に内緒でなにを作ってるんですか?!」

こんなもの作っているなんて初めて聞いたんですけど! と卿が憤慨していらっしゃる。
そういえば報告もなにもしていなかったっけ。
女っ気も男っ気もない「前線基地」に長期間詰めていると、まあ誰しも生き物としての欲求を覚えるものだ。
発端は、同僚のひとりが研究の片手間にオナホールを開発してしまったことによる。
研究の息抜きに別の研究に手を着けるワーカーホリックはここ「前線基地」に大量にいるが、まさかアダルトグッズの開発にいそしむバカがいるとは思わなかった。
元はやわらかい形状の遺物と硬い形状の遺物の、それぞれの性質を残したままの融合とかいう、至って真面目なテーマから出発したらしいけれど、それの応用でクオリティの高い性玩具が生まれるのだから、発明の母とやらはどこに潜んでいるか分かったもんじゃない。
そして冗談でアダルトグッズの数々を市販したら、なんと五層以外でも好評だった。
発端も発端だし、なぜそれを出荷しようと思ったのか、もう経緯もなにもかも「は?」としか思えないけれど、なにが一番イカれているかというと、それら「前線基地」製アダルトグッズが好評を博してしまったという事実である。
正気か。
まあ、それだけ需要があるということだ。
需要がなければ供給もないのは、いつの世も変わらない真理である。
……世の需要、ロクでもないな。
ちなみにいま卿の尻穴から垂れているローションも、同じくメイドインイドフロントである。

そんなことをつらつらと考えている間も、三回も搾られたというのに、卿がまたぎゃんぎゃん騒ぎはじめてうるさかったので、さすがにはじめよりは力をなくしているペニスをぎゅっと握った。
本当なら痛く感じる一歩手前くらいにしてさしあげた方が良いんだろうが、しかしなんと我らがエアプ卿は、とんでもない被虐趣味をお持ちだったらしい。
「い"ひぃッ」と情けない悲鳴をあげたかと思えば、勃起したペニスをますます硬くたぎらせた。

「いやだ、黎明卿ったら……。わたしみたいな女に尻の穴をいじくられて、こんなに勃起していらっしゃるんですか? 憧れの白笛がまさかこんなマゾ男だったなんて……失望してしまいます」

わざとらしく溜め息をつくと、とうとう卿は「うぅっ……ひくっ、ひ、」としゃくりあげはじめた。
どうやら仮面のなかでぼろぼろと涙をこぼしているらしい。
しかしペニスの方は、まるで比例するようにギンギンで萎える気配がちっともないのだから、「本物」なのだろう。
だらだら浅ましくカウパー液を垂らしている亀頭を指で弾くと、もう一度溜め息をついた。

「あぅうぅっ」
「はい、力を抜いて。きもちいいことだけ考えましょうね」

――できますよね、だってわたしたちの憧れの黎明卿ですもの。
括約筋をめくり返して、くぱ、と口を開けている尻穴の縁へ極太ディルドをあてがいながらそう言うと、マジでアホなエアプ卿はぎこちなく「できます」と精一杯虚勢を張った。
できるかどうか二者択一を迫られて、「できない」と答えるのがよっぽど嫌らしい。
まあこの場合、尋ねているのはアナルにディルドを上手く咥え込めるかどうか、なんだけれど。
どうやらそろそろ正常な判断も危ういらしい。
元から正常な判断とやらをお持ちだったのか、はなはだ疑問ではあるが。

「ひぐっ、ひゃ、挿入ひゃいりませ、そんなおっきいのはいりゃな、ぁああ"ァあぁ"あっ!」
「できますってご自分でおっしゃったばかりでしょう。もしかして嘘だったんですの?」
「うっ、うそじゃな、〜〜あ、ぅああ"っ?!」
「ふふ、じょーずじょーず。もう三分の二も挿入はいっちゃいましたね。もしかして経験豊富だったとか?」
「は、ぐぅう"ぅっ……そッ、そん、な、わけっ……!」
「だってほら、こんなに美味しそうに呑み込んでいらっしゃるから。それとも元々素質があったのかしら。こんなに上手におちんちん咥え込めるなら、女の子になっちゃうかもしれませんねぇ」
「ひ、はひ、なまえッ、〜〜ほ、お"ぉおぉッ! らめ、らめれす、そんな、あ"ぁあア"っおく、お"くぅ"ッ……!」
「奥? お好きなんですか?」

長大な遺物……じゃなかった、異物が、ぐぶぐぶと直腸を押し進む。
卿は浅い呼吸を必死に繰り返しながら「奥」と繰り返すものだから、そんな一生懸命なところを見せられては、こちらとしても嬉しくなってしまった。

「お"っほぉお"っ、はひっ、ぐぅぅうぅううッ?!」

ご要望通り、疑似肉棒の先端でごつごつと奥をほじくってやると、卿は潰れた豚のような悲鳴をあげて、電気でも流されたかのように海老反りになった。
釣りあげられたハマシラマだってこんなに騒がしくない。
拡張プラグじみてえげつない嵩を誇る肉塊によって、みっちりと充填されたローションと腸液が、びゅぶりと下品な音と共に押し出される。
様子のおかしな呼吸音から察するに、ヒトの陰茎を模しているとはいえ、規格外のデカさのディルドで腹のなかを埋められて息もままならないらしい。
ついでにご自身のペニスもしごいてさしあげると、悲鳴が一際切羽詰まったものになった。
「どうなさいましたの?」と首を傾げるけれど、卿は汚い善がり声をあげるのに夢中で答えてくださらない。
問いに相手が返答できなかった場合、いつもなら偉そうに「お〜やおや! こんなことにも答えられないんですかぁ?」なんてアホ丸出しで高笑いしているのに。
ご自分で普段おっしゃっているんだもの。
聞かれたことにはちゃんと答えるべきだ。

「卿? いまどんな感じなのか教えてください。なにおっしゃっているのか全然分からないんですけど」
「ぎッ、なまえッらめらめらめあ"ッ、〜〜あぁああ"ア"ぁっ!」

ペニスをしごく手も、ディルドを突き込む手も止めずにやさしく尋ねると、とうとう卿は何度も吐き出したザーメンではなく、ぷしゃ、と潮吹きまで披露してくれた。
弧を描いてびしゃびしゃと吹き出る無色透明の体液は、しごくわたしの手の強さに応じて、勢いが高まったり弱まったりと変化して面白い。
ゴムホースの口をしぼるような感触だ。
強めに握ると、チューブが引きしぼられてびゅーっと勢いよく噴き出るあの感じ。

慎みなんて単語から最も遠いだらしなさでまき散らされた潮で、ご本人ばかりではなくわたしまで濡れてしまった。
盛大に潮吹きする間、弱まるまでずっと、卿はがくがくと腰を揺らしてハートマークに濁点をつけた善がり声をあげ続けていた。

「あ"ー……あ、ふァあ"ぁ……むり、も、ないぃ……」
「あーあ。おもらししちゃいましたねぇ。わたしまで濡れてしまいました。お掃除が大変だわ。卿、あなたが汚したんですから、ご自分できれいにしてくださいますよね」
「うぅ"〜っ……ふ、うぅっ……っ、なまえ、なまえ……も、もう、おしりのあなぁ……いじめないれ、くらひゃ……」
「あら、“お尻の穴”だなんて。可愛らしい表現をなさるんですね。ふふ、卿? もうここはお尻の穴ではありませんよね。おっきいおちんちんを咥え込んで、女の子みたいにびゅーびゅー潮まで吹いちゃうんだもの」
「あ"っ、あぅッ、なか、う、うごかさないれくらひゃ……! うぅ……ひど、ひどいぃ……っ」
「間違えていらっしゃるから訂正してさしあげただけです。ね、卿。ちゃんと“おまんこ”っておっしゃってください。言えます?」

ほら、と促しながら、ぱんぱんに膨らんだ肉冠をぐちぐちとしぼるように握り込む。
執拗に亀頭攻めをしていると、卿の仮面の中央を彩る紫色が、ふっふっと明滅した。
それが朦朧とする彼自身の意識を表しているようで、こちらまでどきどきと胸が高鳴ってしまう。

「ねえ、卿? つよつよおちんぽで突かれまくってきもちよくなっているここは、なんて言うんでした?」
「ほ、お"ぉおおォ"お"っ! もっ、ごちゅごちゅらめぇえぇッ! あ"あァああっ、お"ッ、おまんこれひゅぅうっ……お"まんこっ、おまんこぉ"おぉっ!」

お気に召したらしい最奥を急かすようにどちゅどちゅ突いてさしあげると、卿は女性器を指す卑語をバカのひとつ覚えみたいに叫びながら、がくがくとのたうった。
ああ、嘘をつかれるなんて悲しい。
先程の「もう出ない」との訴えは偽りだったらしく、また見苦しいくらい激しく潮吹きをしている。
周囲は雨雲でも通過したのかと思うほど、ぐっちょぐちょのびっちゃびちゃ。
水浸しの惨状を見て、わたしはここがエアプ卿の私室で良かったなあと溜め息をついた。
だってこんな部屋、今晩絶対に寝たくないもの。
廃棄を免れないだろうマットやシーツのみならず、吸水しきれなかった水分が床に水溜りをつくっている。

「あひ、ひゃめ、ひゃめてくらひゃいぃ……なまえ、おね、おねがいひましゅ……」

なけなしの虚勢も、潮と一緒に流れ落ちてしまったとみえる。
卿は「やめなさい」と命令するのも忘れ、とうとう哀れっぽい声音で「やめてください」と懇願しはじめた。
一度決壊してしまった心は、刺激するたび浅ましくぷしゃッと潮を噴出する鈴口と同じく、際限なくゆるんでしまったらしい。

幼い子どもをあやすみたいによちよちしていると、卿は甘えるようにわたしの手へすり寄ってきた。
まるで子ども返りしてしまったみたい。
かわいい……とは残念ながら思えなかった。
いやだって想像してみてほしい。
探窟に慣れた屈強な成人男性が、涙どころか鼻水もよだれも垂らしながら甘えてくるのを。
普通に鬱陶しい。
しかも身に着けているものといえばフルフェイスのヘルメット、クラバットに笛、ブーツのみとかいう、いや隠すところそこじゃないだろ変態みたいな格好をしているのだ。
いっそ全裸の方がまだマシだ。
精液やら潮やらローションやらで、ぬるぬるのべちゃべちゃだから、すり寄られると濡れた感触が鬱陶しさに拍車をかけている。
わたしは赤ちゃんみたいにすり寄ってくる仮面を「なに甘ったれていらっしゃるんですか」とはたいた。

「あ"うぅうぅ……ひ、くっ、やら、やら、なまえっ……」
「なにがお嫌なんですか? はっきりおっしゃってください。ずっとやだやだするばかりなんだもの。わたしには分かりかねます。どうしたいのか、どうしてほしいのか、卿、教えてください。ね?」
「う、うぅ〜っ……」

折角手を止めてやさしくお願いしているのに。
返ってくるのは惨めったらしい呻き声ばかりだ。
このままうなり続けるおつもりなら、全身を拘束して「前線基地」で作っているオモチャを身をもって体験していただくプランに移行しようかなあ、製造しているのご存知なかったらしいし、云々考えていると、卿はたどたどしく「いじめないでください」と泣きはじめた。
え〜やだかわいい。
てのひらクルクルしちゃう。

「まあ、心外だわ。いじめるだなんて……。だってきもちいいんでしょう? 卿がきもちいいなら、わたしもお役に立てて嬉しいんです」

奉仕しているのはこちらでしょう、と首をひねる。
プライドもなにも捨て去った懇願が一蹴され、エアプ卿はひくっと喉を鳴らした。

「……ら、したいん、れす」
「え? さっきからずっとだらしなくまき散らしていらっしゃるじゃないですか、潮」
「そうではなく!」

力強く否定された。
まだそんな腹から出すようなはっきりした声ができるなんて。
思ったより余力があるな。
ともあれ、べそべそと非常に聞き取りにくい声音で訴えるエアプ卿曰く。

「お、おまんこ、だけじゃ……怖くて……。ま、前でイキたいれす……。ちゃんと射精、させてください……」

どうやら極太ディルドを挿入されている間、「女の子になっちゃいますねぇ」というわたしの一言が、深く胸に突き刺さっていたらしい。
どう考えてもいまここで優先すべき議題ではないのは明らかなのに、涙ながらに「私は男です」と主張する卿があまりにもかわいくて、うっかりぐしゃぐしゃべしょべしょの裸体を抱き締めてしまいそうになった。
どうしよう、本当にかわいい。
絶対にこれ「女の子です、女の子になっちゃいました」って言わせなきゃ気が済まない。

「ふふ、おまんこだけでイっちゃうのが怖いんですか? だからおしっこばっかりじゃなくて、男性みたいにちゃんと射精したい、と……。それが卿のご希望なんですか?」
「……は、はい……」

朝から晩までトラブルを引き起こしては、ぎゃんぎゃん騒がしいエアプ卿を見慣れている身としては、すっかり大人しくなってしまったお姿が物珍しくて仕方がない。
すぐに調子に乗るし、無意味に上から目線だし、いつだって自分の過ちを認めようとしないあの・・エアプ卿が、こんなに素直に他人へ懇願できるなんて。
感動してしまう、どんなひとでも成長ができるのだと。

「かしこまりました。卿がそうおっしゃるなら」
「っ、じゃ、じゃあ、」
「ええ、さわるのはやめておきましょうね。あ、勿論、卿もご自分でさわっちゃだめですよ」
「は?!」

このままにしておくと、自慰でもおっ始めかねない雰囲気だったので、転がっていた彼のベルトで卿の両腕を簡素なベッドフレームに縛り付けた。
マットやシーツが修復不可レベルでびちょびちょなのは、この際目をつぶろう。
水浸しの布の感触が不快だったので、本当は床に転がしてさしあげたいところだったけれど、きっと卿のことだから文句をおっしゃるもの。
当の卿はといえば、ベルトでの拘束がお気に召さなかったのか、腕のみならず全身を揺らしてがちゃがちゃと耳障りな音を立てている。
さすがエアプ卿、じたばたと無様に暴れて、拘束が外れそうにないということを証明してくださるのに余念がない。

「ッ、は、はずしなさい、なまえっ」
「だってこうでもしないと、ご自分でおちんちんしごいちゃいそうでしたから……」
「そ、それのなにが悪いっていうんですか!」
「ふふ、なにごとも挑戦ですよね。わたし、驚いたんです。だって普段の卿なら、素直に“射精させてください”なんてお願いしないでしょう? いつだってひとは成長できるんですね」
「ばかばか! ひとの話を聞きなさい!」
「聞いております、黎明卿。だからこうして微力ながらお手伝いさせていただこうと決心したんです」

よわよわザコまんこでメスイキできるようになりましょうね、と応援すると、黎明卿はまたえぐえぐ泣き出した。
かわいい。
傍らに隠している尿道ブジーとかは、とりあえず尻穴アクメをキメられるようになるまで取っておこうかな。


(2023.02.10)
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