寒気のする美辞麗句を並び立てた賛辞や、わずらわしいだけの面倒な人間関係からようやく解放され、辟易しながら宛がわれた部屋へと戻ってくると、彼女は満面の笑みで彼を迎えた。

事の発端は、遠方での大会にディエゴがと特別枠として招待され、彼に誘われるままなまえが同行することになったという経緯による。
同行と言っても公なものではなく、先程まで行われていた大会後お決まりの祝賀会でも、彼女はひとり用意された部屋に残されていた。
酒宴の間、放っておかれて不機嫌になっていやしないかとディエゴは眉を顰めていたが、当の本人は、ようやく部屋へ戻ってきた彼に、いつものように「お疲れさま」と微笑んだ。
この頃あまり外出することもなかったところに、おまけとはいえ遠出させてもらえる機会になまえは純粋に喜んでいるようだった。
退屈ではなかったかと問えば、少女は面映ゆそうにうっすら頬を紅潮させつつ首を振って否定した。

「わたしね、こんな大きなホテルの部屋、初めてだから楽しくって。ディエゴくん、連れてきてくれてありがとう」

用意された豪奢な部屋を満喫していたらしいなまえは、ひとりではしゃいじゃってて恥ずかしいんだけど、とはにかんだ。
愛らしい笑顔でそんなことを言われれば、同居人たちの反対を押し切って連れてきた甲斐もあるというものだ。
なまえを独占され、大いに不満げだった同居人たちがふと脳裡をよぎる。
明日帰宅した時のことを考えると少々頭が痛いが、目の前で楽しげに笑うなまえを前に、そんな些事などすぐに切り捨てた。
礼ならきちんと頂くつもりだと、細腰を引き寄せて腕のなかに閉じ込める。
淡く色付く桃色の唇へ戯れるように幾度も口付けていれば、目の端を潤ませてなまえは微笑んだ。

・・・


――どれほど、時間が経過していたか。
既にまともな思考など手放してこの行為に溺れていた彼女には皆目見当も付かなかったが、そもそもそんなことを考える余裕などなまえには微塵もなく。
広いベッドに腰掛けた彼の前に彼女は跪いていた。
陰部に顔をうずめ、いやらしく練達した舌使いで口淫を続ける。
長い時間をかけて躾けられた彼女の口腔は、硬く勃起したソレを見るだけで条件反射のように唾液が分泌された。
意思とは関係なく独りでに顎がだるくなり、くぱ、と薄く口を開けてしまう。

なまえは既に一度達していたが、もし仮に未だ絶頂に至っていなかったとしても、同じくらいに昂ぶっていただろうことは想像に難くなかった。
それほど少女はその行為に耽溺していた。

「ぅあっ、はっ、ぅ、なまえっ、」
「んんぅ、ン、ふ……ディエゴ、くんっ、は、はぁっ、ひ、きもち、いい……?」
「っぅ、ああ、」

愛らしい顔を、男の股間にうずめて体液でべとべとに汚しながら。
跪いて陰部にしゃぶり付きつつ、そうして甘くとろけた瞳で上目遣いにそう尋ねられたならば。
果たして昂ぶらずにいられる男など存在するだろうか。
危うく達しかねないほど追い詰められていたディエゴは、なまえの夜色の髪を撫でつつ、鋭い牙の見え隠れする口で荒く呼吸を重ねた。
なまえはといえば、ディエゴの興奮で上擦った声で素直に問いを肯定され、そのとろけた牝の顔を喜色に染めていた。
――もっと、もっと感じてほしい、もっとわたしで気持ち良くなってほしい。
淫楽にとろけた彼女の頭には、それしか浮かんでいなかった。

甘えるようにすり寄って、再び、大きくそそり立つ肉竿を懸命に口に含む。
じゅぷじゅぷと浅ましい音を立てながら頭を振り立てた。
先走りと唾液によって、ぬらぬらと下品なまでに濡れ光る肉棒が、少女の無垢な桃色の唇から出たり入ったりを繰り返す。
この硬い屹立で、いつも蜜口を穿たれ突き上げられているのだと思うと、愛撫しながらなまえは堪らない気持ちになってしまう。
無意識に白い太腿を、秘かに擦り合わせていた。
潤んだ視界で上目に彼を見上げれば、いつもはプライド高く不遜に光り輝くシーグリーンの瞳が、甘く恍惚に潤んでいるのが見える。
それを見て、なまえは胸を占める多幸感に溺れそうになった。
先程から勝手にきゅうきゅうと収斂している隘路から、より一層、はしたなく蜜液がこぼれ出るのを止められない。
その抗いがたい疼きからなんとか目を逸らそうと、なまえはますます淫らな奉仕に没頭した。

「は、ぁっ、なまえっ、くぁ、あ」
「んむっ、ディエゴくんっ、ン、ちょうらい、っ、なまえのお口に、いっぱい出してっ」

悩ましく瞳を陶酔に潤ませながら、なまえが愛撫の合間に甘ったるくねだった。
凶器のように大きく膨れ上がった肉塊が、一段と硬さを増す。
思考するまでもなく感覚的に覚え込まされた、射精の兆候。
それを感じ、なまえはより深く咥え込んだ。
同時に舌の付け根で鈴口を埋めるようにくすぐれば、とうとうびゅくっと口内へ彼女が待ち望んでいた白濁が放たれた。

「くっぅ、んむぅ……んんっ……!」

どぷっと音が聞こえそうなほど、粘性を帯びた大量の精液。
口腔へしたたかに熱い白濁をぶちまけられ、なまえは至福の表情でそれを受け留めた。
味覚、触覚、嗅覚、聴覚を、濃密な精液漬けにされる。

「……っ、はー……なまえ、まだ飲むなよ」
「ン、んぅー……ぅっ、ふ、」

伝い落ちる汗を拭いながら、ディエゴが未だ整わない荒い呼吸のままそう短く告げると、なまえは瞳いっぱいに涙を溜め、健気なまでに懸命に頷いた。
低くかすれた蠱惑的な声で命じられ、逆らうことなど出来ない。
そもそもきちんと躾けられた彼女の脳内では、こういった時に言い付けに反抗するということ自体、思い浮かびすらもしなかったが。

なまえは口からこぼしてしまうことを恐れてか、ふるえる両手で口元を押さえた。
それにより自然と寄せられることになった柔乳が、谷間のボリュームを増す。
病み付きになるようなやわらかさを持った双球は、上気してしっとりと薄く汗を浮かべている。
彼女の寄せられた両腕の間で、淫らに熟れたその乳房がたぷんと量感たっぷりに揺れた。

ひどく嗜虐心の掻き立てられる淫らな痴態に、ディエゴは無意識にこくりと喉を鳴らしていた。
欲望を吐き出したばかりの肉茎が、再び硬さを取り戻す。

とても肌触りの良い白いシーツに夜色の髪を扇情的に散らし、なまえはふるえながら懸命に彼を見上げた。

「ン、んん……!」

なまえのくぐもった呻き声がこぼれた。
言葉を発せない代わりに、涙を湛えて濡れ光る瞳が、急かすように潤み細められる。
その視線ひとつでゾクゾクするほど煽られ、ディエゴは焼き切れそうな理性で浅く歎息した。
眼差したったひとつで雄を煽るすべを持つ魔性は、発情した牝の香りを全身に漂わせ、彼を誘い甘く綻んでいる。
細い腰がゆらゆらと悩ましげに揺らめいていた。
煽られるままにディエゴが切っ先を、だらしなく蜜をこぼし続ける膣口へ宛がうと、なまえの虹彩が期待と切望で淡く潤んだ。

その濡れた目を見てディエゴは僅かに逡巡し、あることを思い付く。
ニィ、と口角を歪めると、――両膝裏を抱え上げて間髪入れず、焦らすことなく一気に挿入した。

「〜〜ッ、ぅ、っ、……んく、ぅ、ひ、ぁああっ……!」

既にとろとろにこなれていた秘宮は、ずぷっと無理やり埋め込まれた肉棒を歓喜して飲み込んだ。
彼女が焦燥感に駆られるほど、敢えて挿入するのを焦らそうかとも考えた。
しかしディエゴは暴力的なまでに無理に肉襞を捲り上げた。
荒々しく一息に最奥を突き上げる。
絶えず蜜液を溢れさせる媚肉はずぶ濡れで、とうにほぐれている。
とはいえ無理やり胎内を押し拡げられる衝撃と圧迫感は、少女の肢体には耐えがたいほど凄まじい。
不意打ちのような急襲に、少女は白い背を弓なりに反らしてがくがくと身悶えた。

あまりに強すぎる衝撃。
仕方のないことだった。
なまえの堪えようとする意思とは裏腹に――ディエゴの思い付きの通りに、彼女はごくっごくっと喉を大きく鳴らし、熱い白濁液を嚥下してしまっていた。
嗅覚や味覚を塗り潰すかのように、噎せ返るほど濃厚な精液が咽喉をも埋め尽くす。
食道に絡みつきながら胃へと流れ落ちていく、焼けるように熱い精液の感触。
その感覚にすら深く鈍い快感を覚え、なまえは感極まって微弱な電流を流されているかのようにぴく、ぴく、と背筋をふるわせていた。
大きく見開いた目からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
朦朧とした意識と視界のなか、光を集めたように淡く輝く彼のベビーブロンドの髪が彼女の網膜に焼き付いた。

「は、ッ、なまえ、まだ飲むなって言っただろ、」
「ぅ、はぁっ、んぅっああぁっ……! ひ、ぁ、ごめ、ごめんなさ、い、っ、あ、ああぁっ!」

すぐに激しい抽送が始まる。
言いつけを破ってしまったことを責めるように。
容赦なく突き上げられる律動の合間、ぬぢゅ、ぐぷ、と生々しく粘性を孕んで響く挿入音と共に、なまえは途切れ途切れ嗚咽まじりの謝罪を繰り返した。
彼女の夜色の瞳は、命令を守れなかった自責の念と、――なまえ自身ははっきりとは自覚していないかもしれないが、口腔を満たしていたソレをもっと味わいたかったというのに、早々に飲み干してしまった後悔と、浅ましくも勿体なく思う気持ちとで、溶け流れてしまいそうなほどしとどに涙をあふれさせていた。

そうしてなまえが白濁を飲み下してしまった時、雄を咥え込んだ隘路は歓喜するように脈打ち、激しく収斂していた。
蜜孔に挿入されて達したのか、それとも、嚥下してはならないという指示を破る背徳感や、――あるいは、待ち望んでいた精液を飲み下すという行為そのものの喜悦によって、登りつめてしまったのか。
どちらだったのか分からない。
寧ろ躾けられた淫らな肢体は、それら全ての要因によって、深すぎる法悦へと至っていたのかもしれない。

「あ、あぁっ、ごめ、なさ、ふぁぅっ! でぃ、でぃえごくんっ、――っあ、ひぅぅ、お、おくっ、奥ぅっ、そんなにつよいの、だめぇっ……!」
「オレの言うこと、ふ、守れなかったお前が悪いんだろ、っ」
「ひぅ……! んぅあっ、ア、ひ、ご、ごめんなさいぃっ」

叱責されるたびに、謝罪するたびに。
なまえは罰せられる被虐の悦びにすら、浅ましく興奮していた。
膣壁は狂おしく収斂し、ナカを容赦なく撹拌する肉棒を、きゅうきゅうと甘美に蠢き締め付ける。
嬌声と謝罪を絶えず迸らせる口内では、上の歯と下の歯で粘ついた白い糸がねとーっと線を描き、唾液と混じりあって僅かに泡立っていた。
その様子は恐ろしく猥雑で、淫らで、浅ましいこと極まりない。

その光景に煽られたディエゴは彼女の細腰を掴むと、抽送を一層激しくした。
いつものあの部屋ではない別の場所でこの少女を抱くのは、ひどく彼を昂ぶらせる。
それは彼女も同じことらしく、熱く大きな肉棒によって最奥を遠慮なくごつごつと突かれてあっけなく、なまえは悲鳴のような嬌声を上げて絶頂に達した。
びくびくっと引き攣れるように反った白い背と、まろやかに熟れた乳房が上下に弾み、ますます雄を昂ぶらせる。
とろけた媚粘膜が淫猥に蠢く。
強制的に与えられる暴力的な快楽に、少女の顔が歪んだ。
達したばかりだというのに容赦なく続く律動のせいで、思考が飛んでしまいそうになる。
なまえはぼろぼろと涙をこぼして、欲に塗れた甘ったるい嬌声を上げることしか出来ない。
ディエゴは彼女のあふれる涙を薄い舌で舐め取りながら、鋭い牙の見え隠れする口の端を上機嫌に笑みの形に歪めた。

「く、はっ、そう泣くな、また口にも、出してやるから、」
「っ、うんっ! ちょうらいっ、なまえ、ぁン、また、おくちにもっ欲しいのぉっ」

荒い吐息混じりに告げられたディエゴの言葉に、なまえは至極嬉しそうに微笑んだ。
腰を掴む彼の両腕に、美しく手入れされた自らの手を絡める。
縋るように甘く爪を立てた。

「ひぃあ、あ、ディエゴくんっ、ん、あぁっ、でぃえご、くんっ……!」
「っ、ふ、なまえ、ああ、ほら、こぼれてるぞ、ッ」
「ああぅ……ぅん、ん、ひぁ、あぁああぁっ! っ、んんぅ、」

なまえはゆるゆるとだらしなく開いた淡い桃色の唇の端から、いつの間にか精液混じりの白い唾液を垂らしていた。
激しく揺さぶられるなか、それを指摘される。
良いようにされるがままだった少女は恍惚の笑みを浮かべると、口の端から僅かにこぼれた白濁を丸い指先で拭った。
そしてそのまま自らの指を咥える。
そうして自分の指を、ちゅぷり、と淫蕩に舐めしゃぶりながら、なまえは潤んだ瞳でゆっくりと彼を見上げた。
細い首筋を、つうと一筋、汗が伝い落ちた。

ナカをぎちぎちに埋め尽くしている猛った怒張が、びくりと脈打つ。
それにも淫らな吐息を漏らして律儀に反応を返し、彼女はとろりと笑みを深めた。
荒い息のなか、ディエゴは余裕なく忌々しげにひとつ舌打ちし、彼女の耳の下辺りに顔をうずめて汗の滲んだその首筋へと噛み付いた。

――夜ははじまったばかり、時間はたっぷりとある。
明日、帰宅するまでは。
それまでは、このなまえは彼だけのものだ。

白い泥濘、熟れる瞳の熱
(2015.05.01)
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