「なかなか似合うな」
「うう……そんな楽しそうな顔しないでくださいよ……」

なまえが小さくばか、と呟くと、カーズは心底楽しいと言わんばかりに笑った。
小さな体を抱き上げて膝の上に座らせ、愉快げに己れの「耳」を触る彼に、なまえは深々と溜め息を吐いた。

「……なんでうさ耳とかマニアックな……犯人は見付け次第ぶん殴ってやる……」

なまえの本来耳があったところには、うさぎの耳、ロップイヤーと呼ばれる垂れ耳が生えていた。
色は彼女の髪色と揃いの夜色、皮膚の薄いところはうっすらと細い血管が透けて見えている。
――いつものように昼寝から起きると、人間の耳の代わりにうさぎの耳が生えていた。
そんな事態に襲われれば、誰だって驚くだろう。
なんでこんなことになったんだ、とむくれるなまえとは正反対に、彼女を腿の上に抱き上げたカーズは上機嫌にその垂れた耳を触る。
指の腹で根元をこすれば、垂れた耳がぴくぴくと動いた。

「っ、カーズさん、あんまり触らないでください」

上体を反らし、敏感な耳を庇うように両手で握りながら、む、と睨んでくるなまえの小動物のような愛らしさに、カーズの胸奥に庇護欲と嗜虐心が湧き上がる。

「そうは言うが、お前が突然そんな愛らしい姿になっていたら構いたくなるのも当然だろう」
「ぐ……ご機嫌取りにそんなこと言ったってダメなんですからね……」

憎らしげにそうは言うものの、柔らかな毛に覆われた耳は嬉しそうにふよふよと揺れている。
髪を梳いて揃いの色の耳を優しく撫でれば、気持ち良さげに目が細められた。
こんなことになってしまった現状に対して腹は立っているものの、撫でられること自体は心地良いらしい。

丸い目を細めて大人しくされるがままになっていたなまえだったが、……やがて時間が経つにつれ、だんだんと俯いてしまった。
深く俯くせいで髪が顔にかかり、その表情を伺うことが出来ない。
彼の脚をまたぐようにして座っていた体勢のまま、いつの間にか何かに耐えるようにきゅっと手を握っていた。

「どうした、なまえ」
「……っ、い、いえ、なんでも、ないです……」

そうは言うものの、逃げるようにじりじりと後退しようとする彼女にカーズは首を傾げる。

「なまえ、」
「っふ、んぁっ」

有無を言わさず腰を引き寄せ、顎に手を添えて顔を上げさせる。
抱き寄せられたなまえはその際、びくっとふるえ、ほんの小さくだが甘ったるい声を漏らした。
ごく小さな声とはいえ、それを彼が聞き逃すはずもなく。
強制的に上げさせた顔は赤く上気し、合わせた瞳には涙の玉が浮かび、今にもこぼれ落ちそうである。
涙で潤んだ虹彩は落ち着きなくうろうろと視線をさ迷わせていて、自分の身体の異常に戸惑っていることは明らかだった。
体は熱く火照っており、心音も平常より遥かに速い。
薄く開いた唇からはひっきりなしに荒い息を吐き出していた。
その様子はまるで、

「はっ、はあっ、カーズさ、わたし、っ、変なんです……! からだ、おかしくてっ」

まるで、発情したうさぎのような。
なまえはタガが外れたように、はっ、はっ、と浅く荒い息を繰り返し、ほんの先程まで距離を取ろうとしていたのが嘘のように、自ら逞しい身体に擦り寄ってきた。
ぎゅうっと強く抱き着く。
それだけでは飽き足らず、体を密着させたまま体の起伏を確かめるように、ずるずると這うように上がっていった。
彼の屈強な胸板は腕を回しても手が届かない程に厚みがあるが、なまえは懸命にその身体に縋りつく。
とうとう膝立ちになり、彼の太い首に腕をまわし、長く艶やかな深紫色の髪に指を絡めた。

か細い肢体からはオスを煽り立てるような芳香が漂い、胸の膨らみを押し付けるようにぴとっと熱い身体を重ね合わせ、しがみ付いて離れようとしない。

なまえはカーズの逞しい背中や肩に爪を立て、まるで攻め立てるように耳や首筋にぐいぐいと鼻先を押し付けた。
果ては甘えるようにぺろぺろと舌で首筋を這い、小さな唇や歯で食み、噛み付いてきた。
肩口に垂れたうさぎの耳が当たり、それにすら喜悦を覚える。

「はっ、あ、カーズさん、カーズさんっ……! はっ、はあっ」

少女は総身を襲う欲望にその身をふるわせながら、小さな唇で首筋を愛撫する。
なまえは自分を襲った劣情に大きな戸惑いや焦りを覚えていたものの、すぐにその欲求に飲み込まれてしまっていた。

なまえは自分を制御することが出来ず、本能のまま首元に強く歯を立てた。
普通の人間ならば鋭い痛みに顔を歪めるだろうほど力が入っていたが、彼の頑強な体には傷を付けるには至らず、カーズは寧ろその刺激すらも愛らしくて堪らないとばかりに口角を上げる。
ちゅ、ちゅ、と、可愛らしくも性急な口付けを繰り返すなまえをしばらくそうして好きなようにさせていたが、唐突に、彼は縋りついてくる細い肢体を無慈悲に引き剥がした。

「ひぅ、あ、カーズさん、なんで……?」

自らを苛む本能と衝動に身悶えながら、黒い垂れた耳がぴくぴくと頼りなくふるえる。
蜜の滴るような恍惚に溺れるなまえの顔は、普段の楚々とした爛漫な姿からは到底想像出来ないほど、浅ましく発情したメスのもの。
少女のあどけない顔に、愉悦に溺れた淫魔のような表情を浮かべて。
今も離れた身体が恋しいのか、頬に添えられた大きな手に自分の手を重ね、すりすりと頬を寄せて熱く湿った息を吐きながら切なげに瞳を潤ませている。
カーズはなまえのどうして、との問いには答えず、ふるえる耳に、つ、と指をすべらせた。

「ひぃんっ、ぁっ、ン、ん……!」

元から耳も感じやすかったが、うさぎの耳へと変貌と遂げたソレは、いつも通り、いや更に感度の増したように思われる。
敏感な耳を撫で上げられ、なまえは小さな手をきゅっと握り締めて目を閉じた。
自らの唾液でてらてらと光る唇を噛み締める。
ぴくぴくと揺れる、柔らかな毛に覆われた耳をいじりながら、カーズはその歯がやわらかな唇を傷付けてしまう前にと、噛み締めていた唇を開かせ己れのそれを重ねた。
くちゅ、ぐちゅ、と響く水音も常ならば恥ずかしがるというのに、思考を完全に本能が支配しているのか、なまえはそんなそぶりは見せず寧ろ懸命に舌を伸ばして夢中で絡めてくる。
教え込んだ通りに動く淫らな舌に、カーズは腹底から突き上げるような情欲が頭をもたげるのを感じた。

「はぅ、はっ、んっ、んむっ……は、ぅん、……っ、やだ、もっとぉ、」

離そうとすれば、咎めるように薄く開いた桃色の唇が懸命に追い縋ってくる。
カーズは要望通りに口腔を舐め回し、それに応える舌を吸い、好きなようにさせてやる。
オスを昂ぶらせる香りを振り撒きながら夢中でしがみ付いてくるなまえを抱き締め、服のなかに手を入れて背筋を撫で上げると、肢体はびくびくっと大仰なまでに跳ねた。

「ン、は、うさぎだけによく跳ねるな」
「っ、んぅ、は、カーズさん、なまえに触って、お願いぃ、」

急な発情に戸惑いふるえつつ、熱に浮かされたようにお願いと呟く桃色に潤む唇。
あやすようにまた重ねてやりながら、既にぷっくりと膨らんでいる乳頭をその大きな手で摘んだ。

「あ、ああっ! は、あっ、あうぅ、」

まるで長い時間をかけていたぶったかのように、固く尖って存在を主張している乳首を捻られる。
しこり立ったそこを中心に執拗に揉み潰され、なまえは垂れた耳をぱたぱたと振って悦楽に身悶えた。
爪弾くように乳頭を突かれ、たわわに実った乳房がふるふるっと揺れる。
その甘い愉悦になまえが夢中になっていると、カーズのもう片方の手が肩から脇腹をぞろりと通り、腰にまで到達した。
そこでなまえははっとして体を強張らせ、その手を押さえようとしたが既に遅く、

「ひゃあぁぁっ! それ、あっ、や、だめっ……やぁっ」
「ほう、尾まであったとは」

耳と揃いの黒いほわほわした小ぶりの尾が、尾てい骨辺りにきちんと生えていた。
興味をそそられ、根元をくるくると指先でなぞりながら時折それをやわやわと握る。

「あっ、あっ、やぁっ……! それっ触っちゃだめ、だめなのぉっ」
「随分と好さそうだが、それほどに乱れるとはうさぎの身体も捨てたものではないな」

長い深紫色の髪を揺らして喉奥で低く笑いながら、カーズはふるえる耳に舌を這わせながら尾を握る。
やわらかな耳と同じく、尾もぴくぴくと動くらしい。
やめてと懇願するなまえの抵抗を、強く抱きすくめることによって封じる。
尾に触れるたびにびくびくと跳ねる肢体が面白く、何度もそればかりもてあそんでいれば、――突然なまえがぼろぼろと涙をこぼしはじめた。
白藍の雫は幾筋もあとを残しながら滴り落ちていく。
上手く自制出来ないのか、なまえはしゃくり上げるようにして細い肩をふるわせた。

「ひっ、ひくっ、ぅ、カーズさん、も、やだぁ……」

頭がどうにかなってしまいそうなほどの吐き出し口のない欲が全身を回る。
淫靡な刺激を与えられているというのに、それだけではどうしても達することが出来ない。
毒のように回る凶暴な渇望がか細い肢体のなかで膨れ上がり、もどかしいそれに堪えきれずなまえは幼い子供のように泣きじゃくってしまった。
いたいけな目元は、羞恥と欲望で真っ赤に染まっている。

「悪かった、なまえ、そう泣くな」

ぼろぼろとこぼれる雫を拭いながら、カーズはあやすように赤く色付く目尻に唇を落とす。
縋りついてくるなまえは彼の肩に爪を立てながら、責めるように美しく形の整った鎖骨にがぶりと噛み付いた。
一度も触れられていなかった秘部は既にぐちゃぐちゃにぬかるみ、早く早くとナカを埋めてくれる雄を求め、くぱ、とはしたなく口を開いている。
カーズが芸術品のように美しい指でそこをなぞると、膣孔はますますだらしなく粘液を垂らした。
肉厚な花弁を暴かれ、なまえは一際甲高い嬌声を上げて垂れた耳を振りたくって身悶える。
発情しぐずぐずにとろけた肢体を持て余し、なまえは唾液でぬらぬらと光る唇をもどかしげに開いた。

「は、あっ、も、挿れて、」
「だが慣らせねば痛い思いをするのはお前だろう」
「あっ、はっ、は、いいの、いいからぁっ……! なまえ、はやく、きもちよくなりたいの、カーズさんっ、ナカに欲しいのぉっ」

垂れたうさぎの耳を頼りなげにふるわせながら、愛しい少女に涙ながらにそう請われて踏み止まれる男がいるだろうか。
合理的かつ理性的な性格だと自分では思っていたが、思考を放棄して目の前の少女を喰らい尽くしたいと自制出来ぬほどの衝動に襲われる。
カーズはまるで自分ではないようだと覚えたことのない感覚に愉悦を抱きつつ、淫蕩に手を伸ばしねだるなまえの花唇に、既に熱く滾っていた怒張を宛がった。

しとどに蜜を溢れさせているとはいえ、常ならば指で丹念にほぐさなければ受け入れるのに痛みを伴うほど、彼のソレは太く大きい。
繋がるはずもないほど小さな膣孔に熱く猛った剛直を突き立てると、雄の精をねだり潤むなまえの瞳からまた雫がこぼれ落ちた。

かくしてうさぎは食べられた
(2014.12.24)
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