(※「砂糖の花」を踏まえてのお話です。先にそちらをご覧になってからお読みください)




「おやすみなさい、吉良さん」
「おやすみ、なまえ」

既に習慣となっている、いつもの就寝前のハンドケアを終える。
吉良はなまえの手にこれまた習慣になっている頬擦りをすると、さっさと寝入ってしまった。

そういえば以前、彼が「あいつらに夜は静かにするよう口うるさく言っていたけどね、私が先に騒音のなかでも眠れるようになってしまう方が早かったよ」と忌々しげにこぼしていたのを思い出し、なまえは小さく苦笑した。
少々几帳面で神経質な傾向が強いように感じていたが、今や彼はテレビが付いていようがゲームをしていようが、喧騒のなか構うことなく熟睡できる体質になってしまったらしい。

すぐにすやすやと寝入ってしまった吉良の髪を、お疲れさまですという気持ち込めて労わるように撫で、なまえはさて、と溜め息をついた。

「ディアボロさん、わたしももう寝たいからお布団を占領するのやめてもらえませんかぁ」

なまえは腰に手を当て、自らの布団を占拠するディアボロの横に立つ。
む、と頬を膨らませて見下ろすものの、しかし彼に悪びれた様子は全くない。
それどころかディアボロはさっさとなまえを腕の中に抱き込んでしまった。
ごろんと共に横になり、彼女の夜色の髪と彼のブーゲンビリア色の明るい髪が混ざり合うようにして布団に広がる。
その余りに手慣れた自然な動作に、なまえはやれやれと溜め息をこぼすしかない。
よく手を出してきて安眠を邪魔する同居人のカーズやDIOが外出して不在である今夜、ゆっくりと眠れると思っていた目算が外れそうなのを回避するにはどうすれば良いか。
ぐるぐると考え込んでいるなまえを余所に、ディアボロは子守歌のように軽く唇を触れ合わせ、大きな手で背筋を撫で上げた。
ぞくりと四肢を襲った疼きに蓋をして、なまえは今日はもう眠るんですと睨みつけた。

「そんなに可愛い顔をするなよ」
「女の子に可愛いって言えば、何しても良いと思ってません?」
「まさか」

ちゅ、ちゅ、と目元や耳元に小さく口付けを繰り返しながら、気付けば首筋にも赤い痕が付けられている。
その唇は穏やかなものの、抱きすくめる腕の力は全く優しくない。

風呂から上がったディエゴはそんな二人を見て、深々と溜め息を吐いた。

「……何やってるんだお前ら」
「お願いディエゴくーん、助けて」
「という訳でなまえはオレをご所望らしい、オレと代わるんだなディアボロ」
「ハッ、断る」
「いやどっちもやめてくださいよ……って、ちょっと待っ、ディアボロさ、あ、んんっ」

悪戯するように秘部に伸ばされた手に、意思とは関係なく甘やかな声が漏れ出た。
なまえは顔をさっと青くして、これはまずいと声を上げかけた口を両手で覆う。
しかし時既に遅し。
淫靡に微笑む二人から代わる代わる与えられる唇に、なまえはどこから選択を誤っていたのかと予定調和のように肩を落とした。




「っ、は、はあっ、や、やだぁっ……!」

剥き出しにされた秘裂にすうと外気が触れる感覚がして、なまえはふるりと肌を粟立たせた。
長い間指でなぞられ、まさぐられ、掻き乱され、抉られた秘所は、既にぐずぐずに蜜を垂らしている。
大きく脚を開かされ、花唇をディエゴの眼前にはしたなく晒したなまえは、湧き上がる羞恥心を耐えることが出来ず、顔を覆っていた手指を無意識に噛んだ。
しかしそんな彼女に構うことなくしとどに愛液をこぼす蜜口を、彼の薄い舌がべろりと舐め上げる。

「――ひうぅぅんっ……! はあっはっ、やっ、ああっ、それ、やあぁっ!」

強すぎる喜悦に高い嬌声を上げ、なまえが総身をばたつかせた。
顔を上げたディエゴの唇は、彼女の淫らな体液でぬらりと光っており、透明なそれが細く糸を引く。
それを舌でぺろりと拭うと、ディエゴはなまえの瞳をみつめ、嫣然と微笑んだ。
なまえはその企むような笑みを見て、何かが背筋をぞわぞわっと駆け上がるのを感じた。
幾度となく覚え込まされた身体は知っている。
その笑みは、大抵嫌がる自分を快楽漬けにして、自我すら手放す程にしつこく嬲るときのものだ。
なまえは、やめてください近くで吉良さんも寝ているんです、と首を振って後ずさるものの逃げられる訳もなく。

「……や、ディエゴくん、やだ、」
「おいディアボロ、ちゃんとなまえの口、塞いでおけよ」

非常に嫌な予感がする。
なまえは身をすくませて怯えるが、そんな彼女を見てますますディエゴは愉快げに笑みを深めた。

「あの吸血鬼に似てお前、わりとサディストだよな」
「どの口が言うんだ、悪魔め」

そんな軽口を叩きながら、ディエゴはあまり力の入らなくなっているなまえの膝裏をぐいと抱え上げ、脚を大きく開かせた。
はしたなく晒された秘裂に舌を這わせる。
あまりにも恥ずかしすぎる姿勢と直接的な刺激。
なまえは必死に抵抗するものの、存在を主張するようにぷっくりと膨らんでいた秘豆をも尖った舌で擽られ、電流が走ったようにびくんと背を反らせた。
先程までとは比べものにならないくらいの強すぎる喜悦に、なまえは悲鳴のような声を上げようとする。

「あぅ、ひっ、んあ、あ、――っ!」

しかしその嬌声も、ディアボロが深く重ねた唇によって封じられてしまった。
宥めるように優しく舌を絡められ、脳髄がじんわり痺れるような深い心地良さになまえは溺れることしか出来ない。
懸命に呼吸を続けながらその口付けに応えようとしたところ、そちらに意識を奪われる暇もなく、ディエゴの薄い舌が熱くほぐれた花唇をねぶり、甘噛みし、少女は複数の性感帯を同時に攻められ、びくびくと腰をわななかせた。
しかしその身悶えもディエゴのしなやかな腕にしっかりと脚を押さえられているせいで、簡単に無意味なものとなってしまう。

可憐な蜜口をじゅるじゅると下品なまでの水音を立てて舐められ、吸われ、なまえは過ぎた快楽で夜色の髪を振り乱しながらじわりと涙を浮かべた。
気持ちいい。
苦しい。
爪先に靴がかろうじて引っ掛かる程度にしか残っていなかった理性が、崩れ落ちてしまう。
いつの間にだろうか、気付けば広げるよう押さえ付けられていた両脚は、浅ましい程になまえ自ら大きく開いてしまっていた。

びくびくっとなまえの全身にふるえが走る。
白い爪先は宙を掻き、ぱちぱちと目の前で火花が散るような錯覚が見えた。

「んっ、んく、っ! ひぅンっ、ぁ……あ、や、やら……なまえ、いっちゃ、いっちゃうぅっ! はあっ、ああぁっ」

達してしまう、そうなまえが口走った途端、ディエゴはしとどに蜜を垂らす隘路の少し上、ぷっくりと膨らんだ秘芽を甘く噛んできた。
包皮から剥き出しにさせられた突起を優しく甘噛みされ、一際大きくふるえてなまえは全身を強張らせた。
頼りなく揺れる爪先までピンと伸ばし、激しすぎる愉悦に襲われる。
下肢がなまえ自身の意思とは関係なく跳ね、全身を駆け抜ける喜悦に甲高い嬌声を上げそうになる。
しかしそれはディアボロに顎を掬われ、深く重ねられた唇によってくぐもったものとなってしまった。
上手く呼吸すら許されぬなまえは、がくがくとそのか細い身を痙攣させ――、

「――ひあああぅ……ぅく、あ、はあっ、はあっ」

跳ね上げられた絶頂で、なまえは意味を成さない喃語を断続的に吐き出した。
余韻のなか大きく波打つ肢体は、目が覚めるように白い。
噴き出た汗がなまめかしく淫靡に光る。
吸い過ぎて腫れぼったくなってしまったなまえの赤い唇をようやく離し、ディアボロはその淫猥な媚態に目を細めた。
はーっ、はーっと荒い息を必死に繰り返しつつ呼吸を整えようとしている少女の唇に、もう一度軽やかに口付ける。

「なまえ、気持ち良さそうなところ悪いが、」
「は、あ、んあぁ、ディアボロさ、っ、んむっ……!」

既に充分なほど屹立した剛直を横を向いた顔に寄せられ、咥えさせられる。
無理に塞がれた小さな口腔ははじめこそ嫌々と抵抗をみせていたものの、促すように切っ先で喉奥をゆるく突かれれば、いつしか慣れ親しんだ肉棒を彼好みの奉仕に没頭するようになっていた。
はじめは形を確かめるように、ゆるく、やわらかに。
舌を裏筋にねっとりと這わせ、次第に口を窄めて、溢れる唾液を絡ませじゅっと吸い上げる。
口の端からは飲み込みきれなかった唾液がだらしなく垂れ、発情した動物の牝めいた表情を一層際立たせていた。

「はっ、なまえ、上手くなったな」

頭を撫でて誉められると、なまえは嬉しそうにとろんと目を甘ったるく潤ませた。
牝の顔いっぱいに喜色を浮かべ、ますます淫らな奉仕に夢中になる。

「おいおいお二人さん、オレのこと忘れてないか?」
「っ、は、お前が後から来たんだろうが」
「若い二人に譲れよ」
「なんだと?」
「男の嫉妬は見苦しいって知ってるか?」

達した余韻でぐったりと弛緩して力の入らないなまえの太腿に手を添え、内側に所有の赤い痕をつけていたのを、ディエゴが中断した。
鋭く目を光らせて睨みあう二人。
ビリビリとまるで音が聞こえてきそうな程どす黒く緊迫した空気のなか、その均衡を破ったのは、二人の間で己れを苛む熱を持て余したなまえだった。
理性を手放し溶けた思考は、とにかく早くこの熱をどうにかしてほしいと、そればかりにとらわれていた。
火照った身体は捌け口を求め、じくじくと疼き続けている。
なまえは淫らな奉仕をしていたそこから顔を上げ、切なそうな表情で彼らを見上げた。

「熱いの、苦しいの、……ディエゴくん、ディアボロさん、わたしのこと、仲間外れにしちゃ、やだぁ……」

その瞳は淫蕩に潤みながらも、自らを放っておいている男たちをいじらしく責めるような色を含んでいた。
匂い立つような、という言葉をそのまま体現したかのような凄艶な笑み。
鮮やかな色に上気した肢体は更なる喜悦を求め、もどかしげに疼き、身悶えている。

その淫蕩さに目を見開いている二人を前にして、なまえはふいに、両脚の間にいたディエゴの顔を、きゅ、とやわらかな両太腿で挟んだ。
そして膝を胸に抱き込むようにして、そのままくいっと彼の顔を引き寄せる。
至近距離に寄せられた男の顔に、なまえは欲にまみれた女の顔で微笑んだ。

「ね、ディエゴくん……なまえね、ナカに、欲しいの、」

濡れた唇がかすれた声で、はやく、と囁いた。

――ちょっと待て、誰だこんないやらし過ぎる「オネダリ」を教え込んだの。
ディエゴの胸中にそんな疑問と嫉妬が渦巻いた。
しかし、柔らかでそれでいてハリのある白い太腿に顔を挟まれ、引き寄せられた眼前には愛らしい少女。
理性なんてとうに放棄したなまえが甘くとろけるような笑みを向けてきて、まともに思考も働きやしない。
更になまえは駄目押しとばかりに、太腿で両頬を挟んだまま、つつ、と裸足の爪先で彼の背筋を撫で上げさえした。
びくりとふるえたディエゴは彼女に翻弄されていることに気付き、忌々しげに嘆息する。

そんな二人を見て苦笑したディアボロは、ブーゲンビリア色の長い髪を耳にかけ、桃色に上気した彼女の目元に小さく口付けを落とした。

「……本当にお前は末恐ろしい女だな、なまえ」
「んぅ、ディアボロさん……」

顔を寄せられたなまえは嬉しそうに笑みを浮かべ、先程まで存分に重ね合わせていた唇をまたねだった。

「は、全くだ、」

ディエゴも、自らを甘く拘束する脚を開かせながら深く息を吐いた。
目の前でこんなに淫らにねだるなまえを前に、ごちゃごちゃ考え指を咥えて呆けているなんて愚かなことだと判断する。
ディアボロに口付けられながらも、急かすようにディエゴへ伸ばされたなまえの腕をつかみ、堪らずそのぐずぐずに濡れそぼった蜜壷に挿入した。

「ひああぁっ……んむっ、んくっ……!」
「静かに、な?」

待ち望んでいたモノをようやく与えられ、なまえは浅ましいまでの歓喜の声を上げる。
しかしすぐに細い顎を掬い上げたディアボロに、静かにするよう窘められた。
先程までの口淫により唾液に塗れててらてらと光る、更に大きく屹立した肉棒が小さな口腔を塞ぐ。
甘やかな嬌声は先程のようにか細く、くぐもったものとなった。

「んぐっ、んっ、……んんっ! ふっ、う、」

狭い膣壁を抉るように大きな肉茎に擦り上げられ、意識をそちらに全て持っていかれそうになる。
しかし健気にも、なんとかなまえは舌による奉仕にも集中しようとする。
喉奥まで咥え、ぬめる舌で裏筋をなぞるようにねぶる。
それを繰り返し、やがて口の中に溜まった唾液を吸い取るように、ぐじゅっぐぷっと卑猥な水音を上げ、剛直を扱き上げた。
その熱心な口淫にびくんと喉奥を突いて反応した肉棒を感じ、なまえはますます喜びを露わに、膣内はきゅうっと嬉しげにナカを締め上げる。

「くぁ、はっ、なまえっ、そんなに締めるんじゃあない、っ、うぁ」
「お前は本当に咥えながら犯されるのが好きだな、なまえ」
「んくっ、んっ、おくちも、なかも、一緒なの好き、すきなのぉっ! もっと、んむ、う、ふっ、」

いやらしい音が部屋に響き、それはまだまだ饗宴の終わりが見えないことを示していた。

そのとき、淫らななまえの表情を先程眠りに就いたはずの同居人の一人に見られていたなんて、悦楽に溺れる彼らはあずかり知らぬままだった。
そして目撃した彼が彼女のその表情に目を奪われ、今まで気付かなかった欲望の片鱗を自覚することになるのは、まだ少し先の話である。

トレセ・コンフィズリー
(2014.11.27)
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