いたずら
「さようなら、なまえおねえさん!」
「はいさようなら、最近、暗くなるのが早いから気を付けて帰るんだよ」
「はーい!」
子供たちの軽やかな声に破顔しながら、小さな手へわたしも同じく手を振り返した。
きらきらした笑顔の歩美ちゃんに
クールな、けれどやわらかい穏やかな表情の哀ちゃんと江戸川くんにも手を振って、自宅の前で立ち止まっていたわたしは中へ入った。
外出する際、既にカーテンを閉めていたせいで部屋は薄暗く、なんとなく空気がよどんでいるような気がした。
空気の入れ替えをしようと窓へ手を伸ばした瞬間、わたしは溜め息をついた。
「もう……まただ」
わたしの自宅は近隣に小学校と幼稚園があり、登下校の時間帯には子供たちの
子供たちのわいわいと明るい声音は
――しかし、どうしても看過できないことがあった。
そろそろ秋が近付き、朝晩は冷え込んできた時節のことだ。
ここ最近、わたしはあることに悩んでいた。
窓を見下ろしてまた溜め息をつく。
外の寒さで曇った窓ガラスに、指でなぞった跡が付いていた。
それも大量に。
指先で引きずって書いたようなその無数の痕跡は、わずかなバラつきはあるものの、どれも幼い子供の指によるものらしかった。
ひとりでやったものではない。
子供ひとりでやったにしては、あまりにも数が多すぎる。
そして執拗だった。
なにかに駆られていたのではないかと邪推する
大人のわたしが見ても、なんとなくぞっとするほど。
「やだなあ、もう……。ちゃんとカーテンを閉めてたから、中は覗かれていないとは思うけど……」
子供のいたずらにいちいち目くじらを立てるのも嫌だけれど、正直気持ちの良いものではない。
指跡がずっとそこに残っているのがなんとなく気味悪く、わたしは雑巾を絞って、窓の拭き掃除をはじめた。
結露した窓に指の跡が残せるのは、内側からだけ