……夢かな?
アッ、なるほど〜夢か! 納得!

そもそもの発端は、先日の「赤井捜査官が最の高すぎて殉死する」から始まる長文メールである。
メール誤送信によるわたしの自殺未遂事件(発作的に庁舎の窓から飛び降りようとしたところを、赤井捜査官によって華麗に阻止された)以来、なにがどうしてこうなったのか当事者であるわたしにもさっぱり不明なのだけれども、――時たま赤井捜査官にお食事に誘われるようになった。

意味わかる?
わたしはわかんない。
もしかしてわたしやっぱりあのときに死んで、自縛霊的なやつになった挙句に徘徊しながら妄想にふけっているとか?
ありうる。
全くもってシャレにならない。
大人しく成仏しろよわたし。
ああ〜でも成仏する前にシャワーシーンとか覗けないかな〜!

「ところで時間はあるか? 一緒に食事でもどうかな」

ともあれ、赤井捜査官にそう言われ、呆然として一日使いものにならないでいたら、降谷さんに分厚い書類ファイルでブン殴られたのでたぶん生存はしているんじゃないだろうか。
そりゃあもう痛かった。
首がもげるかと思った。

そうして天変地異の前触れか、赤井捜査官にお食事に誘っていただいたとき、とうとう直接死刑宣告を告げられるんだ……と腹を括った。
あんなメールを送り付けたんだから、なんとなじられるだろうか。
近寄るな、視界に入るな、気色が悪い、いやここで命を絶てと言われても仕方がない。
どれも自業自得だ。
おっしゃる通りですとしか言いようがない。
そもそも赤井捜査官のお言葉に逆らうという発想こそが罪では?
う〜ん罪といえば、処刑用のギロチンにかけられるとき、刃がいつ落ちてくるか分からないように俯せで拘束されるけれど、あれのどこに慈悲があるんだろうか?
仰向けに寝かされて、さあいまから死ぬぞって分かった方が良くない?
そっちの方が人道的じゃない?
赤井捜査官もお食事に誘ってくださるなんて名目の慈悲なんて与えず、即刻殺してくれれば、わたしはギロチンの刃がいつ落ちてくるのかという恐怖に怯えずに済んだのだ。
……わたしは何を言ってるんだ???
むり意味わかんない。

ところがどっこい。
驚いたことに、覚悟していた死刑宣告が告げられることはなかった。
普通にお食事し、普通に彼の愛車でわたしの自宅まで送っていただいた。
……いや待て”普通”とは????
あの赤井捜査官とお食事が出来るとは???
わたしはいつの間に神のご相伴にあずかることになっているんだ???
これ死ぬの?????
帰りがけに車内、呼吸の仕方を忘れていたせいでなんでもないところで突然咳き込んで、赤井捜査官に心配していただいた際は、羞恥で危うくここで殺してくださいと叫ぶところだった。

更に更に不可解なのは、これが一度で終わらなかったということだ。
理解? 出来るとでも? 既に諦めている。
大方、もうすぐ終わる人生のために、神さまが与えてくれた執行猶予という名のボーナスステージだろう。
そうとしか思えない。
そうじゃなければこんな全人類抱いたったぜみたいな世界の至宝が、わたしなんぞに時間を割くわけがない。
神さまありがとう!!!
ちなみに当然、この場合の神とは赤井捜査官のことを指す。

逢瀬(繰り返す、これは逢瀬である!)は、その後も何度か続いた。
職業柄、初めて来店するところで食事できない立場上、同じお店を選ぶことが多かったけれど、彼は嫌な顔ひとつしなかった。
毎回毎回、夢かな? と半信半疑だった。
信じられないことに毎度自宅まで送っていただき、あまりのことに狂乱して自室へ戻るたびに顔にビンタをブチかましていた。
自傷行為の趣味なんてカケラもなかったが、めちゃくちゃ痛かったのでたぶん夢ではないと思う。
幸せすぎて怖い……まじで……。

……前置きが長くなったが、つまりここ最近、人生最後の絶頂期というやつがわたしに到来していたわけだ。
しかしながら今回ばかりは、間違いなく、絶対に、まぎれもなく、夢である。
なぜならば、

「……どうした、俺以外のことを考えてるのか? 寂しいな」

ハアアアアアアアアアア〜わたしの妄想は果てがないな〜〜〜〜!!!!!????????
目の前には直視するだけで強制妊娠間違いなし、赤井捜査官のお顔、そしてその後ろには見慣れた自室の天井。
ついでにわたしたちふたりとも一糸まとわぬ姿。
――そう、いま現在、かの赤井捜査官さまに押し倒されているのである。

は?
いやいやいやいやな〜にが「押し倒されているのである」だ?
さすがにわたし欲求不満すぎやしない?
こんな夢を見るなんて、正直、赤井捜査官に申し訳ない。
なんらかの手違いで偶然ちょっと優しくしていただいて超絶どちゃくそウルトラハッピーだったのに、浅ましいわたしときたらこんな夢まで見てしまうとは!
今度こそ切腹モノである。
いや夢だから許されるのか?

ち、違うんだ……赤井捜査官は鑑賞用(直視すると爆発するのでまともに出来ないけど)、もしくはひっこりこっそり崇めたてまつる対象であって、決してそんなよこしまな目では見ていなかったんです……本当にすみませんもっとやれお願いしますいやーーー最高!!!!!!!

「ひ、ああっ、だめ、そんな、奥ぅっ……! らめぇっ、苦しいっ……!」
「すまない、加減できそうにない、っは、」

夢の赤井捜査官が、わたしのナカへ挿入したまま、深く息を吐いた。
呼吸ひとつがこれほど絵になる人間がかつてこの世に存在しただろうか?

えええええまじ無理だってなにこれしんどいヤダヤダヤダハァ〜〜〜!!!
待って待って意味わかんない!
どちゃくそえっちすぎ無理助けて!

パニックになっているわたしを置いて、赤井捜査官がまた浅く、は、と息をつく。
額に張り付いた前髪を、鬱陶しそうにかき上げた。
汗がつうと頬を伝い、顎から滴り落ちる。
……ヒッ……その一連の流れを目にして、わたしは死を覚悟した。
色香の暴力かよ……頼むからもう少し抑え目にしてほしい……。
想像妊娠待ったなし。

こんなはちゃめちゃにえっちな存在が地球上に存在するわけがない、常識的に考えて。
よってやはりこれは夢である。

……ハッ、つまり……なにをしても許される……!??
言いたいことやりたいことやったもん勝ち! だよね!

「ひゃぁんっ、きもち、いい、れすっ……! もっと、あかいそうさかんも、んっ……きもちよく、なって……? 一緒に、ね、」
「っ、なまえ……」

吐息まじりの低音で赤井捜査官がわたしの名前を呟く。
ご存知の通り、彼の声は凶器である。
挙句、快感でかすれ気味の吐息を添えて?

夢の中だからと吹っ切れることを決めたわたしは、そのとき確信した。
気が狂う。
たぶん明日、日の目を見ることは出来ない。
召される。
グッバイ現世。
来世はどうかまともに赤井捜査官と日常会話が出来る程度の人間関係の位置に生まれますように……。

この世とさよならする前にせめて出来るだけ覚えていたくて、必死に赤井捜査官を見上げる。
夢だから直視しても体が爆発しない! すごい!
脳みそ同様、顔もぐちゃぐちゃなので、こんなものを晒してしまうのは恥ずかしいけれども。
夢だから許してほしい。

一生懸命目を開いて、彼へ手を伸ばす。
こんなチャンス滅多にないのに、しかし勝手に浮かぶ涙のせいで視界が滲んで、折角のお姿がぼやけてしまう。
なんて勿体ないことを、と目元を強くこすると、赤井捜査官が、ふ、と笑ったのが聞こえた。

「……こら。目が腫れてしまう」

優しく手を取られ、ちゅ、と指先にキスを落とされた。
ッ……ハァーーーーーー!!!!!!
いま鼻血とか内蔵とか出なかった? 大丈夫? 五体満足? 無事?
いや全く無事じゃないな???

仕草が……いちいちスパダリしゅぎりゅぅ……殺しにかかってきてゆ……。
ハッ、ま、まさかこうしてわたしを間接的に殺そうという算段なのか!?
くっ、巧妙な罠!
そっちがその気ならこっちだって耐えてみせる!
かかって来い!
もっとこの夢を全力で堪能するため、わたしはここで死ぬわけにはいかない!

悲壮な決意を胸に、きっと赤井捜査官を見上げると、そこには、

「っ、は……だが、悔しくて、俺も泣いてしまいそうだ」
「え……?」
「君のそんな顔を知っている男が他にいるというのは……少々、妬けるな」

ビチャァァッ(脳漿が弾け飛ぶ音)

即落ちした。
2秒も保たなかった。
知ってた。

見上げると、ふ、と苦く雄くさく笑った赤井捜査官の、格好良すぎて語彙を殺すことに定評のあるお顔。
至近距離でまともに見てしまい、脳漿が弾ける音がした。
わたしの脳内で。

はーーー……。
しんどい……むり……まじむり……。
こんなエロスの化身みたいな赤井捜査官に、夢の中とはいえ立ち向かう方が愚かだったんだ……。

さすが夢。
わたしが想定もしていない、けれど確実に脳みそを吹っ飛ばすセリフを赤井捜査官に言わせるとは……。
自分の才能が恐ろしい。
出来ればこのまま永遠に目覚めたくないので、かの工藤探偵に麻酔針でも打ち込んでほしい限りである。
永眠。

「妬ける、なんて……」
「ああ、気にしないでくれ。狭量な男の独り言だ」

赤井捜査官がなにを心配しているのか分からないけれど、わたしの異性とのお付き合いといっても、他愛のないものだ。
最後は学生時代。
この仕事に就いてからというもの、最低限の相手の身辺調査に加え、上司への報告義務もあるものだから正直面倒だし、そもそもそんな暇なんてずっとなかった。
結果、長らく男女交際というものから遠ざかっていた。
それにこんなに頭がおかしく(残念ながら自覚はある)、更にこれほどの痴態を晒すのは赤井捜査官が初めてのことだった。
……初めてといっても、これは夢の中だけど。
しかしながら、そんなことを逐一丁寧に説明できる余裕なんてあるはずもなく。

「ッ、ちがいます……」
「なまえ?」
「こんな、こんなのぉっ、ひぅ、ッ、あ、あかい、そうさかんしか、……知らないぃっ……!」

涙ながらに見上げながら必死にそう伝える。
頭がどうにかなってしまいそうなほどの好意と、幸せと、快感と熱と、……そんな感情全てが届きますようにと思いながら。

赤井捜査官は一瞬だけ驚いたように目を開いたかと思えば、すぐにくしゃりと相好を崩した。
そうやって眉を下げて嬉しそうに微笑すると、目元のくまや険がやわらいで見え、ぐっと親しみやすさが増すことを知る。

ハッ、ハレルヤーーー!!!!!
いまの見ました!!???
なにこの表情、可愛いかよ!!!!!!!
世界が光に満ち溢れ、花々は咲き誇り、天からは天使が舞い降りて、地上から争いが消えるレベル。
世界平和はここにあった。

いつもの切れたナイフって感じのお顔や雰囲気も格好良くて素敵だけれど、なんだかいまはなけなしの母性本能的ななにかが過剰に刺激されていますぐ母乳でも出そうな勢いだ怖い。
体ごと作り変えられかねない。
赤井捜査官は神だから人間の肉体改造くらいたぶん余裕なはず。
やばい。
尊みが深すぎてやばい。

自然と合掌して拝みそうになったところで、ふと神が思い付いたと言わんばかりに目をまたたかせた。
ていうかこの状態でおしゃべりするのってわりと生殺しなんですけど。
お腹をいっぱいに満たされて苦しくて呼吸すら難しい。

「あ、あかいそうさかん……? っ、あの、」
「なまえ、名前で呼んでくれないか」
「無理」

即答すると不満げに、む、と口を曲げられた。
あ〜〜〜〜かわいい……すっっっっっごいかわいい……かわいい is ここにある……。
いかん、これそろそろかわいいがゲシュタルト崩壊してくるやつ。
まさか赤井捜査官に対してかわいいと思う日が来るとは思わなかった。
世界が輝きすぎでは?
思っていたよりずっと赤井捜査官は表情豊かなんだあ……はわわ……と感動していると、わたしの返事がお気に召さなかったらしい。
唐突に、グッとえぐるように奥を突かれた。

「ひゃあんっ!」
「どうして呼んでくれないんだ? その方が呼びやすいだろう? それにベッドの上でまで敬称なんて意地が悪いな」
「あっ、あっ、や、そんなに奥ぅっ……ひっ、ぐりぐりしちゃ、だめぇっ」
「なあ、なまえ?」

いや! だから! 無理!!!
夢のなかなんだからきっと許される、わたしだって素直に呼べばいいと思う。
思う、けど、……だって、なんだか赤井捜査官のお名前を呼ぶなんて、は、恥ずかしすぎるっ……!
口にしたらきっと終わりだ。
何がって、わたしの命が。

「強情だな、呼んでくれないのか?」
「むむむむりです許してください心臓が止まります殺さないで」
「それは困ったな……」

いいいいくら赤井捜査官のお言葉とはいえ、そんな、いや名前を呼ぶよりずっとすごいことをいまシテいるんだけれどもそれとはまた話が別というか、あっ、あっ、あっ、なにその表情なにか企んでいるな!? どちゃくそかっこいい!!!!
何をするつもりだと怯えたわたしに気付いたのか、にやり、と赤井捜査官が口の端を歪めた。
わたしの耳元へ唇を寄せ、――とうとう本日最大の爆弾を投下した。

「……意地悪しないでくれ、sweetie」

please、と吐息混じり耳へ吹き込まれる、かすれた低い声。
惚れ惚れするほど流暢に囁かれたセリフ。
あ〜〜〜……さっすが……ここで英語を使ってくるかあ……。

なまえは死んだ。
この攻撃を受けて無事な生命体なんてこの全宇宙に存在するか?
赤井捜査官が魅了するのは人類だけじゃなかったんだ……全宇宙の未確認生物すら当然これには落ちる。

あひゅ……夢ってしゅごい……。
わたし天才……いまわたしが世界の頂点にいる……。
むしろ自分自身に感嘆すら覚える。

苛烈な攻撃により甚大な被害を受けたわたしは、大人しく白旗で首を吊ることにした。
いやだってもうむりじゃない?
これ以上抵抗する理由がなくない?

「っ、うう……しゅ、……しゅういち、さん、」
「ああ、なまえ」

赤井捜査官はさっきよりももっと嬉しそうに頬をゆるめた。
ようやく名前を呼んだわたしを褒めるように、髪を撫でられる。
ふにゃりとやわらかく微笑んだ赤井捜査官は控えめに言って聖母かな? って感じだった。
さっきは母性本能で勝手に母乳が出そうだと考えていたけれど、いまは過剰に分泌された女性ホルモンが暴走して肉体が爆裂しそうなっていた。
助けて殺される。

それにしても「秀一」というお名前、素晴らしく美しく尊いな……。
ご両親に愛されて生まれてきたんだなとしみじみ思う。
ああ、ご両親に感謝したい……赤井秀一という至上の存在を生み育ててくださってありがとうございます……神を、ひいては天地創造を成し遂げられた方々に心から感謝いたします……。
感涙に咽ぶわたしに、地球をはじめ銀河系全体を抱き締める赤井捜査官の幻覚が見えた。
いやこれ本当に幻覚か?
天地創造の瞬間じゃない?
――この瞬間、宇宙が生まれた。

「ふ、ぁああっ、しゅ、秀一さんっ、秀一さぁんっ……!」
「ああ……俺も、ッ、限界だ」

荒い息を浅く繰り返しながら、彼も苦しげに眉を寄せた。
ああ、その吐き出される息、全部つかまえて永久保存したい。
ぐらぐらと煮立つ頭でそんなことを考えていると、ただでさえ大きなモノが一際膨張したのを胎内で感じた。
熱い。
苦しい。
気持ちいい。
は、と息を飲んだ瞬間、どぷりと音が聞こえそうなほど勢いよく、わたしのお腹の上に精液が吐き出された。
粘性を帯びた体液はわたしの胸まで飛んで、特有の香りがぶわりと漂う。
青臭いにおいに嗅覚も犯される。
ただでさえダメになっていた頭が、もっとおかしくなるのを感じた。

「はあっ、ぅ、んん……あかちゃん、できちゃう……」

腹上に出された白濁をうっとり眺める。
他人の体液なんて普通なら気持ち悪いと嫌悪するだろうに、これが赤井捜査官のものだと思うと胸が苦しいほど愛しくて勿体なくて、思わず指ですくって口に運んでしまった。
うう、苦いはずなのに……最高オブ最高、主食にしたい……。
おいしい、と語尾にハートマークをふんだんに付けて恍惚と呟くと、赤井捜査官がぐっと呻いた。

「っ、君は……恐ろしい女だな……」
「はい?」

なにを言ってるんだと首を傾げると、再びがばりとベッドへ押さえつけられ、赤井捜査官が覆いかぶさってきた。
うん?
宇宙一きれいな緑の瞳がギラギラ光っていらっしゃいますが?
どうしていま出したばっかりなのにもう臨戦態勢なんです???
こんなの絶対おかしいよ。

「なまえ、すまない。もう一度付き合ってくれないか」
「くれないか、って強制じゃないですか! わたしの選択肢は!」
「ない」
「でしょうね!」
「……Please, kitty……」
「グッ!!!! あっ、もしかしてわたしが弱いって分かってやってますね!? 卑怯な!」

とはいえ赤井捜査官にそう迫られて、拒否できると思う?
うん無理〜〜〜!

というわけでこの後もめちゃくちゃセックスした。


・・・



すごい夢を見てしまった……。
おはよう世界、おはよう現実。
ベッドに横たわったまま、呆然とする。
ちゅんちゅんと窓の外から聞こえてくる鳥の鳴き声が、平和すぎてむしろ怖い。

ハァ〜〜……赤井捜査官、どえっちだった……。
回想だけで孕んじゃう……昨日だけで何度赤ちゃんできたことか……。

あんな淫夢を見てしまうなんて、思春期の青少年じゃあるまいし、と虚しさやら赤井捜査官への罪悪感やらが襲ってくる。
嘘じゃない。
ほんとに。
ただ、ぶっちゃけそんなことよりもずっとわたしの脳内を占めていたのは、――脳の記憶を高画質高音質高感触で保存、再生できないか、という一点についてだった。
いつでもどこでもあれが再生できたら……いや、絶対に発狂するなこれ。
社会的物理的に死ぬ自信がある。
やめておこう。

とりあえず今日も仕事だからと起きあがろうとした。
ら。

あれれ〜? なんだか体がめちゃくちゃだるいし節々が痛いぞ〜?
お腹に回されたこの逞しい腕は誰のものかな〜?

「おはよう、なまえ。早起きだな」
!!!!!!!!!!?????????

上半身は裸で惜しげもなくその全人類を魅了する肉体美を晒し、ほんの少し癖のついているブルネットの髪は乱雑にかき上げられ、切れ長の険のある目元はいつもよりやわらかくちょっとだけ幼い印象が、ああああああああああどえろいッ目が潰れるッ!!!
朝チュンシチュエーションが嫌いな女子はいません!!!

……いや、違う、えっ、ちょっ、ま、まってまって、なん、え、……うんんん!!!!!!!!?????????

「あっ、ああああああ赤井捜査官ッ……!!!????」
「つれないな、昨日はあんなに秀一さんと呼んでくれただろう?」
「ヒッッッッ夢じゃなかった!? アッ、これも夢か〜も〜はやく起きろわたし今日も仕事だぞ!!!!」
「おいおい、まさか夢だと思ってたのか?」

呆れたと言わんばかりに、赤井捜査官が片眉を上げ首を傾げた。
ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てて額に口付けられる。
ふああ……しゅぱだり……しゅごい……。
なにこれむり……ふえぇ……たしゅけて……。
朝っぱらから怒涛のトップオブワールド改め宇宙規模の雄オーラをびしゃびしゃに浴び、わたしは既に息も絶え絶えだ。
召される。

硬直したままのわたしに、赤井捜査官が困ったように微笑む。
懇願するように見つめられ、いつの間にか手を握られていたことにいま気付いた。
全人類ひいては全宇宙が卒倒するほど濃厚な色気だだ漏れな低音ボイスで、赤井捜査官が囁いた。

「夢じゃないとどうすれば信じてもらえるかな、ダーリン?」

わたしはといえば、数週間前と全く同じことを考えていた。

……これわたし死んだわ。


(2017.10.07)
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