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まじでか。

目覚めたばかりのぼんやりした頭が、一瞬にしてスッと冷静になった。
寝起きが良いとは言い難い、いつもは覚醒するまで数分を要する自分に見せて、やれば出来るじゃないかと言ってやりたい。
なまえはひくひくと引き攣る口の端を自覚しながら、笑みを浮かべようとした。

……ああ嘘、嘘だ、全くもって冷静になんかなっていない。
正直なところ、近年稀に見るパニック状態だった。
なんなら咄嗟に叫ばなかった自分を褒めてあげたいほど。
驚きすぎて声が出なかったという方が正しいけれど、となまえは開きかけた口をそっと手で押さえた。

なんにせよ、目は覚めた。
それはもう、ぱっちりと。
位置的になまえのところから時計を見ることは出来ないものの、きっとベッドから出るにはいささか早い時間だろうと察せられた。
しかしながらこのまま気持ち良く二度寝を決め込むのは、絶対に無理なのは明らかだった。
ベッドから出るなんてとんでもない。
それどころか、少しでも身じろぎすることすら不可能だった。
上体を起こすなんて、もっての外。
なぜならば、

「……は、はいったまま、とか……!」

なまえの膣内には、未だ眠ったままの降谷の陰茎が挿入されたままだったからだ。
背後に向けて恐る恐る小さく、れい、と呼ぶが、後ろからなまえを抱き締めて深く寝入っているらしい男から返答はない。
なまえは胸中でもう一度呟いた。
まじでか。

――そもそも、死にそうな顔をした降谷が三日ぶりに帰宅したのが十数時間前。
本人いわく適宜仮眠を取っていたらしいが、出迎えたなまえはそれにしたって顔色が悪いと溜め息をついた。
しかし心配して駆け寄っていったというのに、そんななまえの気遣いなどどこへやら、色々と限界で理性の飛んでいたらしい降谷にそのまま美味しく頂かれることになった。
玄関で、立ったまま、ご近所さんに聞かれないかハラハラドキドキ、とこう三拍子テンプレシチュエーションが揃ってしまえば、それはもう盛り上がるのも仕方ない。
久しぶりだったし。
余裕なく求められて嬉しかったし。
普段とても理性的かつ冷静な降谷が、あれほど乱れて求めて来るなんて、NOと言えるだろうか? 言えるわけがない!
なまえはてのひらで火照る頬を覆った。
……本人には絶対に言えないが。

そして風呂場に移動し、なまえも引きずり込まれ浴室でもう一発。
仕方ない、彼の褐色の肌をすべり落ちる白い泡という光景は、何度見てもものすごくいやらしいのだ。
控えめに言って、女である自分よりもずっと色香があって、それはもう心臓に悪い。
端的に、めちゃくちゃえっちだ。
やっぱりこれも本人には言えないけれど。

そしてその後、ベッドに移動してもう一度シた。
この男、三十路手前のくせに元気だな……。
げんなりと瞳が濁るのを自覚しつつ、なまえは遠くを見やった。
仕方のないことだった。
寝不足や疲労感で色々とグズグズになって、彼の瞳で、声で、表情で、体すべてで愛しい愛しいと口付けられ、揺さぶられると。
肉体の快楽ばかりではない、ふわふわとした幸福感や充足感に頭を埋め尽くされ、なんでも許してあげたくなってしまうのだ。
……やっぱりこれも本人には言ってあげないけれど。

以上、回想終わり。
なまえはうっすら溜め息をついた。
昨晩のことを思い返したってどうにもならないのは分かってはいる。
現実逃避だという自覚だってある。
でも、だからといっていまのわたしに何が出来るというのか。

そもそも深夜まで行為に及んでいたため、なまえもくたくたに疲れていた。
どこぞの体力オバケと違って、善良な一般市民なのだから。
例えば、そう、後ろからわたしのことを相変わらず抱き枕扱いしている降谷零とかいう男とか、となまえがこぼれそうになった欠伸を噛み殺すと、体に力が入ったのだろう、ナカに挿入ったままのそれを強く感じてしまい、思わず呻いた。

ほんの数十分前までぐーすかと眠りを貪っていた自分が信じられない。
よくもまあこの状態で寝ていられたものだ。
そもそも昨夜(日付けとしては既に今日になっていたが)、オチてしまったのも、ほとんど抱き潰されての失神という形だった。
どれもこれもやはり降谷のせいだと再確認し、なまえはそっと背後を窺った。
寝たフリは勿論、笑ったフリや傷付いたフリが特別上手なこの男のことだ、狸寝入りでもしているのではないか。
そう疑ったものの、どうやらその疑念は不要らしい。
ずっと生活を共にしていれば、彼の偽装を見破るのが多少は上達したと自負している。
少なくともなまえの目から見て、いまの降谷は完全に寝入っているようだった。
利害の打算から敢えてチラ付かせるのは別として、他人に自分の弱いところを見せるなんてありえないこの男が、無防備に眠っているという事実がどうにも面映ゆく、なまえの頬がゆるんでしまう。

しかしながら、この状況はいただけない。
本当に。
それに、降谷本人も違和感などないのだろうかとそこまで考えて、そういえばほんの数十分前までなまえも同じように熟睡していたなと思い至った。

それにしたって、と口の中だけでもごもごと呟く。
ごくごく小さな声量では、幸か不幸か降谷は目を覚まさなかったが。
起こしてしまった方が良いのだろうか、いや、どんな顔をして彼と話せば良いのか。
そもそもまともに会話できる気がしない。
無理。

それに、驚いて咄嗟に体を動かしてしまって、自分や彼の体に傷でも負わせたらと思うと、下手に無理やり起こすのは気が引けた。
互いのためにも、突発的な行動を起こされるのは避けたい。
こんなことで怪我するなんて、本当に笑えない。
ひくりとなまえは口元を引き攣らせた。
口が裂けても決して他人には言えないだろう。

さて、どうしよう。
当然だが、数時間前に吐き出された白濁は、とっくに子宮が飲み込んでしまっている。
そういえば毎日ちゃんと低容量ピルを飲んでいるとはいえ、容赦なく生で中出ししたなこの男……と今更ながら呆れる。
……直接ナカに出される感覚に、何度も快楽に昇りつめたりなんかしていない。
断じて。
感極まりすぎて「なまえのお腹にっ、いっぱいっ、びゅーってしてっ」なんて言っていない。
それにそんなド淫乱なセリフを吐くような身体になってしまったのは間違いなく降谷のせいなので、自分は悪くない、となまえは責任を放棄した。

というわけでいかんせん貪欲な胎内が彼の体液を飲み干してしまったため、内壁は平常時程度に乾いてしまっている。
おかげで先程から少しでも身じろぎすれば、肉の引き攣れるような痛みが走る。
無理に抜けば、きっと流血沙汰になるに違いない。
そんなの絶対に嫌だ。
絶望のあまりなまえの目に涙がうっすら滲んだ。

加えて降谷の逸物は、そのプリティーフェイスからは到底想像できないほど太く、大きい。
あまりの逞しさに、初めて見た際、詐欺だ! と叫んだのも懐かしい……と、またもや過去へ現実逃避していたことに気付き、なまえは力なく項垂れた。
とりあえずそういうわけで萎えたサイズになっているとはいえ、通常時から比較的大きなモノが乾いた膣肉へずっぽりがっちりハメられているこの状況は、本当にどうしようもないのだ。

後始末は男の甲斐性じゃないのか、いや、昨夜の彼にそこまで求めるのはさすがに酷というものだろうか。
というかそこまでダメになるくらいだったら、帰宅してさっさと寝るべきだったと心底思う。
本当に限界、という雰囲気だった。
でもその余裕のなさがまた色っぽくて、雄って感じで……ときゅんとときめいてしまって、またもやなまえはうっと声を漏らした。
断じて、きゅんとした瞬間にナカを締め付けてしまったわけではない。
本当に。まじで。そこまで淫乱じゃない。

「うう……零のばか……」

背後から回された逞しい腕は重たく、退かすのは難しい。
いまそれほど大きな動きを取ることなんて出来そうにない。
それに無理に押しやれば彼が目を覚ましてしまうだろう、おそらく数日ぶりだろう降谷の深い眠りの邪魔などしたくなかった。

うう、ともう一度だけ呻いて、涙目になりつつなまえは心を決めた。
現状、無理に抜くことが出来ないのなら、挿入したときと同じ状況にすれば良い。
要は滑りを良くする。
しかしながら数時間前に吐き出された精液はとうに膣内で乾き、ローションなど潤滑油になるものは手に届く範囲にはない。
ならば、どうするか。

「んっ……」

きゅ、と口をつぐみ、なまえは剥き出しの下肢へそろりそろりと手を伸ばした。
太腿の内側をゆっくりと撫でる。
肌をなぞる指先を意識すれば、すぐに身体の内側から明確な熱と欲が湧き上がってくる。
は、と浅く息を吐いて、なまえは秘部へと手を這わせた。

現状を打開するためには、咥え込んだソコを濡らして滑りを良くするしかない。
周囲に道具がないのならば、思い当たる方法はひとつしかなかった。
つまり、――なまえ本人の分泌物。

ばかか!? ばかだ! でもそれ以外に一体なにが出来るというのか。
全部零のせいだ! と胸中で背後の男を何度も罵りながら、なまえはゆるゆると割れ目の上の方をなぞった。

「ふ、ぁっ……」

昨夜散々なぶられたそこは、未だかすかに熱を持っていた。
まだ反応しきってはいない肉の突起を、指先でくすぐるようにして撫で上げる。
意識はないとはいえ降谷の腕のなか、ひとりでこんなことをするなんて、と考えただけでなまえはうだるような羞恥に全身を焼かれるようだった。

は、は、と既に呼吸は荒く乱れはじめていた。
気恥かしさになまえが頼りなげに視線をさまよわせれば、寝室のカーテンの隙間からうっすらと朝の陽光が射し込んでいることに気付いた。
明るく照っているだろう太陽は分厚いカーテンに遮られて、淫靡な空気が重たく垂れ込めるベッドへは届かない。
しかしながら爽やかな朝からひとりで熱っぽく息を荒げている自分に、どうしようもなく興奮と劣情がいや増してしまう。

そんな現実から逃げるようになまえは目を閉じた。
暗闇のなか、思い出すのは昨夜の降谷のことだ。
余裕のない表情だとか、切羽詰った荒い吐息だとか。
熱を帯びた褐色の頬に、透けるように輝く金色の髪が乱れて汗で張り付くさま。
苦しいほどに力強く抱き締めてくる熱い腕、愛おしそうに何度もなまえを呼ぶ声。
普段は冷静かつ涼しげな色をしているくせに、行為の最中とろけるように細められる天色の瞳、――

「ん……」
「っ……!」

そのとき、背後で眠っている降谷が小さく息をこぼした。
彼の吐息が、剥き出しのなまえのうなじをくすぐる。
途端に、ぐんと興奮の度合いが高まるのが自分でも分かった。
ひとりで敏感な性感帯を直接触るよりも、彼の存在を強く感じる、たったそれだけで、ずっと大きな悦楽を生んでしまう自分の正直な肉体に呆れるしかなかった。

全身がかあっと燃えるように熱くなる。
腹の奥がずんと重たくなったのを自覚した。

「ぁ、ふ……っ、れい、れぇ……」

とても自分から出ているとは信じられない、恐ろしく甘ったるい声が漏れた。
あまり大きな声を出すと起こしてしまうだろうと控えめに唇に乗せるだけだが、降谷の名前を呼ぶだけで、ますますどうしようもなく淫らな気持ちになってくる。
恥ずかしい甘え声を聞きたくなくて、耳を塞いでしまいたい。
しかし残念ながら両手は塞がっていた。
いつの間にか、秘部に伸ばしたのとは反対の手は、昨夜彼に散々揉みしだかれた胸に触れていた。
入浴中に洗う際など普段は自分で触れてもなんとも思わないはずの部位なのに、閉じた目蓋の裏で降谷の姿を思い描けば、それだけで敏感に悦楽を拾う器官へと成り果ててしまう。
指をめり込ませるようにしてなまえが自らの乳房を揉みしだけば、あ、あ、とだらしなく嬌声が漏れた。
痛いほどに張りつめた先端を指先がかすめれば、それだけでびくっと爪先がふるえてしまう。

じくじくと甘い痺れが全身を浸食していく。
熱を持った肌にしっとりと汗が浮かぶ。

背後から抱き締められ横向きに寝ているせいで、体勢は苦しく下側になった腕は動かしにくい。
しかしながらそんなことを全く考える余地などなく、いつしかなまえはその淫らなひとり遊びに没頭していた。

いつしか痛いほどに膨らみきっていた淫核を、指の腹で転がす。
軽く触れるだけでびりびりと鋭い快感が駆け抜け、あまりの喜悦に無意識に腰が揺れた。
脳裡に浮かぶのは、ここを虐めていたときの降谷の姿だ。
自分だって余裕なんてないくせに、口の端をゆるめ意地悪げに「ここが好きだろ?」と微笑する男の姿。

「うんっ、すき、好きぃっ、ぁ、ああっ! なまえ、きもちいいよぉっ……あぅ、零、れいぃ、」

はあっはあっ、と吐き出される、爛れた息が部屋の温度を上げる。
下腹からとろけて、ぐずぐずに溶け流れてしまいそうだ。
指先でくすぐるだけだった動きを、まるで肉の芽を押しつぶすように指の腹で強く刺激する。
なまえの目蓋の裏でちかちかと光が明滅する。
限界が見えて、なまえは無意識に乳房をつかむ手の力をきゅっと強めた。
途端に、昂った熱が弾ける。

「ああっ、んぅ……ひぁっあっ、れぇ、零ぃっ……!」

一瞬、意識が遠のく。
びくびくっとふるえ、全身を硬直させ、降谷の名前を呼びながらとうとうなまえは達した。

「はーっ、はーっ……」

蜜孔が歓喜にふるえ、柔肉が降谷に絡みつくのが分かる。
雄を咥え込んだままの隘路は、もう充分にしとどに濡れ、ぐずぐずにとろけていた。

はふはふと荒げた息をなんとか落ち着かせながら、なまえはいつの間にか滲んでいた涙を拭った。
そこで、はた、と気付く。
そもそもの原因である乾いた膣内と大きな肉棒はとっくにずぶ濡れで、わざわざ確認するまでもなく、滑りは良くなっているはずだった。

……しかし、この圧迫感はなんだろうか。
胎内に感じる肉の圧迫はちっとも改善されていない、いや、むしろ増している。
どうして下腹部がこれほどまでに苦しいのか。

「ぁ、え……おっきくなってる……?」
「何度もあんなえっろい声で零、零って呼ばれたら、そりゃあ反応するだろ」
「〜〜っ!?」

先程の喜悦とは方向の違う衝撃に、声にならない叫びをあげてなまえは全身を強張らせた。
快楽でとろけた肉体の熱が、一気にザッと引く。
この場には当然、なまえ以外に言葉を発せる人物などひとりしかいない。

「れっ、れ、れれれ……」
「ハイハイ零くんですよ」

大丈夫か? と声をかけられ、なまえは先程拭ったはずの涙がまたも溢れそうになっていることに気が付いた。
これが大丈夫に見えるのかと詰め寄ってやりたい。
しかしなまえの口から出たのは、言葉にならない悲鳴だけだった。

「っあ、やめて、動かさないで!」
「なまえだって腰揺らしてたくせに」

昨日、あれじゃ足りなかった? と背後からは揶揄するような男の笑い声が向けられているものの、なまえは振り返って文句を言うことも出来なかった。
出来るわけがない。
振り向いて、どんな顔をすれば良いというのか。
自慰に耽っていたときよりも、頬や耳あたりが火照って仕方がないのは気のせいだろうか。
こんな顔では、愉快げに弧を描いているだろう降谷の口を塞いでやることも出来やしない。

真っ赤になっているだろう顔を見られたくなくて、なまえは両手で覆った。
その際、秘所をなぶっていた方の手から微かに淫らなにおいが香り、あまりの羞恥になまえはますます身を縮こまらせた。

「いっそころせ……」
「今から死ぬほど気持ち良くさせてやるから、それまで少し時間くれ」
「ばかっ! もうベッドから出よ、朝ごはん作ろう!?」
「お前こそ馬鹿なこと言うなよ、折角なまえがひとりで準備してくれたんだから、俺も応えないと」
「お気遣い結構です!」
「っ、ん、体勢変えるぞ」
「あっ、〜〜っ、れ、零っ」

なまえの抵抗も空しく、胎内に挿入されていた肉茎は数時間ぶりにようやく引き抜かれ、間髪入れずまたも埋め込まれようとしていた。
ベッドに仰向けに転がされ、正面から覆いかぶさってきた降谷をなまえは睨みつける。

しかし男の天色の瞳にはふざけてからかう気配など全くなく、まるで恋心を知ったばかりの少年のように甘く潤み、元々垂れ気味の目尻が心底愛しいと言わんばかりにゆるんでいた。
ずるい。
そんな顔をされたら、強く突っぱねることが出来なくなってしまう。
なまえは溜め息をひとつ吐くと、降ってきた唇を従順に受け止めた。
やっぱりいやらしいことをするなら、正面から顔を合わせながらの方が良いな、と思いつつ。

寝室のカーテンの隙間からは、相変わらず明るい陽光が細く射し込んでいた。
爽やかな朝は、またも淫蕩な色に染められようとしている。


(2017.09.12)
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