「か、かわいいっ……!」

はあ、と、うっとりした溜め息をつきながら、語尾にハートマークが付きそうな勢いでなまえは相好を崩した。
ゆるんだ頬をときめきで上気させ、目の前で時折ぴくぴくと動く猫耳にそっと触れる。
好きなようにさせてくれるディオに甘え、笑顔でやりたい放題しているなまえ。
そんな彼女を見て、彼は馬鹿にしたように鼻で笑った。

「よりにもよって男の猫耳なんて、なにが楽しいんだ」
「ディオは理解してなくてもいーの、わたしが楽しいから問題なし! わたしね、動物に近付くと逃げられちゃうんだけど、ディオなら逃げないでしょ?」

猫の耳に触ってみたかったの、と声を弾ませてなまえは楽しそうに、彼の頭上に生えている髪色と揃いのそれを撫でた。
なぜそうなってしまったのか原因は不明だったが、細かいことを気にするより、目の前にあるものの方が大切だと言わんばかりに、なまえはその疑問を放り投げた。

違和感なく元からそこにあったかのように生えている耳の構造がどうなっているのか分からない。
しかし低めの体温や触れられる感触もきちんとあり、自分の意思で動かすことも可能らしい。

「突然猫耳が生えるなんて、不思議なこともあるもんだねえ。それにしても、普通の人間の耳もそのままあって更に猫耳ってどんな感じ?」
「音が聞こえすぎて鬱陶しいな……大きな声は出すんじゃあないぞ」
「え? フラグ?」

違う、と溜め息混じりにディオは呟くと、膝上に乗っていたなまえを座っていたソファにどさりと押し倒した。

「……っ、ディオ?」
「まあ、お前の喘ぎ声なら話は別だが」
「……やめて。そんな気分じゃないの。もっと猫耳愛でさせて」
「もう充分だ、いい加減にしろよ」
「やだ、わたしはまだ遊び足りないの……っん、ディオ、だめ」

両手首を冷たいソファへ押さえつけられる。
次いで、ざり、と肉厚の舌で首筋を舐められ、なまえはいつもより鋭く光る金の瞳を睨みつけた。
機嫌が良さそうにふよふよと揺れている、耳と揃いの色の尻尾。
まだその触り心地も試していないのに。
なまえは腹立たしさに口をへの字に曲げた。
鍛えられた体躯の下から逃げ出そうともがいていると、ふいに部屋の扉がバンッと大きな音を立てて開かれた。

「あっ、おいディオ!」
「我ながら本当に油断も隙もないな……」

一人は怒りを露わにしながら、もう一人は呆れ顔で。
自分を襲おうとしている男と同じ揃いの顔をした二人が部屋に入ってくる。
更に加えて「お揃い」のものを見て、直前までの状況など忘れ、ぱっとなまえは目を輝かせた。

「DIOもディエゴも! みんな猫耳と尻尾が生えちゃったんだね可哀想に! よしよしおいで、触らせて!」
「……嬉しそうだな」
「んふふもちろん!」

男に押し倒されながらも意に介さず、あまつさえ手を伸ばして満面の笑みすら浮かべるなまえをそこから引きずり出してやりながら、DIOはうっすらと苦笑した。

「……なまえ、お前は一度、男心というものを理解した方が良いな」
「は? 男心? DIOってそんなに繊細なハートの持ち主だった?」
「私じゃあない、ソレだ」

ソレ、と片眉を上げて指し示されたディオはイライラと舌打ちをしてソファに座り直した。
なんのことかと、なまえはきょとんと首を傾げる。
その戸惑いを可憐で愛おしいと思うものの、一方で少々考えものでもあるなと、DIOはほんの微かに苦笑を浮かべた。
自分以外は敵、もしくは無価値な有象無象だという認識を持ち、他人を切り捨てることを何とも思わない性質の男が唯一愛した女を前にしたとして。
その女が自分の腕のなかにいるにも関わらず、笑みすら浮かべて別の男に手を伸ばしていたら。
例え相手が自らと同一のものだったとしても、苦虫を噛み潰したような不快感と厭わしさを覚えるのもやむを得ないだろう。
――なぜならば自分も「そう」だからだ。

「なまえ」
「んー、なあに? あ、ディエゴの耳の毛並、ちょっとだけディオと違うね?」

ディオの左隣に腰掛けたDIOは、なまえを抱き上げて膝の上に乗せていた。
なまえはといえばDIOの脚上にいるにも関わらず、膝立ちになってディエゴの耳を撫でている。
この少女は自分の置かれている現状を理解しているのだろうか。
もし分かっていてやっているのならば、これほど良い男(それも三人も、だ)を捕まえておいて、恐ろしく性悪な女極まりないと言わざるをえないだろう。
はしゃぐ彼女がソファから落ちないように支えてやりながら、DIOは薄く溜め息を吐く。
髪や耳と揃いの色をした尾が無意識にゆらゆらと揺れていた。
その動きを嬉しそうに見つめていたなまえの頬に、手を添える。

「なまえ、つまらん仮定の話だ。もし仮に我々が他の女に手を出していたとして、その状況でお前を手招いた場合、どう思う?」
「……それは、」

ゆらり、と黒い瞳が思案に揺れる。
滲む色は頼りなげに沈んで翳りを見せた。

「……とても、いやな気持ち、かな」

DIOの更に隣、ディオの反対側に座っていたディエゴから手を離し、なまえは小さく呟いた。
享楽的で御しやすい瞳をほんのわずかに沈ませて、なまえはごめんなさいと囁いた。
分かれば良いと誉めるように、軽い口付けを目尻へと贈る。
児戯のような口付けを大人しく甘受しながら、なまえは僅かながら安心したようにおずおずと微笑んだ。

その笑みは庇護欲を掻き立てられるほどに愛らしいものだったが、手を離された当のディエゴは不満げに歯噛みしている。
彼の腹立たしげな様子を見て、なまえはやんわりと苦笑した。
――そして浮かべていた微笑を少し、趣の異なる色へと変貌させた。

「でも、ね、」

小さな唇が、ぽつりと囁きを落とした。
自分を囲む絶世の美貌たちを見惚れるようにうっとりと眺めて、なまえはやわらかく笑みを深める。

「――でもね、わたし、嫉妬しているときの三人の目……ふふ、大好きだよ」

ぞくぞくしちゃう、と、内緒話をするように小さな声で、ゆるやかに口元をほころばせて。
喜びを滲ませてそう囁いたなまえは、ひどく「女」の顔をしていた。
かすかに見開いた目を瞬かせ、数拍置いてDIOはくつくつと笑った。
残りの二人は同じように驚きに目を見張ったあと、腹立たしげにそっぽを向いたり、脱力したり。

――訂正だ、この少女は可憐でも清廉でもない。
我々は本当に性悪な女に捕まってしまっていたらしい。
DIOが腰を引き寄せて噛み付くようにその唇を塞げば、待ちわびたと言わんばかりになまえは薄く口を開いて受け入れた。

「ん、っ、は、あ……ふふ、だぁめ、DIO、まだわたし遊び足りないの」
「我々にこれ以上耐えろと言うのか」
「やだ、発情期?」
「そうだと言ったら?」
「わたしの喜びのために、我慢するのはそんなに嫌?」

言葉遊びをするように問いに問いを重ね、楽しげに目を細めながら笑んだ表情はさながら猫のよう。
どうしてなまえが猫にならなかったのかと馬鹿馬鹿しい疑問を抱くほどに。
DIOはヤレヤレと溜め息を吐いて、肩をすくめた。

「なまえ、オレに触ってはくれないのか?」
「ディエゴは良い子だねぇ、んふふ、いっぱい撫でてあげる!」

黒い瞳をきらきらと輝かせながら、なまえは手を伸ばした。

顎の下、首元辺りを撫でてやっていると、ディオの勝気なツリ目がちの瞳が気持ち良さそうに細められる。
目の覚めるような鮮烈な金色の瞳は水分を孕んで、いっそ潤んですらいた。
プライドが許さないのか、ごろごろと喉を鳴らして甘えてくれはしないものの。

「うーんディオ、ごろごろにゃんにゃんして良いよ?」
「うるさい。だいたいなんだ、その頭の悪そうな響きの言葉は」
「素直じゃないなあ、ディエゴはごろごろすり寄ってくれたのに」
「おれとそいつを一緒にするな」
「そうは言っても」

同じでしょうと言えば不機嫌になるのは分かりきっているので、なまえはやんわりと苦笑する。
ちなみにそのディエゴはといえば、なまえの容赦のない構いたがりの餌食となりぐったりと伏せっていた。
俯せたディエゴの赤い頬をするりと撫でてやれば、ふわふわの尻尾がぱたりと力なく揺れる。
よしよしと髪を梳く。
他の二人よりも幾分か柔らかく感じられるそこに、軽く口付けを落とす。
宝石のような美しい金糸の触り心地は、常と変わらず彼女を喜ばせた。

そうして彼に構っていたのが、少々ご不満だったらしい。
口には出さないものの、ディオがなまえの腕に、すり、と首元を擦りつけてきた。
いつもは凛としてツンツンと気の強さを隠しもしないで輝く瞳が、甘えるような色すら含んで伏せられる。
愛らしい仕草になまえはだらしなく口の端をゆるめて、また顎の下辺りを擽ってやった。

「これ、気持ちいい?」
「……別に。そんなんじゃあない」
「もう、本当に素直じゃないんだから。DIOは? DIOは気持ちいい?」
「ああ、上手いな」

同じ顔をしているのに、こちらは余裕たっぷりの極上の微笑を湛えたまま。
もっと撫でろと言わんばかりに鷹揚に頷くさまは、まるで気位の高い猫そのもので。
触れることを許されなければ、容赦なく切り捨てられるだろう雰囲気を持ち合わせた尊大な態度。
その彼に好きなように触れることの出来る喜びは、言葉にならないほどで。
なまえがゆるゆると破顔してそうして存分に擽っていると、ふいに後ろから抱き締められた。

「……なまえ、オレも撫でろ」

不満げに彼女の首筋に顔をうずめてそう呟くディエゴに、なまえはまた口元をほころばせた。
ついさっきまで乞われるがまま遠慮なくわしゃわしゃと撫でていたら、ぐったりと伏せっていたというのに。
早々ともう復活してしまったらしい。
後ろから抱き締められたまま、ざらりとうなじを舐め上げられる。
なまえはぴくっと肩を揺らして小さく吐息を漏らした。

「さっきはもう駄目だやめろって言ってたじゃない、わがまま」
「仕方ないだろ、限界だったんだ。された分、今度はお返ししてやるよ」

そう吐息混じりに囁きながら、両腕で彼女の体をきつく抱き締める。
なまえの返事も聞かず、腹や胸元を這いはじめていたその腕を、彼女が仕方なく引き剥がそうとしていると――、

「おいなまえ、さっきおれが同じように舐めたときよりも、良い反応をするとはどういうことだ」
「いやディオ、そんなことな……っ、ん、」
「なまえ、手を止めて良いと誰が許可した?」
「んっ、んん、ふ……や、ぁ、DIO、」

悪戯に身体をまさぐるディエゴをたしなめるため、振り向いて背後へ伸ばしていた両腕の自由を奪われた。
左手はディオに引っぱられ、上体を引き寄せられてそのまま唇を塞がれる。
右手はDIOに取られ、指を絡ませ合いながら細い手首を鋭い牙で甘噛みされる。
胸元や腿を背後にいたディエゴに撫でさすられ、なまえはどうしようもなく熱く火照った息を口付けの合間にこぼすしかなかった。

三人に共通していたのはその容貌だけでなく、切れ長の涼やかな目元が熱っぽく紅潮していたこと、そして、凛呼たる気位の高い鋭い瞳が、糖蜜のように恍惚で潤んでいたこと。
色素の薄い白磁のような肌が淡く上気し、白皙の美貌が艶めかしく微笑みながら彼女を誘う。

どうやら今度は、本気で逃がしてくれるつもりはないらしい。
到底自分では太刀打ち出来るはずもない凄絶な色香に、よっぽど我慢させてしまったのかな、となまえは苦笑して否応がなしに飲み込まれてしまう他なすすべもなく。

「っ、は、あ、あぁ……んぅ、」
「お前の言う通りに待てが出来た褒美は勿論、与えられて然るべきだろう?」
「あ、っ、DIO、あぁ、っ……!」
「なまえが触られて喜ぶ場所は全部覚えているからなァ」
「ん、は、あ……あ、んぅ」

身体中を這う男の手に、歓喜で肌が粟立った。
時折その肢体に機嫌良く絡ませられる尻尾の感触にも、ぞくぞくっとふるえが走る。
発情した香りを惜しげもなく漂わせながら、屈強な肉体をすり寄せられては、彼女の身体の奥底で甘い疼きが暴走するように蠢くのを耐えることなど出来はしなかった。
その疼きに酔いながら、彼らから与えられる喜悦に素直に応じた。

くぷ、と音を立ててなまえの膣内に埋め込まれたディエゴの指が、ゆるゆると内壁をなぞる。
小さな動き一つ一つにも敏感に反応を返しながら、なまえは甘ったるい嬌声をこぼして身悶えた。
その悦楽に咽ぶ彼女のいやらしい顔を正面で見ていたディオは、ごくりと唾液を嚥下した。
ただでさえこんなふざけた状態へと体が変化し、彼女に触れられてからというもの、腹奥で燻るような妙な昂揚感と欲求に苛まれていたというのに。
その熱をますます煽るには充分すぎるほどに、なまえは途方もなく猥雑だった。

ディオが既に熱く屹立していた肉塊をズボン越しに、引き寄せていた彼女の手へと擦り付ければ、彼女の細い肩がぴくりと跳ねる。
拒否するように腕を引こうと身を捩るのを、無理に押しとどめた。
どくりと脈打つそれに手を添わせ彼女の手ごと上下に擦ると、なまえは観念したように服越しにそこをゆるく愛撫しはじめた。
彼のいいところなど充分に知っている指は、いつの間にか先程までの拒絶が嘘のように、奔放にその昂ぶりを刺激していた。
は、は、と彼が荒く息を吐けば、嬉しそうになまえの手の動きが激しくなる。

そちらに気を取られていたなまえは、DIOの手が真っ白な乳房を鷲掴みにした途端、その身をふるわせた。
直接的な刺激に、びく、びく、と身体が跳ねるのを止めることが出来ない。
柔らかな膨らみを大きな手によって淫らに揉みしだかれ、身体から力が抜けてしまう。
重ねて既に尖りきっていた乳頭を口に含まれ、下肢がわなないた。
薄紅に色付いた乳首を濡れた舌に転がされ、痺れるような疼きが下腹部にまで広がっていく。
胸元でゴールデンブロンドの髪が揺れ、髪のみならず肩口に当たる獣の耳にすら、なまえの肢体は愉悦を拾い上げてしまう。

「随分と気持ち良さそうじゃあないか」
「んっ、んぁ、あ、ディオぉ、」

いつの間にか止まっていた手を咎めるように、ディオに指先を噛まれる。
血が滲むほど強く立てられた歯。
その鋭い痛みから逃れげようとするも、乳房のみならず蜜口の浅いところもくちくちと戯れのようになぞられている肢体では、ろくな抵抗も出来やしない。
甘ったるい嬌声をこぼすばかりで抗えずにいるなまえを見て、ディオが愉快げに口角を引き上げた。
その嗜虐的な笑みを見ていると、なまえは良いように翻弄されている現状が気に食わず、快楽にとろけた口の端を薄く歪めた。
唾液でてらてらと光る唇を噛み締める。
彼女はせめてもの意趣返しに、上機嫌に揺れる尻尾に手を伸ばした。
ディオがそれに気付いてやめさせようとする前にふわふわとしたそれを緩く握り、根元から撫で上げた。

「――っ、ひぅ、あっ、なまえっ……!」

ざわっと全身が総毛立つような感覚。
びくびくっとふるえて小さな喘ぎをこぼしたディオに、なまえは涙でぼやけた視界のままゆるやかに笑んだ。
その淫蕩な笑みを、彼は頬を紅潮させて強く睨みつけた。

「は、あぁぅ、ん、そんなにこれ、気持ちいいの? っ、ふふ、もっとしてあげようか?」

快楽に溶けた表情をしているものの、なまえの黒い瞳は加虐の色を孕む。
しなやかな猫を思わせる目が、にい、と細められた。

「っ、誰が、」
「んぅ、っ……は、お願いしますって言えたら、ちゃんと触ってあげるのに」

おねだりしてよ、と頭上でぴくぴく動くディオの耳を擽ってやれば、彼は、ぎり、と歯を噛み締めて呻き声を漏らすのを堪えた。
その様子が愛おしくて仕方がない。
手を伸ばして尾の根元辺りを擽ってやれば、力が入らずそのままソファに沈み込んだディオの身体。
劣情に潤んだ目で忌々しげに睨みつけられ、なまえは楽しくて堪らないと言わんばかりに淫猥に微笑んだ。

「なまえ、」
「ん、っ、あ……ディエ、……ぅっ、んんっ」

そいつばかりに構うなと言わんばかりに顎を掬い取られ、後ろから深い口付けを与えられる。
体勢は苦しいものの、なまえは貪欲に自分を求めるディエゴの姿にひどく煽られ、一層相好を崩して口腔を舐る舌に懸命に自らのそれを絡めた。
嚥下しきれない唾液が口の端からこぼれても、それに気を取られる暇もなく貪られる。
同時に喜悦に弾む乳房や、しとどに蜜をこぼす膣口をDIOにも嬲られ、なまえは自分の体を支えることが最早出来なくなっていた。
ソファに膝立ちしていた脚が崩れ落ちる。
ぐったりと投げ出された肢体は彼らの手によって支えられ、更なる悦楽を与えられる。

「あ、ああぅ、っ、ひぁ、きもちいい……」

熱に浮かされたようにとろけた瞳で、与えられる喜悦を余すことなく享受する。
時折肌にするりと触れる尻尾にすら、ぐらぐらと焼かれるような昂ぶりを掻き立てられる。
汗に塗れた全身を、更なる愉悦が渦巻いた。

DIOによって力の上手く入らない手を取られ、硬く屹立したソレを握らされる。
素肌が剥き出しになった背筋に、ディエゴの熱く猛る剛直を擦り当てられる。
それが与えてくれる悦楽を知っている膣口から、興奮と期待でまた愛液が溢れるのをなまえは自覚していた。
肉塊から滲み出た先走りによって、手や背筋がべとりと粘性を帯びて濡れる感触。
その感触にすらぞくぞくするほど煽られ、爛れた熱い息が唇から漏れこぼれる。
ぐちゅぐちゅにほぐされた隘路は受け入れるには充分なほどにぬかるみ、蜜をしたたらせていた。

発情して雄の本能に飲み込まれている三人を見て、なまえは腹の奥底から湧き上がる恍惚に表情を染めあげた。
DIOに奉仕していた手を止め、背後にいたディエゴにも待て、と指示を出す。

「はぁ、ぁ、……ふふ、ねえ……」

先走りで汚れた自らの手を、べろりと舐め上げる。
口腔や鼻腔をいっぱいに満たす雄の味に、うっとりと微笑んで三人を眺めた。

「――ねえ、折角猫になったんだからさぁ、猫らしくちゃんとにゃあって鳴いてよ。まだ鳴き声聞いてないから、とっても聞きたいなあ」

薄く開いた愛らしい唇は、ぞっとするほどに美しく唾液に塗れて光っている。

「みっともなく盛りがついた猫なんだから、にゃあにゃあ鳴いておねだりしてくれなきゃ」

じゃなきゃこのままだよ、と淫蕩に囁きながら、なまえは彼らの答えを聞くために濡れた瞳をまたたかせた。

epicurean's table
(2015.02.23)
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