バタンッと大きな音を立てて、部屋のドアが閉じられる。
熱い大きな手に握られていた手首をようやく開放され、僅かに痛みを発していたそこは彼の熱が移ったようにじりじりと火照っていた。

「か、花京院、どうしたの……?」

足早に歩を進めていた彼に手を引かれ、なまえは殆ど小走りで足を動かし着いていくのに必死だった。
女性に対して紳士的で、普段は冷静沈着な彼らしくない。
息を切らし肩を上下させながら、なまえはそんな彼を不安げに見上げた。

――仲間たちと共にエジプトへと向かう旅の途中、いつものように夕食を終えた後。
比較的治安の良いこの町で、承太郎と共に学生たち三人で連れ立って、異国の地を散策していたほんの数十分ほど前のことだ。
夜も更けたというのに繁華街は賑わいを失わない。
寧ろ昼間より活気があるように感じられるのは、日中暑すぎて行動するには向かぬ国々ではよく見られる光景で。
そのなかをしばしの息抜きとばかりに冷やかして歩いていると、長身の美丈夫たちに紅一点、一見してすぐに日本人と分かる少女が紛れていたのがそれほど珍しかったのだろうか、あっという間に人だかりができてしまった。

笑顔で近付いてくる男たちに戸惑いつつも、根っからの日本人であるなまえはそれをすげなく切り捨てることも出来ず、曖昧な笑みを浮かべる。
それに調子付く周囲の男たち。
見れば殆ど体の触れ合いそうな距離にまで接近を許しているではないか。
交際している女性が他の男に囲まれ触れられそうになっているのを見て、不機嫌にならない男がいるだろうか。
少なくとも花京院はそれを笑って看過する余裕など、持ち合わせてはいなかった。

こっそりイライラと舌打ちすると、狭量な男だとは思われたくないが、隣に立っている目も耳も敏い承太郎にはバレていたらしい。
頭上で低く笑う友人に、溜め息でもって返事をする。
「悪いが先に帰っているよ」と言葉少なに告げれば、承太郎は「あんまり無茶させるんじゃあねぇぞ」と肩をすくめた。
そんな会話を交わす二人に、なまえはなんのことかと首を傾げた。
花京院は彼の言葉の指すところを解したのか、苦々しく「困ったな、自信がない」と返していたが。

そうして荒々しく腕を掴まれホテルに戻り、二人に宛がわれた部屋へと足早に戻ってきたかと思えばこの状況。
なまえは混乱した頭で、彼を見上げてまた小さく名前を呼んだ。
その呼びかけにやっと目を合わせた花京院は、深い溜め息をひとつつく。
そういえばこうして真っ直ぐ目を合わせるのは、手を無理やり引かれて連れてこられてから初めてだとなまえはそこで気が付いた。
その瞳にどんな感情が浮かんでいるのかと不安に思い、更に覗き込もうとする。
しかしなまえのその動作を軽くいなすと、花京院はぐいと彼女を立ったまま後ろから壁に押さえ付けた。

「っ!? か、花京院、なにを、」

一つも言葉を発さずただ力ずくで押さえ付ける彼に、更に不安が増す。
振り向こうとするも、そのまま強く抱きすくめられてしまった。

本当に、らしくない。

どうしたの、と、肩越しにまた訴えかけようとする。
しかし花京院はその体勢のまま彼女のうなじに顔をうずめたかと思えば、耳の後ろに強く口付けた。
常にない彼のそんな態度に緊張のため体を固くしていたなまえは、その噛み付くような愛撫にすらびくんっと大仰に肩を跳ねさせてしまう。
その所作が、また彼の嗜虐心を煽り立てるとも知らず。

「ひっ、か、花京院っ……!」
「っ、すまない、なまえ、でも、」

我慢出来ないんだ、と、爛れた吐息まじりに耳元で囁かれれば、ぞくぞくと背筋を何かが駆け上がる。
彼の興奮が移ったように、なまえもまた熱い息を吐き出した。

彼と恋仲になってからというもの、こういった行為を幾度か経験したとはいえ、これほど性急に、また乱暴に事に及んだことは未だかつて一度もない。
制止するため上げようとした声は、セーラー服の中に無遠慮に突っ込まれた手によって遮られた。

「――んんっ……! や、あっ」

発達途上の乳房を、下着ごと鷲掴みにされる。
大きな手が胸元をやわやわと撫で回し、やがて胸の上へとずり上げられたブラはその機能を失う。
直接熱い手が、慣れぬ刺激に戸惑い揺れる膨らみを揉みしだいた。
なまえはそこから生まれる小さな疼きに、壁に押し付けた手をぎゅっと握り締める。

未だ免疫のついていない、むず痒いような小さな悦楽の芽にそうして必死に耐えていると、いつの間にか彼のもう片方の手が制服のプリーツスカートから伸びる太腿を撫でていた。それに気付いて身をよじろうとする。
しかし背後から強く抱きすくめられれば、そこから脱出するのは難しい。
スタンドを使えば一旦逃げ出すことは可能かもしれないが、彼もまたスタンドを使ってくるなら相性の悪いこちらは不利である。

「っ、考え事かい? ……僕ばかり、君を、求めているのかな」

はあっと昂ぶりを隠しきれない熱い吐息が耳元にかかり、なまえはふるりと身を揺らした。
ずるい。そう言われてしまえば、抵抗しようとする意思も弱まってしまう。

壁に爪を立てたままその刺激に耐えていると、ゆっくりと太腿を這い上がってきた指は、とうとう秘部にまで至った。
ざわりとなまえの肌が粟立つ。
ぐっと緊張し強張った体を宥めるように、こちらが焦れったくなってしまうほどにゆるゆると下着の上からソコを撫でられた。

「っ、はあっ……なまえ、ここ、もう、濡れてる」
「えっ……っ、や、待って、っかきょ、い、っ……!」

湿ったそこをゆっくりとなぞっていた指が、下着の横から忍び込んでくる。
その途端、微かに、湿った音がした。
ますます身体がカッと熱く昂ぶる感覚に眩暈すら覚え、それを否定するようになまえは手を握り締めて首を振る。

ゆっくりと花唇をなぞる指の動きは止まらない。
乱暴にこの行為に雪崩れ込んだとはいえ、その手付きは彼女を大切に慈しみ愛おしいと言わんばかりに優しく、なまえはその指の動きひとつひとつから意識を逸らすことが出来ずに熱く湿った吐息を漏らした。
そうして執拗に襞をなぞっていた指先が、ふいに膨らんだ秘豆をかすめる。
びくっと身が跳ねた。
丹念に突起を撫で回され、そのたびにびくびくと大きく反らしたセーラー服の背がふるえた。
痺れるような喜悦がそこを中心に駆け巡り、真っ直ぐ立っていられない。
気持ちいい、気持ちいい。
かりっと壁に立てた爪が音を立てた。

「あっ、ああぁっ……! だめ、もう、ぅ……」

絶頂の予感に、少女は抑えることの出来ない甘ったるい嬌声が迸る。
自分の口から出る欲望にまみれた媚びるような声に羞恥を覚えるものの、堪えることが出来ない。
壁についた手を口元に持っていきたいが、しかしそうすれば支えを失い立っていられなくなってしまうだろう。
じわりと眦に涙が浮かび、プリーツスカートから伸びた内腿がふるえた。

「なまえ、挿れて、いいかい」
「っ、ぅ……」

吐息混じりの懇願。
首筋を掠める息がひどく熱い。
固く凝った秘豆は解放されたものの、しとどに蜜を溢れさせる花唇をゆるゆると撫でるのを止めぬまま、許可を求める彼に息を飲んだ。
背にぴったりとくっつけられた胸板から伝わる鼓動は、彼女と遜色ないほどに速く、大きく高鳴っている。
余裕がないのは自分だけではない、彼も同じなのだと思い至ればそれだけで愛おしく、場違いなほど穏やかな、ふわふわとくすぐられるような多幸感すら覚えた。
そのことに気付いてしまえば、嫌だと拒むことはどうしても出来ない。
顔から火が出そうなほどの羞恥に耐えながら小さく頷けば、後ろで余裕なく荒い息を吐いている花京院がごくりと喉を鳴らした音が聞こえた。

「……っう、あ、ああぁっ……!」
「く、ぅあっ、なまえっ、そんなに締め付けないでくれっ……」
「ひぅっ、だって、だってぇ……! ぁうう、あ、っ」

壁に押し付けた手がふるえる。最奥まで一気に貫かれ、一瞬視界がスパークするように白んでしまった。
呂律の回らぬ口で必死に、待って、と繰り返すものの哀願は受け入れられることなく、たがが外れたように律動は開始されてしまう。

成熟しきっていない未発達な腰を強く掴まれ、後ろからがつがつ突かれる。
肉のぶつかる高い音が、ホテルの広くはない部屋に響く。
その抽送のたび、なまえの身体は大きく揺さぶられ痙攣した。

規格外の高身長を持つ旅の仲間たちのなかにいると、ともすれば華奢に見えてしまうことのある彼だが決して小柄ではない。
腰を掴まれ叩き付けるようにして最奥を抉られると、時折床から爪先が浮いてしまう。
そのためしっかりと脚を踏ん張ることすら許されない。
がくがくと自分の体とは信じられないほど膝がわなないた。

その崩れ落ちそうなか細い身体を支えながら、花京院は吐精を煽る肉壁の締め付けに耐えながら奥歯を噛み締めた。
視界にちらちらと映る壁に爪を立てた白い指、律動に合わせ揺れる薄い肩に、熱く漲る怒張がますます質量を増す。

「っふ、う、なまえ、なまえっ……はあっ、は、」
「あっ、やぁっ、ひあぁっ! あっ、んぅっ、あっ!」

なまえは押し上げられた喜悦の波に上手く対処出来ず、ただその深すぎる悦楽にされるがまま。
自身の唾液で濡れ光る唇からは、意味を成さない単音しか出てこない。
そんななまえの姿を見て、花京院は昂ぶりのままに乱れた息をせわしなく吐き出した。
欲望に塗れたその嬌声を聞き続けていると、同じような色をしているだろう瞳も見たくなってしまう。
涙を浮かべて自分を見る彼女の目は、どれだけ淫らな光を灯しているだろうか。

律動を僅かに緩め、荒い息の合間に名前を呼ぶ。
殆ど反射のように、のろのろと肩越しに振り向いたなまえの顎を掬い上げた。

せわしなく必死に呼吸を繰り返す小さな唇。
ぐらりと腹奥で熱がのたうち、衝動的に口付けた。
可憐な唇からは苦しげな呻き声が漏れるものの、彼の大きな口が離されることはない。

唇を重ねるため前に体重をかけたことにより、熱く滾る肉棒が更に奥深くまで膣内を穿った。
子宮の入り口を埋めてしまいそうなほどの圧迫を与えられ、なまえは大きく目を見開いた。
声にならない嬌声を上げてびくびくっと腰をふるわせる。
塞がれたままの口の端から嚥下しきれなかった唾液をこぼしながら、なまえは焦点の合わぬ瞳をゆらめかせた。

僕を惑わすのが上手い君

(2015.01.16)
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