(ある暑い夏の日)

「カーズさん、本当に気持ちいい……」
「気持ち良いのは構わんが、まさかこの私を保冷剤代わりにする人間が存在するとはな」
「す、すみません……だってクーラー使用禁止令、吉良さんから出ちゃったじゃないですか。か弱い人間は熱中症とかで死んじゃうことだってあるんですよ」
「まったく、本当に人間は脆弱なのだ」
「カーズさんに比べたら、だいたいの生物は脆弱になっちゃうと思いますよ……。
あっ、でもこの体勢、この前一緒に見たトトロみたいじゃないですか?」
「メイがトトロに出会うシーンか?」
「そうそう! あなたトトロっていうのね!のところですよ。これ、メイやサツキが穴から落ちてきて、トトロのお腹の上に乗る体勢と一緒じゃないですか」
「確かにな。それにしても、もうテレビでジブリ祭りはやらないのだろうか……」
「カーズさん最近、毎週金曜日の夜はテレビの前に陣取ってましたもんね……。そうだ、わたしも他の作品見たくなっちゃったし、DVD借りてきて一緒に見ません?」

「お前ら……距離が近すぎじゃあないか……?」
「えっ」
「えっ」


・・・



「あっ、もうDIOさん、わたしまだそこまで読んでないんですからページめくるの待って」
「早く読め、お前に合わせていたら眠ってしまうぞ」
「む……DIOさんが読むの早すぎるんですよ。だいたいこれはわたしが借りてきた本なんですから、DIOさんが読む必要はないじゃないですか」
「そんな無駄口をたたく暇があったら、先を読み進めろ」
「はいはい、言われなくても……って、舐めるな! やめてください! 血を吸うの禁止!」
「目の前に首があるんだ、手持無沙汰に飲みたくもなるだろう」
「暇つぶしで飲んでもらえるほど、わたしの血は余っていません」
「この体勢は失敗だったな……血が飲みたくなる」
「もう……、でもこうしてDIOさんが後ろから抱きかかえてくれているのが、一番ふたりで本が読みやすいんだから仕方ないじゃないですか」
「なまえ、なまえ、少しだけ」
「ダメ」

「貴様ら、前々から思っていたが距離が近くないか」
「えっ」
「えっ」


・・・



「はい、終わりだ」
「今日もありがとうございますー、一日の終わりにこうしてハンドケアしてもらうのが、本当に癒しですよ……」
「私も美しい手をますます美しくすることが出来て最高の気分だ」
「わたしの手がきれいなのは、吉良さんのおかげですよ。はい、お顔寄せてください。ご褒美ですよー」
「ン〜、血の通った手に撫でられるというものも素晴らしい……」
「吉良さん、頬もすべすべですよね。やっぱり規則正しい生活のおかげかな」
「なまえ、髪も撫でてくれ」
「はいはい。髪もさらさら、うらやましい……」
「君の髪もきれいだよ」
「あれ、手以外にも興味はあったんですね」
「なまえ、君限定でね」
「もしかして吉良さん、眠たい?」

「貴様ら、距離が近いんじゃあないか」
「えっ」
「えっ」


・・・



「ディアボロさーん、動きにくいから料理中は離れてくださいよ。後ろから抱き着かれたまま料理するのって、結構難しいんですよ、今日はドッピオくんがいないからただでさえご飯作るの時間がかかるのに」
「イヤだ」
「もう、もし手を包丁とかで怪我でもしちゃったら、吉良さんから怒られるのわたしなんですからね?」
「……その時はオレも一緒に怒られてやる」
「ディアボロさんだと最悪の場合、爆破される可能性がありますよ……?」
「ぐっ」
「ふふ、はいはい、このままで構いませんから、包丁を持っているときは動いちゃだめですよ」
「分かった。それにしても、今日の飯も美味そうだな」
「えへへ、ありがとうございます。やっぱり美味しいって言って食べてくれるひとがいると、作るのももっと楽しくなるんですよ」

「……君たち、距離が近すぎるんじゃあないか」
「えっ」
「えっ」


・・・



「ドッピオくん、味、どう?」
「美味しいです! ボクは好きだけど……多分もう少し濃くした方が、ボスは好きだと思います」
「そっか、ありがとう。あ、こっちのお皿、洗っておいてくれる?」
「分かりました、なまえさん、す、すみません……」
「ううん、大丈夫だから気にしないで。ここの台所、狭いもんねえ。こうして行き来するときくっ付かないといけないし、肩を並べていないと二人で料理できないし。広いキッチンとか憧れるなあ」

「お前たち、距離が近くないか……」
「えっ」
「えっ」


・・・



「っ、あっ! ありがとうございます、プッチさん」
「いいや、気にしないで。それにしても君はよく転ぶね」
「いや、別に普段はそんなに転ぶわけじゃないんですけどね……なぜかプッチさんにはお恥ずかしいところばかり見られている気がする……。ご迷惑おかけして、すみません」
「それは構わないんだが……わたしも助けることが出来て良かったよ」
「ありがとうございます!
それにてもプッチさん、結構筋肉ありますよね……カーズさんやDIOさんがいつも露出しているから気付かなかったけど、お腹も、すごく固い……」
「そうかい? しかし女性がそんなにみだりに男性の体を触るものじゃあないよ」
「あ、すみません。ご迷惑でした?」
「いや、私としてはむしろもっとしてくれても構わないけれどもね」
「はい?」

「お二人って距離が近すぎますよね」
「えっ」
「えっ」


・・・



「ちょっと、ファニーさん、くすぐったいから触らないでくださいよ」
「このむちむちした太ももに頭を乗せているときが一番の幸せなんだ、邪魔をしないでくれたまえ」
「遠回しに肉が多いって言っているんだったら、もう膝枕してあげませんよ」
「まさか、そんなわけないだろう。健康的で美しく、素晴らしい脚だ」
「そ、そうですか……」
「照れたのか?」
「黙ってください。あとさりげなく脚だけじゃなくてお尻も撫でまわすのやめてください、殴りますよ」
「ふむ……殴られて悦ぶようなソッチの趣味はなかったが、なまえが相手ならば良いかもしれない」
「そっちってどっちですか」
「聞きたいか?」

「君たち、距離が近すぎるんじゃあないかい」
「えっ」
「えっ」


・・・



「おかえり、どこに行ってたんだ」
「ただいまー、玄関で仁王立ちしてどうしたの、ディエゴくん」
「ジョースター君のにおいがする」
「ああ、さっきちょっとジョニィくんとジャイロくんに会ったの。ジョニィくんがディエゴくんのこと話してたけど聞く?」
「いや良い。どうせ暴言だろ」
「よく分かったね……。あっ、ちょっと、くんくんしないでよ、っ、もう、くすぐったい! ああもう、髪がぐしゃぐしゃになっちゃう」
「良し」
「満足げな顔して、なにが良しですか」
「マーキングだ」
「ディエゴくん、恐竜じゃなくて犬だったの?」
「良い子で留守番していた忠犬に褒美はないのか? ご主人サマ」
「忠犬なら忠犬らしく、帰宅したご主人さまを襲うような真似はやめてくれる?」

「お前たち、距離が近すぎるのではないか?」
「えっ」
「えっ」


・・・



(もしも、偶然ジョジョのみなさんが目撃してしまったとしたら?)

「なまえー、DVD借りてきたのだ。見るぞ」
「わ、カーズさん、ありがとうございます! ちょっと待ってくださいね、夜ご飯のあとに一緒に見ましょう」
「なまえ、次はこの本が読みたい」
「面白そうですね、DIOさん、また抱っこしてくれますか?」
「なまえ、動かないでくれ、マニキュアがはみ出る」
「あっ、吉良さん、ごめんなさい」
「なまえー、今日の晩飯はなんだ?」
「うーん、どうしようかなあ。ディアボロさん、なにが食べたいですか? ディアボロさんが食べたいのを作りますから」
「なまえさん、お茶が入りましたよ」
「わーい、ドッピオくん、ありがとう」
「まったく、こんな大人数で女の子一人を囲んで……なまえ、大丈夫かい」
「ふふ、ありがとうございます、プッチさん。全然大丈夫ですよ」
「なまえ、膝枕を所望する」
「はいはいファニーさん、もうちょっとだけ待ってくださいねー」
「なまえ、なまえ、良いにおいがする」
「ディエゴくん、くすぐったいよ。さっきお菓子作ったからみんなで食べようね」


「「「「「「「お前ら……距離が近すぎないか」」」」」」」

「「「「「「「「えっ」」」」」」」」

彼女も既に毒されている

夢主の「えっ」は単純に「なにかおかしいことした!?」と驚いてのものですが、男性陣はみんな「お前に言われたくない」の「えっ」です。
(2014.07.24)
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