風丸、そう呼ばれてみょうじに歩み寄れば、手のひらを突き出された。その勢いでふわっと香る、覚えのある匂い。

「この匂い、好き?」
「…まあ、嫌いではない。これ、みょうじのシャンプーじゃないか?」

そう問うとよくわかったね、と驚かれた。普通わかるだろと返すと、彼女は自分の髪の毛を触りながら『わかるかな…』と呟く。

「まあシャンプーじゃなくてトリートメントなんだけどね…ま、いいや。嫌いじゃなくてよかった。ここにお座りくださいな」
「…なにするんだ?」

みょうじはニコッと笑って、彼女の前にある椅子に俺を座らせた。わさわさと髪の毛をさわられ、首に毛先が当たってこそばい。

「うわっ」
「ほんとは洗ってからの方がいいんだけど」

引っ張られる感覚。頭をもっていかれないように首に力をいれる。しばらく続いて、みょうじが明るい声で終了を告げた。

「はいおしまいー」
「な、なにしたんだ?」
「流さないトリートメントをつけました!」

そんな女みたいな事、と反論したが彼女は聞く耳を持たず、むしろ『伸ばすなら綺麗に伸ばさないと駄目なんですー』と諭される始末。俺は肩をがくりと落とすと、なにやってんの部活はじまるよと背を押された。誰のせいだ誰の。




息を整えようと膝に手をついて休む度、揺れた髪の毛からの彼女の香りが鼻孔をかすめる。顔が熱くなった。
(今、運動したばかりだからだ、そうにきまってる)



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