「俺んとこにくるために、ジョウトにいる…?だめだわっけわかんねー」

名前との通話を一方的に切られた三日後、追い返した挑戦者を呼びつけた。
トキワから出ていたらしく着くのに少し時間がかかるというので、ジムで待っている。考えるのは三日前の電話のことばかりだ。三日間ずっとこのことばかり考えているなと乾いた笑いさえ起こった。

(そういえば)

名前がこうやって直接言ってくるのは初めてかもしれない。寂しい、だなんて。

俺とレッドが旅に出た時も、笑って手を振るだけだった。

いつも三人で遊んでたから、一人になってしまうというのに涙も見せないでいってらっしゃいと元気に見送ってくれた。それから、チャンピオンになって、でもレッドに負けて、帰ってきて。それからちょっとしてレッドも帰ってきて、また三人になった。名前は毎日ニコニコしてた。半年もたたないうちにレッドがまた旅に出て、俺もトキワジムのリーダーになる。

(そういえば、その頃からか。俺達が付き合うようになったのは)

ウインディの入っているボールを手の上で転がしながら過去に思いを馳せる。
正直、恋心を持ち始めたのは帰ってきてから。
名前の傍は居心地がよくて、名前もそう思ったから応えてくれたんだろう。リーダーに正式に就任するまでの間は毎日のように一緒にいた。もちろんレッドのヤローも…オジャマムシめ。

正式に就任した途端、リーダーの仕事が思いのほか忙しくて、会う時間が減って電話も減って。
それでも名前は何も言わなかった。会えば笑顔で受け入れてくれるし、電話をすれば必ず出た。文句の一つでも出れば、すぐに対応するつもりだった。甘えすぎていたんだと今になって思う。

仕事に慣れてからも、その付き合っているのかわからない微妙な距離のまま三年たった。レッド失踪の報せはたしか名前がくれたんだったな。最近になってレッドらしき奴の目撃情報がシロガネヤマにでて、探すためにしばらく留守にする事が多くなってさらに会う機会がへった。

「そういや、シロガネヤマに行くって事いわなかったな…」

下山して、ポケギアを開いたときに画面に表示されたのは不在着信、発信者は名前だった。普段電話なんかしてこない名前だ。めずらしいこともあるもんだと思っていたが、シロガネヤマにいることを知らなかったのなら納得できる。

(かけ直して繋がらないと思ったらこれだもんな…)

俺たちは限界なんだろうか。
三年間埋まらなかった溝を、埋めようとしなかった溝をほったらかしたままここまできた。それのツケが一気に来たんだろうか。
なあ名前、お前はどれだけ我慢していたんだ?俺の声を聞かないように、姿を見ないように、ポケギアも出ずにジョウトへ姿をくらますほど。



「グリーンさん、挑戦者さん来たみたいなんで思い出に浸ってないで戻ってきてください。あとたまに考えてること声に出てますよ」
「そういう事はもっと早く言えよ。はずかしいだろ!」

レイジに呼ばれて立ち上がる。今度の挑戦者は骨のある奴だといいな、なんて思いながら、ボールを腰に戻しレイジを追いかけた。


(グリーンさん、名前さんと結構長いんですね)
(聞いてんなよ!)
(アイタッ)


頭はまだぐちゃぐちゃのままだった。




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