(俺もだ、だって)

嘘つき。シロガネヤマにだれがいるのか知らないけど、わざわざ行くほどだもん。大切な人なんでしょう?私に何も言わなかったってことは、やましい気持ちがあるんじゃないの?忘れてただけだって、信じたいけれど。

チルットとイーブイの、四つの目が私と合った。心配そうな顔で見上げてくる。ふっと気が抜けた。もう大丈夫だよと二匹を撫でてやる。

「大丈夫、…よし、よしもう大丈夫!今はバッチを集めるの!」

とりあえずの目標はキキョウジム。そこで一つ目のバッチを手に入れる。私は心を落ち着かせると、二匹をボールに入れてコガネを後にした。




「うーん…飛行タイプかあ…」

キキョウシティについたものの、ジムにいたおじさんの話によると飛行タイプを得意とするジムだという。チルットも飛行タイプ、イーブイはノーマルタイプで、チルットはレベル的には問題なく勝てるが、戦える子が一匹しかいないというのは心もとない。というわけでキキョウシティの下、37番道路に寄り道することにした。

「飛行といえば電気タイプだよね」

でも電気タイプってこの辺にいるんだろうか。なんせカントー人、ジョウトのことは無知に等しい。草むらをうろうろを歩きまわってみるが、なかなかポケモンが出てこない。

「んー虫よけスプレーなんて使ってないのになあ…」

がさがさと奥へ奥へとはいっていく。肩にとまっていたチルットが急に騒ぎ出した。羽根をばたつかせ、ギャアギャアと暴力的な声をあげている。

「チルット、どうしたの?うわっ!」

ハリの肩を離れて飛び立つ。何メートルか先の草むらの上を、ぐるぐると旋回する。訝しげにそこに近寄ると、草むらの中で苦しそうに倒れ込んでいるポケモンがいた。

「…っちょ、大丈夫!?」

急いで駆け寄るとどうやら怪我をしているようだ。そのポケモンが弱弱しく唸る。警戒しているのだろうけれど、そんなこと構っていられなかった。

「今センターに連れて行くからね!」

触れようとすると、指先に鋭い痛みがはしる。電気によって弾かれた指をおさえつつ、電気タイプかと思う。大丈夫大丈夫と言い聞かせるように繰り返してもう一度抱きかかえようとする。

「うん、大丈夫だからね。治るから…もうちょっとがんばって、お願い」

今度は弾かれることなく、ふわふわとした毛を触ることができた。落としてしまわないようにしっかりと抱きしめると、全力で走りだす。チルットも私の横を飛び、心配そうにそのポケモンを覗き込んでは鳴いた。

ポケモンセンターについて、息の荒いままジョーイさんのところへ駆け込む。
ジョーイさんはポケモンを見るやいなや治療室へと連れて行き、残された私は待合室でぐったりと座りこんでしまった。


ああ、そういえばオ―キド博士にキキョウに着いたって連絡いれておかなくちゃ。

ポケットからポケギアを出して開く。不在着信が6件、発信者名はグリーン。苦笑して通話リストからオ―キド博士を選ぶ。

「…あ、もしもし、名前です。無事キキョウにつきました」
<おお、それはよかった!ジムにはいったかね?>
「いえ、手持ち増やしてからにしようと思ってまだ行ってないです。とりあえず報告までに」
<うむ、バッチが集まったらぜひまた連絡してくれ!楽しみにしとるよ>
「もちろんですよ!それじゃ、また」

ポケギアを閉じて、近づいてきたチルットの羽根をなでる。まだ先ほどの電気が残っているのか指先がピリピリと痛むが、まひなおしを使うほどでもない。そもそもあれはポケモン用のアイテムだ。

「チルット、ジョーイさんに任せておけば大丈夫だよ。だから、そんな顔しないで」

ソファに全体重を預けて、チルットを腕の中におさめる。しばらくもぞもぞと動いていたが、二度ほど静かに鳴くと動くのをやめた。

窓の外はすっかり暗くなっている。






*






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -