手をついたガラスが冷たい。窓の向こう側では、一面に白い景色が広がっていた。昨日まで見えていた芝生は全て雪に覆われ、屋根の色すら白く変わっている。雪が降ることはあっても、積もることが滅多にないカントーでは珍しい現象だ。
キラキラと反射する光に目を細めて、思わず歓声をあげる。

「雪なんて、はしゃぐようなモンじゃないよ。冷たいし寒いし必中だし」
「レッドは見慣れてるからそう感じるのよ。っていうか別に吹雪いてるわけじゃないから」

わくわくと胸を踊らせる私とは対照的に、不機嫌そうに呟いた主を睨みつけるが、本人は知らん顔で炬燵に体を潜らせた。
まったく、自分の家に炬燵が無いからってわざわざうちに来て占領した挙げ句、炬燵を布団代わりにして泊まるのはやめてほしい。

「雪だるまでも作ってこようかなあ…カマクラがいいかなあ…」
「名前ってほんとガキだよね」
「その炬燵は誰のかな?」

叩きつけるように放った言葉にレッドは口を閉ざした。さすがに炬燵を取られるのは堪えるようだ。
フンと鼻を鳴らしてコートに袖を通し、マフラーを口元を隠すように巻いたところで、懲りないレッドがまた不満気にもらした。

「ほんとに作りにいくの?」
「うん。天気いいし、今作らなかったらすぐ溶けちゃうでしょ。レッドも行く?」
「寒いのに出るとか馬鹿でしょ」
「ほーそういう事言う」

気分を害した私は、わざわざ玄関から靴を持ち出し、リビングの窓から外に出てあげた。
後ろから歓喜の悲鳴が聞こえるわ!ざまーみろ!



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