髪の毛の間から覗く白い首筋に誘われるように指を滑らすと、びくっと体全体が揺れた。
ゆっくりと、恨めしそうにこちらを向く。

「急に、何」
「べつにい?」
「…」

彼には珍しいリアクションに笑いながらそう言うと、レッドは唇を尖らす。そして首筋をさすりながら視線を本にもどした。

ソファに寄りかかる彼の髪の毛をちょいちょいいじる。触ってみたり、撫でてみたり、梳いてみたり。その度に彼は身を捩らせていたが、やがて慣れてきたのかそれもなくなる。
私は反応が鈍くなったのをつまらないと感じて、手を出すのを止めた。

しばらく彼の後ろ姿を眺めていて、ふと思ってしまった。

(どうしてレッドがここにいるんだろう)

思ってしまってから、後悔した。



「…ッ!」

ぐる、と身体が回転したかのような感覚に襲われて、私は目を開いた。部屋はすっかり薄暗くなってしまって、時計の針を刻む音が静けさを強調させている。

身体を起こして、滑り落ちたタオルケットをそのままにして台所へむかった。食器棚小さなガラスコップを取り出し、水を一杯飲み干す。

「ふう」

水が体に入っていくのを感じながら暗い部屋の中を見渡すと、自然に夢の中でレッドが座っていた辺りに視線が行った。

(あり得るはずが、ないのに)





(会いたいと思っている証拠)





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