「最初はぐー、じゃんけん」
「「ぽん!」」
「やったーお皿洗いはマツバね」
「あー…」

がくり、とマツバは食卓テーブルでうなだれた。


食事が終わり、テレビを見ながらだらだらしようとお気に入りの座布団とタオルケットとリモコンをリビングに持ち込んだ時だった。

「じゃんけんしよう」
「は?」

聞けば今日の皿洗いを代わってほしいという。特番を見たいらしい。時計を見ると確かにもうすぐ始まるだ。だが、

「私も見たいからやだ!」

私がなんのために座布団やタオルケットをわざわざリビングに持ち込んだと思っているのか。全てはこの番組を見るためである。昨日や明日ならいざ知らず、今日の皿洗いは代わるわけにはいかない。

そう主張したが、マツバも引く気はないようで、尚もじゃんけんを迫る。テレビの画面は食器用洗剤のCMを映していて、もうすぐ番組が始まることを教えてくれている。
ぐずぐずしている暇はない。

「オーケー。文句無しじゃんけんだっ」
「僕も大人だ。負けてとやかくは言わないよ」

テレビが見たいからじゃんけんを仕掛けてくるのは大人の行動じゃないよね。その言葉を飲み込んで、私たちは片手を振り上げ、掛け声と共に降ろした。

そして冒頭に戻る。

彼は『言い出しっぺの法則』を知らないに違いない。



画面の切り替わりと同時に番組のオープニングが流れた。その音楽とはまた別の声がキッチンから聞こえる。

「本編始まったら教えてくれないかな!」
「わかってるんで早く洗ってください。うひゃー今日のゲストクルミちゃんじゃん!超豪華ーかわいいー」
「うう…」

先ほどより皿と皿がぶつかる音が大きくなった気がする。焦っているのだろう。私はそれを聞いていて思わず噴き出してしまった。
テレビ台に収まっているDVDレコーダーの小さな画面には、01:38と放送時間の経過が示されている。専用リモコンの再生ボタンを押せば画面はすぐにオープニングへ戻るだろう。

「マツバ、はやくう。本編始まるよー」

さて、彼が洗い終わるまで別のチャンネルでもみてようかな!



録画しておいたのさ
(再生ボタンぽちっ!はいオープニングからー!)
(!!…ありがとう!)


*






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