二日前から、名前に電話がつながらない。ジムの連中にきいてもしばらく来ていないらしい。 「自業自得ですよ」 「だから俺がなにしたって…おい、そんな目で見るのはやめろよ」 加えて、ジムの連中からの視線が冷たい。レイジなんか俺が二日前、シロガネヤマから戻ってきた途端思い切り顔をしかめやがった。 「名前さん、どうしちゃったんでしょうねえ」 「グリーンさんが放っておくから」 「あーあ、名前さんの手作りケーキたべたいなあ」 「あーあ、あーあ、あーーあ!」 「あーもうわかったよ!会いに行けばいいんだろ!」 刺のある言い方でじわじわと責めてくるトレーナー達にとうとう根負けして、マサラタウンまで戻ってきた。名前の家の呼び鈴を鳴らして少し待つと、名前の母親が顔をだした。 「あらあらグリーン君!」 「どうも、お久しぶりです。名前いますか?」 「あー、名前はねえ…うーん…」 急に言葉を濁し始めた#ハリ#の母親に怪訝な表情を隠せない。下を向いたり上を向いたり、少しの間言葉を探していたが、とうとう口を開いた。 「…まあ、いいわ。あのねグリーン君、あのこ…旅に出ちゃったのよ」 「たっ…旅ィ!?」 言わないでねっていわれたんだけどね。名前の母は困ったように笑った。 旅、とは。 一体どういうことなんだろうか。 『ジムバッチ?マチスさんのまでしか、持ってない』 『集めないのか?』 『うーん、そうだなあ。そらをとぶさえ使えたらそれでいいし…あの時の子達も皆お嫁さんになっちゃったし、 まあ…暇だったら集めるかも』 以前の名前との会話を思い出す。ジムバッチを集める為の旅というわけではなさそうだ。ではなぜ?考えても答えは出なかった。 名前の家をでてトキワジムまで戻ってきた。久しぶりの挑戦者を軽くひねってから、ポケギアをいじりだす。 (ぴりりり、ぴりりり、…ただいま、電話にでることができません…) 今朝かけた時と同じメッセージが流れる。前画面に戻って表示される『名前』の字、発信件数は数十件。 「わっかんねえなあ…」 「グリーンさん、名前さんどうでした?」 「レイジ、グリーンさんの態度を見ればわかるだろう。振られたんだ」 「あータクヤごめん。きづかなかったよ」 「おまえらうっさい。まだ振られてねーよ」 「「まだ?」」 「黙れ!」 発信件数は増え続ける。 |