マツバは温かいなあと思う。雰囲気とかそういうんじゃなくて、ただ単純に温かい。体温が高いんだろうか。私は寒がりだから、よく毛布を被って雑誌を読む彼の隣に座っていた。その度にマツバは「僕はストーブじゃないんだけど」と静かに静かに文句を言うけれど、私をどかそうとはしない。そうやって暖をとるうちに私はゆるゆると瞼をおろして、いつのまにか眠ってしまうのだ。

「マツバはあったかいんだよね」
「名前が冷え症なだけだろう」

いつものごとくそうして眠ってしまって、外がオレンジ色になる頃に私は目を覚ました。いつもは一緒に眠ってしまっているマツバが、珍しく先に起きて雑誌を開いている。なんだか急に眠ってしまった事が恥ずかしくなってしまって、言い訳がましくそう言うと笑って返された。

「いやまあそれもあるだろうけど、あったかいよ。絶対体温高いよね?」
「いや…いつも大体36度5分だな」
「あら普通」

普通が一番だろ、とページをめくる。確かにそうだとは思うが、ジムリーダーというトレーナーの憧れがいうと随分説得力がなくなる言葉だ。そういう人の傍にいるのが普通の私は、他の人から見たら普通じゃないんだなと思うと少し面白かった。
ふわり、優しい熱が右手を覆う。

「ほら、冷えてる」
「あ、うん」

私はいつのまにか腹部にたごまっていた毛布を肩まで引き上げ、両手を下に滑り込ませる。
さわられた右手が、熱い。

「ま、…」
「うん?」
「マツバは…あったかい、ね」

ちょっとびっくりした、と笑う。
無性にドキドキした。マツバにくっついて温かいと思う事は何度もあったけど、さっきのように直接触れられるなんて事はなかったから。

「名前を温める為に生まれてきたからね」

私の頬を彼の手背が撫でる。
『気障ね』そう言って笑うシーンだったのかもしれないが、私は赤くなった顔を見られたくなくて、毛布を被るので精一杯だった。




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