うん、面白い。
昔ほど見せなくなった輝きを目に宿して熱心に私の図鑑を見るレッドを、私は笑い出しそうになるのをこらえながら見ていた。彼が山籠もりしている間に発見された新種のポケモン(いまとなっては常識になりつつある)はどうやら彼のお気に召したようだ。

「どう?」
「すごい。うん、すごい。151匹じゃなかったんだな」
「まだ図鑑にはのってないけど、コイキングは既に進化したポケモンなんだよ」
「え、コイキングが?」
「嘘だよ!」

晴れやかな笑顔でそう言うと、レッドはポカンとした顔をした後ふいに顔を逸らした。

「…」
「レッドって簡単にだまされてくれるから、!!」

楽しい。
そう言い終わる前に、レッドの手が床についた私の手を覆った。彼の手は同じ空間にいるにもかかわらず私の手よりとても熱くて、驚いてしまう。
自然と視線は重なった手へ、二人だけの空間が急に静まった気がした。

「嘘つくとか」
「は、はい」
「名前は僕のこと嫌いなんだ」

は、

「…」

重なったレッドの手は力をこめているわけでもないのに振り払えなくて、ゆっくりと視線を彼の顔にうつすと彼は伏し目がちにこちらを見ている。ひどく哀しそうな顔に見えて、慌てて弁解をはかる。

「ちち、ちがうよ」

動揺してどもってしまった。あまりの私の慌てように、さっきの哀しげな顔はどこへやらレッドがにやりと口の端を持ち上げる。
あれ、なあにその小生意気な顔、はまさか

「じゃあ好き?あ、イエスノーは駄目だから」
「へ?え、…!」

さあ逃さんぞと言わんばかりに覆っていた手に力が入った。





嘘つきへの報復

(わたしは、あなたが、すきです。さあ言ってみて)
(すす、すすす)


*






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