※お相手はグリーンさんです





シロガネヤマから降りてきて、しばらくたつ。ジョウトへの道が出来ていたりポケモンタワーがラジオ塔になっていたりと沢山の変化に最初は戸惑っていたが、今はもう慣れた。
だが、今もどうしても慣れない事がある。

「グリーンが遅いからだよ!」
「ジムリーダー引っ張り出して何言ってんだ。おら、レッドー!」
「グリーンうるさっ!」

外から聞こえてきたその声に眉をひそめ、窓を開ける。眼下には2人の幼なじみがいた。

「どっちもうるさいよ」
「あら、やっぱり?」

くすくすと名前が笑った。2人を見ると胸が縛られたように苦しくなる。
いまだに慣れないのはこの苦しさだ。
山を降りて、名前に想い人がいることに気がついてからずっとこの胸のつまりがとれない。

(グリーン、か)

幼なじみの幸せを願わないはずもない。彼等2人が一緒になればこれほで良いこともないだろう。
グリーンは俺より弱いけどジムリーダーになるほどの実力者だし、俺には劣るけど顔もいいし、軽薄そうに見えてなかなか思慮深く、真面目な男だ…俺には適わないけど。
つまり、彼女の相手になるのに申し分ない。恐らくグリーンも名前の気持ちを気づいているし、悪くは思っていない。

もし、名前の恋が実った時は盛大に祝ってやろうと、そう思ってる。
けど、

「レッドー?」
「はやく降りてこいよ?」
「今行く」

2人が一緒になってしまったら、

「遅いぞレッドくん!」
「なにぼーっとしてんだよ」
「…」


今のように、三人でいるわけにはいかないんじゃないか?


「「うわっ!」」

靴もろくに履かないまま弾かれたように玄関を飛び出し、無理矢理グリーンと名前の間に割ってはいる。2人の腕を自分の腕と組ませてずかずかと大股であるくと、身体が進行方向の反対を向いていた2人は大きくバランスを崩した。

「おまっ、危ないだろが!」
「何やってんの!」
「…」
「「…レッド?」」

2人を祝福しないわけじゃない。
だけど

「なんでもない。さ、行こう」

ぱっと2人を掴んでいた手を離し、何事もなかったかのように歩き始める。後ろからブーイングが飛んできたが、無視しているとグリーンに羽交い絞めにされ、思わず呻いてしまった。声を押し殺すように名前が笑う。


(だけど)



(もう少しだけ、このままがいい)


*






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