え、嘘だよそんなん。
グリーンなんで教えてくれなかったの!
聞かなかった私も悪いけど!

『今日、グリーンの誕生日でしょう?名前ちゃんと一緒にいるものだと思っていたけど…?』

たまたま、彼の家に寄った時に言われたナナミさんの言葉だ。家にいないのは可能性として考えていたが、今日が誕生日だと伝えられるのは予想外中の予想外だった。


「グリーン!!」
「ん、名前?どした」

蹴り飛ばす勢いでジムの扉をあける。中にいたトレーナーも、グリーンも一斉にこっちをみた。揃ってぽかん、としているトレーナーの間を縫って彼のところに走り寄る。

「おま、おま…!」
「名前、あの矢印パネルを飛び越えてきたのはすごい。すごいがおちつけ」
「今日が誕生日だなんてきいてない!」

噛みつくように言い寄るとグリーンが首を傾げた。

「…ああ、今日俺誕生日だったっけ?」
「フツー忘れる?!」

誕生日で喜ぶような歳じゃねーし…というぼやきをスルーして頭を抱えてしまう。

「ありえない…」
「ありえなくねーよ。そんな重要じゃないだろ誕生日なんて」
「重要だよ!」

グリーンはよくわかんねえと頭を掻く。むくれたままの彼をにらみつけた。

「だってグリーンが生まれた日だよ?」
「まあそうだな」
「プレゼントあげたい」

今から買いに出かけるとしても、恐らく迷いに迷って結局買えないだろう。喜んでほしいからこそ当日以前から考えるのだ。誕生日を知らないとできないじゃないか。

「…ま、来年楽しみにしてるわ」
「来年もあるんでしょうかねっ」

誕生日を忘れていた彼だ。
プレゼントを渡して喜んでほしいこの気持ちなんかわかってくれないんだろうなーなんて思っていると、頭をポンポンと撫でられる。子供扱いされたような気がしたので仕返しに意地の悪いことを言うと、グリーンは溜め息をついて私の頬をひっぱった。

「いたい!」
「来年も再来年もあるんだよばーっか!」
「!」

引っ張られた頬を押さえてまじまじとグリーンを見つめる。目の前の彼は顔を真っ赤にして目をそらした。

「…ふひひ!」
「その笑いきもい!」





(プレゼントはいらねーよ。祝ってくれるだけで十分)
(…誕生日おめでと)
(よくできました!)


*






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