周_01


「で、その子、どうするわけ?」

テーブルに近寄ってきたテディは、箱を開けるそばからピザを物色し、私よりも先に手を伸ばす。山と盛られたトマトやらチーズやらを器用に頬張って、テディは次の獲物に手を伸ばした。頬を膨らませてもぐもぐやっている様は、どう見ても小動物だ。ついでに言うなら、齧歯類っぽい。
テディが私を一瞥する。

「怪我が治るまでくらいなら家に置いといてもいいかな、って」

私はピザに伸ばしかけた手を停めた。そして、まじまじと隣人を観察する。怪訝そうに、テディは私を見返してきた。

「なに?」
「おまえ、やっぱり悪魔に魂売り飛ばしただろ」
「身近な賢人に向かって言うことそれ?」

そこで出すなら、天使とか聖人とか人徳者、だろうに。

「とりあえず、賢人の意味でも調べてこいよ」

ため息をつきながら、私はビールの缶を開ける。ピザ箱に載っけて運んできたためか、既に、どことなく、ぬるい。ビール缶のプルタブに指をかけ、テディはピザを嚥下した。そして、一気にビールを流しこみ、首を傾げる。

「ありえないくらいに口当たりまろやか」
「喋ってる間にあったまったんだよ。ビール職人さんに謝れ。麦芽育てた農家さんに謝れ」
「どのへんがおれのせいなの」
「全部」
「八つ当たり反対」
「なら食うな」

ピザを貪るテディの頭を、べしべし叩いてみる。それでも食べることをやめないとは、見上げた根性だ。
日付が変わったところでそれだけで、誰かを拾ったところでそれだけだ。気づけばピザ箱は空になっていて、その中身をほとんど隣人の胃袋に持っていかれた私は、とりあえずテディに空箱を投げつけた。

(周_01/end)

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